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第8話 親バカ魔王 農業改革をする①

翌朝を迎え、本日の業務は昨日教わった書類整理である。

一見、単純な作業だが、だからこそ魔王軍の現状がよく分かる。


たとえば、農耕について。

食料生産は国の基盤を支える重要な産業だが、その収穫量は地域によってまちまちである。


当然、土地柄によって作物が育ちやすい場所もあれば、砂漠のように水がほとんどない地域では農業自体が成り立たない。

しかし、水があり気候条件も良好でありながら、収穫量が芳しくない場所がある。


それが 「アルチャコヴァ」 だ。


この土地は二つの川に挟まれた低地で、一見すると水利に恵まれた肥沃な地域に思える。

だが、問題はその川の地形にある。


アルチャコヴァを挟む二つの川のうち、低地側を流れる 「アルチャクス川」 は、水位が不安定で取水が難しい。

一方、高地側を流れる 「ユクセクネヒル川」 の近くに畑を作れば、水の確保はしやすいが、雨季になると川が氾濫し、周辺の土地が浸水してしまう。

そのため、畑を川の近くに作るのは危険だ。


かといって、川から離れれば取水が困難になる。


さらに、アルチャクス川の水位が不安定な理由がもう一つある。

上流には大規模な商業都市があり、物資の運搬に舟運が利用されているのだ。


舟運では、水位が低すぎれば船が座礁し、高すぎれば流れが速くなり操船が難しくなる。

そのため、上流の都市では 水門を利用して水量を調整しており、これが下流のアルチャコヴァに影響を与えている。

水位が一定に保たれないため、取水口の管理が難しく、安定した農業用水の確保ができないのだ。


たかが農業と侮るなかれ。


農業とはすなわち「飯」、飯とはすなわち「力」である。


腹が減っては戦はできぬ。

軍隊の運営において兵站は極めて重要であり、食糧供給は国力そのものに直結する。


魔王軍復興のための最優先事項は、決して戦力の回復だけではない。

食糧生産の安定こそ、今もっとも注視すべき課題なのだ。

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