早朝の別れ
掲載日:2026/05/06
「兄さま、もう行ってしまうのですか?」
まだ少し夜が残る野原に旅立とうとする兄を見送ろうと、小さな弟は眠い目を擦りながら表へ出てきた。
「すまないね。……やはり寂しいかい?」
「いえ……」
弟は言うが、強がりは透けて見える。仕方ない子だ、とでも言いたげに微笑んだ兄は弟の手に十寸ほどの横笛を握らせた。
「おまえにこの笛をあげよう。寂しくなったら、私を思ってこの笛を吹くといい。きっと気持ちが落ち着く」
「……っ、そうします」
受け取った弟は鼻を啜って顔を上げる。
「兄さま、けが、しないでくださいね」
「ああ。お前も元気で」
弟の頭に置いた手を離すと、兄は背を向け薄暗い野原へと旅立っていった。
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