2、血濡れた短剣
目が覚めると記憶喪失の上に全身血まみれで、知らない場所に寝ていたとか自分で言っていて訳が分からなあい状況だが、それでもこれが今の現状であった。
腹の上に突き立った短剣をみると自分が着ている洋服は見覚えがないシャツであり、それが血でぐっしょりと変色しているのがよくわかる。
あまりの光景に一般人でしかなかったはず(記憶喪失中)の自分には血の気の引く様子であり、いまにも気絶しそうな意識を何とか保ちながら考える。
この出血量じゃあどう考えても自分は助からないはずだ。
なのにどうしてか意識を覚ましてからある程度時間がたったにもかかわらず、まだ考える余力を残していることに不思議を覚える。
短剣にそっと触れてみても来ると思っていた痛みを感じずにほっとしたやらなんやらと思いながら、右手首に左手で触れて脈を図ってみた。
これ以上の驚きがあるのかと思いながら、触れるはずの脈がないことに驚き、胸に手を当ててみても心臓の動きが感じられない。
自分の体はいったいどうしてしまったんだと恐怖しながら、短剣を握り体から引き抜いてみた。
またしても痛みを感じずに、短剣が引き抜かれた傷口を見れば今なおどくどくと血が流れていく。
短剣はひどくさび付いており刃もところどころかけているため切れ味は悪そうだ。
このままこうしていても確実に死に向かっているだけであり、すぐに行動をしたほうが良いだろうと考える。
「あーははあ」
助けを呼ぼうとした口からはうなり声としか言いようのないかすれた声が漏れ出てくるだけであった。
「あうああううはうあ」
いくら声を出してみても結果は変わらずうなり声はむなしく小部屋の空間に響くだけである。
助けが来ないならばここにいても仕方ない、自分から行動しなければならないのだ。
そのためにもきしむ体を何とか動かしよろよろと立ち上がる。
まるで死後硬直が始まっているみたいな体の動かしにくさは、さらに焦りを加速させる要因となる。
傷口を少しでも抑えながら立ち上がると石造りの壁伝いにゆっくりと目の前の通路を目指して少しずつ進んでいく。
通路自体は全体がほのかに明るくなっており、足元も注意しながら安全に進むことができた。そして、最初の曲がり角が見えてきた。




