表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

11/14

10 幼馴染 2

 


 名場面――。名場面だったんだよ?

 紫荻が政宗の月になって、導くって宣言した場面は。

 本当に綺麗な瞬間だったんだよ?それを、おまえ。――黒歴史みたいな!


「誰が何と言おうと、おまえは俺の月です――!ほら、復唱!」

「………………………………」

「せめて目を合わそう?ねぇ、他人のふりするのはやめよう!」


 必死にすがって泣き真似をしてみたものの、紫荻は俺と目を合わせることはしなかった。

 前世の記憶があるとはいえ、政宗()の事、毛嫌いしすぎでは?


「相変わらず、情緒が不安定だな」

「いつもよりひどいのでは?」


 と、三成と幸村。

 周りの白い目にも気づかないふりをしながら、俺は妹に泣きつくのである。



 ☆


「――コホン」


 俺は咳払い一つをこぼす。

 まわりからの冷たい視線と、目も合わせてくれない紫荻。

 さすがに醜態をさらしすぎた、と気が付いたのである。 


「遅れて悪かった。い――弟が着いていきたいって聞かなくて」


 取り繕うように、謝罪を言葉に。笑顔を浮かべて紫荻を紹介。

 もう遅いとか、無理やりすぎるとか。――そんなことはない。

 そんなことはないはずだ――!


 目の前の幸村は哀れな視線を。三成は警戒の眼差し。佐助は冷たい目をしていたが。

 三人が目を合わせて、大きなため息をこぼしたのは、次の事である。


「――それで、弟とは?」


 仕方が無さそうな表情で、問いただして生きたのは三成だ。

 子供ながらに、目元に大きな隈をこさえた鋭い目で俺たちを見ている。


 おっと、忘れていた。

 ここで、彼らの紹介を簡単にしておく。


 左から順に、俺達兄弟をにらむのは、石田三成。

 このゲームでは俺より一歳上なので、今は8歳のはず。

 肩につかない色素の薄い茶色の髪の毛。

 先ほど言った通り、鋭い鷹のような目。目元には大きな隈をこさえた。将来の眼鏡イケメン。

 豊臣家が運営する孤児院で育った。属性でいえば、ツンデレ枠である。

 ――だが、彼の中では秀吉が一番で、随時偉そうな口調。糖分が低いストーリー。

 デレのないツン俺様野郎は攻略者の中では、一番不人気なかわいそうな奴である。


「いっただろ?一か月前に養子を迎えたって。で、それがこの弟。名前は紫荻」


 そんな眼鏡野郎(三成)に視線を向けながら、俺は改めて紫荻を紹介した。

 三成の隣にいた幸村が眉を顰める。


「――弟?貴殿の母上からは、女子と――」

「弟だ!!弟だから!!」


 そうだった。此奴の真田家と俺の伊達家は交流があったのだった。

 でもこいつは馬鹿正直。いや、馬鹿みたいに素直だから適当に言いくるめるだろう。


 さて、此奴は真田幸村。

 俺と同い年なので今は7歳か。

 焦げ茶の手入れしていないツンツンの髪。

 髪と同じ色の猫のように大きい目のせいで、年の割には幼く見える。将来は童顔が売りのイケメン。

 この世界では有名な歌舞伎座の次男坊。将来は男型でも女形でも活躍する、有名人だ。

 古風なしゃべりなのも、これが影響だろう。属性でいえば真面目な子犬君になるのか?

 性格はすべてに馬鹿が付く。馬鹿真面目で馬鹿素直で馬鹿正直者。思ったことはすぐ顔や行動に出る。

 その影響か、いの一番にくのいちの術中にはまる。

 スケベで誰よりも手が早く。騙されやすくて、流されやすい。人気投票同率一位なのは絶対に腑に落ちない。

 性格云々に関しては本家本元に謝れ。


 ――とりあえず、そんな男だ。

 思った通りか、幸村は俺の言葉にわずかに首をかしげたが。

 まぁ、政宗()が言うのなら間違いない、と思ったのだろう。笑みを浮かべた。


「なるほど。実に愛らしい弟君だな。俺は――」

「おい、殴り飛ばすぞ」

「――え?」

「俺の紫荻に気安くさわるんじゃねぇぞ」

「政宗殿……。ブラコンは嫌われるぞ」

「うるさい!!」


 お前が当たり前に「愛らしい」とか言うからだ。手を掴むのもだめ!

 そんなところも気に食わない点である。


「――ちょ、若。騙されないでください。この子はどう見ても――」

「弟だつってんだろ!」


 俺の言葉を、完全に信じてない様子なのは、幸村の隣にいる猿飛佐助だ。

 表情の読めない糸のような目に、明らかに呆れを混じらせ、小言をこぼす。


 猿飛佐助。年齢は三成と同じなので現在8歳。

 将来は適当な敬語を使うお兄さん的キャラ。

 耳下までの雪のような白い肌。糸のような細い目。所謂アルビノの糸目イケメンキャラ。

 真田家に古くから使える元忍びで、幸村の友人兼世話係だ。

 しかし政宗や幸村と違い、ボンボンとかではなく普通の一般家庭の出である。

 前作ではただのモブキャラだったが、今作からキャライメを一掃し、攻略対象に上り詰めた一人でもある。

 成長後は195センチという高身長に加え。

 胡散臭い見た目に、声優も胡散臭く。裏切り待ったなしといわれた輩だ。

 だがしかし、此奴は裏切りという期待を裏切ったキャラである。

 誰もが、ぐうの音も出ないほどの純愛ストーリー。阿保みたいな一途を貫き。

 元忍の一族ということもあり、くのいちの術中にはまることもなく。むしろ、陰ながらに紫荻を守り。

 その純愛甘々ストーリーで数多くの女性ファンを掴んだ、人気投票一位のつわものである。

 男の俺でも思ったほどだ。

 ――こいつがメインでは?……と。


 そんな作中屈指に感の良い男が、紫荻を疑っている。

 いや、実際は女だから、此奴の方が正しいのだけど。


「いや、でも――」

「確かに可愛い顔立ちで、声もかん高くて、華奢な体つきだけど!!こいつは男だよ!男なの!!!」

「……」


 俺はとにかく押し通した。

 さすがにこれは踏み込んではいけないと、佐助も判断せざるを得ない。

 複雑な家庭事情とか、気が回るこいつはそう判断してくれるだろう。


「はぁ……。まぁ、それぞれ……。ジェンダーレスですもんね」


 そして、それはうまく嵌ってくれたのである。

 俺は心の中でガッツポーズを取った。


 ふと、再び服の裾が引っ張られた。


「――。兄上、彼らが兄上のおともだちなのですか?」


 今まで黙って三人を見ていた紫荻が、不思議そうに口を開く。

 そうだ。彼女にも彼を紹介しなくては――。

 しかし、俺は少し困った。困ったが、仕方がない。

 嘘を言っても無駄なので、正直に彼らを紹介する。


「紫荻。――。左から石田三成くん、真田幸村くん、猿飛佐助くんだ。俺の友達?みたいな?」

「なんてあやふやな」

「そこははっきり友達といいたまえ」


 周りがうるさく騒ぐ。

 もちろんなのだが、いや。たぶん見た目で気づいていたと思うが。

 紫荻は「やっぱり」というような表情を浮かべるのであった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ