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第22話 暴走①

時は遡り、翼竜との遭遇時点。


「自分の手で守りたいんだろ! 行け!」


「……!」


メリクの背中が視界の隅に消えるのを見送りながら、私は軽く辺りを見回す。


(大丈夫だ。娘ちゃんの護衛は精鋭揃いだし、数もいる。それより問題は、こっちの魔物の“数の暴力”だ。四方八方から押されればまずい。いくら元魔王様だとしても、今のあの体じゃ持たないだろう。)


周りの翼竜の位置を確認し、深く息を吸い、精神を落ち着ける。


(だが結局早めに合流はしなきゃ行けないだろうな)


右の拳を腰の位置に据え構えをとる。


「そんなわけで、時間もねぇから……」


腰の拳に炎を纏わせる。拳を握るたびに赤熱の気がほとばしり、周囲の空気が揺らめいた。


「さっさと死んでくれや!」


咆哮とともに群れめがけて突っ込む。


「「火竜拳!」」


直線上にいた五匹ほどが一撃で吹き飛ばされ、炎の尾を引いて地面へと墜ちる。爆風が巻き起こり、焦げた羽が雨のように舞った。だが、まだ十匹近くが空を旋回し、黄色い眼光をこちらに向けている。


背後から一匹が急降下してきた。


「ふんっ!」


後ろ回し蹴りで側頭部を打ち砕き、そのまま身を翻してもう一撃。正面から突っ込んできた個体の喉元を蹴り抜く。


翼竜たちは一瞬、仲間が次々と焼き落ちていく光景に怯み、空中で隊列が乱れた。


(今だ)


体の力を抜き、目を閉じる。息を整え、意識を一点に集中させる。


(生きとし生ける我が炎よ、今この呼び声に応え、かの者達を打ち払わん)


その瞬間、突然無防備になった獲物に対し翼竜たちが一斉に吠え、恐怖を振り払うように突撃してきた。


「――――獄炎」


大気が鳴動した。


次の瞬間、彼女の周囲から爆発的に炎が噴き上がる。

それはただの火ではない。空気そのものが燃え、轟音とともに真紅の竜巻が天へと昇った。


突っ込んできた翼竜たちはその熱に焼かれる間もなく、姿も形も分からぬ灰と化す。

空気が裂けるような音が響き、空が赤く染まった。


――獄炎。

発動には精神統一が必要な、極めて繊細かつ危険な術。

地上で使えば、周囲一帯を焼き尽くすほどの威力を持つため、通常の戦場では決して放てない。

単騎での運用を前提とし、詠唱中は完全に無防備になる。

隙を晒す上に単騎での運用が前提。制御を誤れば自らも炎に呑まれる――そんな代物を扱えるのは、常人の域をとうに超えた者だけだ。


「ふぅ…」


四天王ナリッサは息を吐き、焼け焦げた空気の中で立ち尽くす。


「……こっちは片付いた。さっさと向かわねぇと」


まだ焼けこげた匂いがする空を舞う。

炎の残滓が風に流れ、彼女の背中を照らしていた

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