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第4話 親バカ魔王 四天王に会う

焦げた肉と皮の匂いが漂う煙の中から、一人の人物がゆっくりとこちらに歩み寄ってくる。


先ほどの攻撃――その威力もさることながら、魔力のコントロールが洗練されていた。周囲の木々が焼け残っているのがその証拠だ。力任せではなく、繊細な魔法運用。しかも私が近くにいることを把握した上での攻撃だろう。


こいつはやはり――


「お前は四天王のナリッサだな」


「おうおう、四天王様に対して『お前』呼ばわりとはな」


声の主がさらに近づき、煙の向こうから現れたのは可憐な女性。


「なーんだ、どこの生意気なガキかと思ったら、これはこれは、魔王様じゃないですか?」


皮肉混じりの軽口を叩くのは、四天王の一人――ナリッサ・デミル。

四天王で唯一の女性であり、竜人族。赤を基調とした軽量な鎧を身にまとい、炎系統の魔法を得意とする。その上、根っからの武闘派で、少数精鋭を率いて敵陣へ突撃する姿から「鉄の女」の異名を持つ猛者だ。


ここは彼女の支配領域。この場所で四天王と出会うならナリッサが最有力だとは思っていた。

それにしてもやはり見事だ。私の外見が大きく変わっているというのに、即座に見抜いた。


「魔王城が攻められたって聞いてさ、万が一にも勇者にやられたとは思ってなかったけど――やっぱり生きてたんだな。でもさ、その格好、何?」


昔からフランクな性格だったが、この口ぶりも健在だ。魔族の部下は義理や礼節を重んじる者が多い。ナリッサのように魔王へ軽口を叩く者を快く思わない者もいるが、一兵卒から四天王に上り詰めたその実力は本物だ。だからこそ、誰も口出しできないのだろう。


「禁術を使って命はどうにかなったが、他は見ての通りだ」


「なるほどね。結構魔力も持ってかれたんだろ? ちょうど魔力切れってとこじゃない? あんなやつに手こずる魔王様じゃないもんね」


ナリッサは巨大な炭と化した()()()()()を横目に、余裕たっぷりに言う。


「いくつか確認したいことがある。まず、私が魔王城から消えてどれくらい経った? 次に他の四天王の無事は? 最後に、勇者の動きで何か分かっていることがあれば報告しろ」


「えーっと、魔王様が消えてから今日でだいたい三か月ってとこかな。私も人づてに聞いた話だから多少の誤差はあるかもだけど。んで、二つ目――四天王全員無事。もっとも、最近あった緊急会合で直接会えたのはコルクットの爺さんだけだけどな」


コルクット・ダーハン。

巨大な体躯に本人お手製のメタルプレートと大剣を身につけた巨漢。鬼人族であり、「山の王」と呼ばれる老兵だ。武勇に優れるだけでなく土・岩の魔法も扱い、地政学や鉱石にも精通している。その義理堅い性格から、ナリッサとはよく衝突する。


「他の二人は領地の管理で大忙しだってさ。うちらの領地よりもっと前線側だからね」


「そうか。全員無事なら何よりだ」


「最後、勇者についてだけど――相当消耗したらしく、仲間と一緒に王都まで戻ったらしいよ」


「完全撤退というわけか。ひとまず時間は稼げそうだな。しかし……」


頭をよぎるのは娘のことだ。


(娘を三か月も放置してしまった! 私がいない間、職務で困っていたりしないか? 慣れない仕事で体調を崩してたりしないだろうか?)


「…しかし三か月か」


「そうだよねぇ、三か月も経つと、そろそろまた何か動きがあってもおかしくないよね」


「そうだな」


(そうだ、こんなところでのんびりしている場合じゃない。何が起こるか分からない。魔王城に急がなければ――)

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