9 幼馴染 1
正直言う。ちょっと浮かれていたと。
義姫の目をごまかし、二人で家を抜け出し公園へと向かう。
二人並んでご近所さんから。「かわいい兄弟ね~」なんて声を掛けられて、ご機嫌になり。
あ、これって仲良し兄弟に見える?て、浮かれて。
調子に乗って、紫荻と手を繋ごうとしたら拒否られたけど。
紫荻との楽しいひと時を過ごしていたのに。
公園にきてみれば、コレだ。
今、俺達の目の前にはゲームの攻略者対象が3人。
元いい、政宗の友人達が立っている。
「――いや、本当になんでだよ!」
「うお、びっくりした」「うわ、なに?」「……おかしくなったか?」
「兄上?」
なんで俺はこいつらが、ゲームの攻略対象って気づかなかったんだよ!
幼いとはいえ!同姓同名で、見た目とか特徴とか一緒だろう!
友達がいない政宗の代わりに、何とか声をかけて友達作って。やったー!て、思ったらこれだよ!
「そうだ!ゲーム攻略対象に合わせなきゃいいんだ」作戦台無しだよ!徹夜して考えたのに!
これはもしかして、ゲームの強制力ってやつか!?
俺は隣にいる紫荻を見た。
すごく怪訝そうな顔をしている。なんだか怒っているようにも見える!
あれか?結果的に、もう会いたくない(であろう)連中に引き合わせたからか!?
そうだよね。小十郎の紹介の時も眉を顰めてたもんね!ほとんど、全員集合だもんね!
俺はこの後、どうすればいいんだ――!
「政宗どの、いきなり大声をだしてどうした?」
膝をついて頭を抱えていると、どこか妙に古風なしゃべり方で声を掛けられた。
顔を上げれば、真田幸村がこちらを見下ろしている。
政宗と比べれば劣るが、端正な顔立ちだ。なんかむかつく。
いや、まて?いきなり大声を出して?
もしかして、さっきは気づかないうちに、心の声を口に出していたのか?
なんか、この不条理に思わず叫んでいたと?
それなら、紫荻が怪訝そうな顔なのは、そのせい――?
――なーんだ!良かった!
「い、いや。大丈夫だ。――その、えっと。お前たちの顔を見たら、過去の自分と決別したくなっただけだ(?)」
「――は?」
「……若、ちょっとこっちに」
幸村が怪訝そうな顔をして、佐助が険しい顔で彼を手招きして呼んだ。
なにも言い訳が思いつかず、適当な言葉を口にしたが。何とかなったようだ!
「――え?厨二病?」
「ええ、ですので。変に突っ込まない方がいいっすよ。近寄らない方がいい」
「……秀吉様に聞いたことがあるが、あれだろ?14歳で発症する不治の病……」
「いや。人によって発症年齢はさまざまですよ。だから近寄らない方がいい」
――なんか3人こそこそと。それはもう心外なことを言っているような気もするが。
誤魔化せたらな、まぁ。別にそれでよし!
安心してどや顔を決めていたら、隣から服が引っ張られる。
俺は打って変わって、笑顔を浮かべて紫荻に視線を向けた。
「どうした、紫荻?」
「……兄上。――ちゅうにびょうとはなんです……!」
――おおっと。
そうだよな。半兵衛からも伊達の両親からも、蝶よ花よと育てられている一応昔の人間。それも時代劇が好きなお姫様には分からないよな。
最近は俺の部屋に来て、漫画を拝借しているが。――厨二病は分からなかったか。
現代の言葉は分かりづらいって、言っていたしな。
変に横文字や、省略なんてするな。日本語はちゃんと、日本語として使えって泣いてたもんな。
でもだからって、なにもそんなキラキラした目で俺を見上げなくてもいいじゃないか。
そんな顔で見られたら、変なことも言えなくなるというか。変なことを教えられなくなるというか。
なんにせよ、ここはお兄ちゃんらしく。妹に問われたことはかっこよく答えなくては!
俺は笑顔を浮かべたまま、やっぱりどや顔でいった。
「自分が特別に見えてきて、痛い言動を繰り返し。将来、思い出すたびに悶絶することになる不治の病だ――!」
「なるほど。――どこかのだれかに『月になる』とかはつげんした、今のわたしのことですね」
――泣いていいだろうか?




