お前かぁー!
「オイ、新入り、此れお前か?」
山の狸を纏めている長老が、持っていた何処かで拾ったらしい新聞をオイラに突きつけながら聞いて来る。
「え? 何のことですか?」
新聞を地面に広げて記事の1つを指さし記事を内容を要約して話す。
「此れだよ、此の記事。
此の山にハイキングに来た小学生の一団が、引率の教師のミスで遭難。
だが小学生の大半の児童は、突然現れた狸の案内で無事に下山したが、まだ、引率の教師と高学年の男子児童3人が行方不明になっている。
下山に手を貸した狸ってお前のことだろう?」
オイラは長老に頭を下げ謝罪してから訳を話した。
「遭難して心細げで泣いていた子供たちは、知ってる子たちだったんです。
以前家族で暮らしてた全校児童が30人もいない田舎の学校の児童たちで、オイラたちに食いものをくれたり撫でてくれたりして可愛がってくれた子供たちだったんです」
「そうか、それじゃ仕方が無いな。
あと、まだ見つかっていない、引率の教師や高学年の児童たちの行方は知らんのか?」
「学校で餌を貰おうと近寄った兄弟たちを面白がって殴る蹴るして殺したガキ共や、赴任して直ぐに野生動物は嫌いだと言いながらオイラを捕まえて、此の山に追放した教師なんて知りませんよ。
だから、隣の山のクマの縄張りに人間の男を誘導したり、真っ暗な夜、高い崖に通じる行き止まりの道にガキ共を誘い込んだりなんてしていません!」
「ヤッパリ、お前かぁー!」