表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/14

1 竜の蒼い月 1


 最初はゲームの隠しイベントが発生したかと思った。

 でも可笑しいのは、どれだけ待っても目の前の政宗が動かない事だ。

 そして異変に気が付いたのは、俺が瞬きをした時。

 同じく政宗が瞬きをした。


 もしかしてと思う。


 顔を左に傾ければ、俺の目に映る政宗は右に傾く。

 顔を右に傾ければ、俺の目に映る政宗は左に傾く。


 左頬に手を伸ばせば、右頬に手が。

 右頬に手を伸ばせば、左頬に手が。


 目に映る政宗は同じように俺の動きを真似する。

 いや、鏡だから真似するのは当たり前だが。


――――?????


「?…………??????」


 自身の顔をペタペタと弄る。俺は俺の顔を確認する。


 目に映るのは政宗だ。

 対面する鏡に映るのは政宗だ。


 黒色でクセの強い髪。蛇の様な金色の左瞳。右目は眼帯で覆われて見えやしない。

 歳は7歳ほどにしか見えないが間違いない。

 これは、乙女ゲー「下天の空」に登場する伊達政宗その人。


 鏡に映る自身を見つめながら愕然とした。

一瞬叫びたそうになったが、声が出ない。


 冷や汗がダラダラ流れ出し。

頭は真っ白に。

顔は真っ青になるのが分かる。


「政宗!」


 無言のまま鏡と睨めっこしていると、洗面所の外から同じ黒髪を持つ女性が声を掛けて来た。

 振り抜けば、歳は若いがその顔には見覚えがある。

 何処か凛とした佇まい。軽く化粧を施し、白いワンピースに黄色のバッグを肩にかけているが間違いない。

 いや、そもそも何故だが記憶がある。


そこには、伊達政宗の母。義姫が立っていた。


「政宗!」

「え、は、はい……」


 もう一度声を掛けられ、俺は我に返った。

 両頬を両手でつまみ上げ、必死にコレは夢か幻か確認している最中。

 そんな政宗。――いや俺を見てか、義姫()は溜息を付いて近づいて来た。


「いい加減にしなさい!何度呼べば来てくれるの?今日は大切な日だって言った筈でしょう?」

「え、あ、い、いや」


 整った顔立ちでつめられると中々の迫力が――。違う。

 俺は焦る頭で必死に巡らせた。

 今日は何かあったっけ?大切な日とは?

 自分に無い筈の記憶を必死に巡らせる。

だがその答えは直ぐに導き出された。


 今日は父と母と弟で新しい家族を、義理の妹を迎えに行く日だ。




「え、えええええええええええええ!?」

「きゃあ!な、なんです急に!」


 記憶の整理が終わると、俺は思わずと大きな悲鳴を上げてしまった。


 目の前の義姫、否。母がそりゃ驚く顔を見せる。

 当たり前か我が子に声を掛けてみれば、いきなり大声を出されたのだから。


 俺は自分でもビックリするぐらいの声を出した後、見事なまでに固まる。

 きっと顔はひきつけを起こしていたに違いない。


「も、もう全く!」


 そんな俺を、一瞬ひるんだモノの、母が手を掴み引っ張る。

 痛くはないが、子供からすれば大人の力には敵わずされるがまま。俺はそのまま玄関へ連れ出された。

 ちょっと待てと、俺はまだ頭が困惑していたが。


 俺とは違う整った政宗の顔。俺の記憶と、存在しない『記憶』

 見たことのない筈の廊下。『見覚えのあるはずの廊下』

 知っていて知らない筈の義姫()。『知っていて当然の母』


 頭の中で色んな出来事がグルグルと、絵の具を混ぜ合わせたようにぐちゃぐちゃになった。

 そんな中で、長い髪を揺らしながら母は少しだけ苛立ったような声を出す。


「本当に!紫荻ちゃんが待っていると言うのに、この子ときたら!」


 誰よりも聞き覚えのある名前を。

 俺は早歩きで玄関を進みながら、ようやくと現状を理解する。


 俺は。

 俺は伊達政宗に転移したらしい――と。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ