3、助けが
最初の曲がり角を曲がるとそこは初めに横たわっていた空間と似たような作りの部屋だった。
7畳から8畳ほどの部屋の左右にはこれまたどこにつながっているかわからない通路が薄暗く続いていた。
助けがいないことに軽く絶望しながら本当にここがどこだかを考える必要が出てきた。
とはいえこうして考え込んでいても仕方がなく左右どちらかの通路に進んでいかなければならなかった。
なにとはなしに何となく左の通路を選んでみれば少し蛇行しながらも続いているのがわかる。
薄暗い通路をここがどこかわからない状況で進んでいくことがなんと心もとないことか、まるで幼き頃に知らない場所に探検にでて迷子になってしまったかのように泣きたくなるような焦るような気持ちが心の中を渦巻いている。そうして一人歩いていると、
「....っ」
自分がたてた音ではないものがかすかに静寂の中耳に届く。
誰かいるのか、だれでもいい誰か助けを、そう思いながら出ない声を振り絞り、重い体を前へ前へと突き動かしていく。
そしてそれは確かにそこに存在していた。誰かではない何かがほの暗い明りの中を突っ立ているのがわかる。
まず目についたのはその身長だった。小学生低学年ほどの低い身長であり、肌は全身くすんだ緑色、とがった耳と醜悪な顔がこちらを見つめている。
それは一言でいえば映画やアニメなんかに出てくるファンタジー代表の存在ゴブリンである。
見た目ゴブリンは最初自分と同様に驚いているのか口を開けぽかんとした表情をしていたが、すぐにその顔をゆがめ、
「グギャギャギャギャ」
と何かを主張するように声を荒げてこちらを見つめてきた。
ただならぬ雰囲気を感じながらよく観察すれば、こいつは小ぶりのナイフを持っていやがる。
ナイフを持っているという事実が緊張感をより加速させていくが、推定ゴブリンは怒るのをやめたのか、こちらに向かってナイフを振り回しながら向かってきた。
自分はただの一般人であり、ナイフを持って来る相手に対してどうこうできる考えが思いつかない。
もしかしたら武道の経験でもあったかもしれないが、記憶喪失の時点でせんなきことである。
そうして、ゴブリンが振りかざしたナイフをかろうじて腕を顔の前にする防御態勢をとれるだけで精一杯であった。
ナイフが腕を切り裂いていく、しかしやはりというべきか切り裂かれた痛みは感じず血だけがぽたぽたと垂れていく。
ゴブリンは防がれたことに苛立ったのかなおも叫びながらナイフをふるおうとしてくる。
それは生存本能からくる恐怖であった。
やらなきゃやられる。
そのための手段は実はすでに持っていた。自分の腹に突き刺さっていたさびた短剣である。
左手に持った短剣を今にもナイフを振りかざそうとしているゴブリンめがけてつき下ろす。
ガツンとした衝撃の後ゴブリンからの反撃は来なかった。
どうやら偶然にも短剣は目玉を突き刺しておりゴブリンは一瞬バタバタと暴れまわった後ぱたりとその動きを止めたのであった。




