第21話 親バカ魔王 目覚め
(ねーねーお父様、人間てみんな悪い人なの?)
(どうした、急にそんなこと聞いて)
(だってこのお城にいる人だって悪そうだったり嫌な感じの人たちいっぱいいるじゃない?)
(そうだな、色んな人がお城にいるな)
(でもナリッサちゃんみたいにいっぱいお話してくれるいい人もいるからね…)
(四天王を軽々しく“ちゃん付け”で呼んでいるのは取りあえず置いておいて…それで、なんだい?)
(人間にもいい人がいるかもしれないから、お話で仲良くなれないのかな?)
(そうだね、人間がお話したがっているなら、お父さんもしっかり耳を傾けようと思うよ)
(そうなんだ!じゃあお父様は人間は嫌いじゃない?)
(そうだね。どうにか仲良くなりたいとは思うけど…)
――不愉快だ…
―――――――――――――――――――――
「はっ……」
喉の奥で声がもつれ、意識が水面に浮かび上がる。
目に飛び込んできたのは白く塗られた天井。自分はベッドに横たわっていた。どうやら、夢を見ていたらしい。
「……目が覚められましたか?」
柔らかな声に視線を横へ向けると、白衣をまとった女性が花瓶に花を活けていた。こちらの目覚めに気づいたらしく、軽く微笑む。
(ここはどこだ……?)
横になったまま辺りを見渡していると問いかけるより先に、彼女は察したように答えを返してきた。
「ここは魔王城の病棟でございます。そしてナリッサ様の秘書で在られますため特別に設けられた個室です。――ご安心を。
目を覚まされたらすぐナリッサ様にご報告するよう申し付けられておりますので、少々お待ちくださいね」
丁寧に一礼すると、そのまま小走りで部屋を後にした。
「……魔王城の病棟、か」
独りごちて周囲を見渡す。調度は質素だが清潔感があり、窓辺には新鮮な花が飾られている。戦場から直行で村の医師に任せるのではなく、わざわざ城の医療棟に運ばれたということは――やはり命に関わるほどの重傷だったのだろう。
「……っ」
身を起こそうとした瞬間、全身に鈍い痛みが走る。
記憶はまだ朧げだが、戦いが苛烈であったことだけは体が雄弁に語っていた。四肢が無事であることを幸運と呼んでもいいほどだ。
(それにしても……)
さっきの夢。いや、あれは昔の記憶だ。
今になって娘との会話を思い出すのはなぜか。――久しぶりに彼女と顔を合わせたからか、それとも……。
「よう、やっと起きたか」
静かに、しかしいつになく抑えた声で扉が開く。
入ってきたのは――ナリッサ。
「……珍しいな。お前がそんな静かな入り方するなんて」
「それはな、お前が呑気に気絶してる間に、色々と大変だったからだ」




