仮想ノ本能寺
先に言っときますが、これは作者の仮想&フィクションです。
実史とは無関係ですので、あしからず。
天正10年
6月2日
京、本能寺・・・
「光秀・・・貴様、地に堕ちたかッ」
真っ赤に燃え上がる本能寺。
彼は、手に槍を持ち、目の前の男を睨みつけていた。
「ハハハッ、嫌だなぁ、地に堕ちたって? それは貴方の方ですよ、信長公・・・」
男―――明智光秀は、自らが持っていた刀を地に刺し、彼―――織田上総介信長を指差す。
「貴方の時代はもう終わりだ」
その時、燃え上がる本能寺の破片が、光秀に向かい落下。
しかし・・・
スサッ!!
咄嗟に脇差しを抜き、破片を真っ二つに。
「・・・貴様、目的は何だ」
信長はゆっくりと、槍を構える。
「朝からの命か? 天下か? それとも、長宗我部への義理か?」
「朝?天下?長宗我部?ハハハッ、そんなの、何一つ関係ない」
光秀は高らかに笑う。
「貴方の生首を、この手の中へ納めたい。ただ、それだけ」
その時!!
「光秀ぇッ!!」
光秀の背後、そこに刀を構えた一人の武士が。
「覚悟ッ!!」
「ハハハッ、これは成利」
武士―――森成利は、刀を抱え上げ、光秀に降り懸かる。
しかし・・・
「遅い」
成利より一瞬早く、光秀は地に刺した刀を抜き、成利の腹へ強烈な突きを放った。
ズサッ!!
「うっ・・・」
「ハハハッ、鈍いな」
成利の動きが止まり、その腹は紅く染まり始めた。
「隙だらけだぞ!!」
「ん?」
成利に気を取られていた光秀が振り返ると、目前には信長の槍が。
「貰った!!」
「・・・フッ」
勝利を確信した信長、しかし・・・
「貴方は、私の足元にも及ばない存在だ」
次の瞬間、信長は地に倒れていた。
「なッ・・・んだ・・・と・・・」
腹部にはしる、強烈な痛み。
紅く染まる信長。
「弱いな・・・」
光秀は、信長を見下ろしていた。
「クッ・・・こ、この信長を倒しても、秀吉や勝三郎、勝家がまだ・・・」
「・・・信長公、貴方にはもう・・・希望はない」
そして、光秀の刃が、信長の首を貫いた。
その日、この世から、魔王が消えた。
「次の相手は・・・羽柴、池田、柴田、前田・・・長宗我部でもいい。何なら、徳川でも・・・」
彼は、不適な笑みを見せた。
「もっと、私を楽しませてくれる、強き人間は、いないものかな・・・」
彼は、刃に付いていた紅い血液を、刀を一降りし、振り払った。