第17話 親バカ魔王 交戦
魔物の群れが巣食う森へ、我々は突入した。
「ガウッ!」
森の入口を少し進んだところで、待ち伏せしていたクルトカランの群れが襲いかかってくる。数匹が飛び出してきたかと思えば、すぐにこちらへ牙を剥いて迫ってきた。
先頭を駆けるナリッサは、迷いなく剣を抜き、真正面から襲いかかる魔物の攻撃を受け止め、そのまま走り抜ける。
「総員、武器を構えろ! 無駄に相手をするな、速度を落とさず群れを突っ切る!」
「「「おおーっ!」」」
次々に飛びかかってくる魔物をかわし、斬り伏せ、殴り飛ばしながら、我々はひたすら馬を走らせる。
やがて、魔物の追跡が途切れたのを確認すると――
「よし、信号弾を上げろ!」
「了解、彩煙弾!」
空高く撃ち上げられた弾が破裂し、赤い煙がもくもくと上がる。これで、森の外で待機している後衛部隊にも突入の合図が届いたはずだ。
「全員、ただちに下馬! 武器を構えろ!」
ここから先は、馬では戦いづらい。木々の密集する森の中では、小回りの利かない騎乗戦はむしろ足手まといになる。
「突撃!」
武器を構えた前衛が一斉に駆け出す。
対する魔物たちも、咆哮と共にこちらへ突撃してきた。
「術式展開――『氷弾』!」
森の外で待機していた後衛部隊が魔法を放つ。魔物の背後から降り注いだ氷の弾丸が、次々と敵を打ち倒す。
挟撃は成功だ。確実に数を減らしていく。
だが――
「グォォォオオーー!!」
突然、森の奥から地響きのような咆哮が響いた。
「がはっ……!」
「うっ……!」
「ぐわっ……!」
前衛の数人が、吹き飛ばされるようにして地面に転がる。
現れたのは、他の個体と比べてふた回りは大きい巨体。その身体から放たれる威圧感は、ただの魔物とは一線を画している。
ユニークモンスター――特殊個体の登場だ。
「ナリッサ、ようやく本命のご登場だぞ」
「ふふ、そうだね。ではメリク君、秘書としての初陣を勝利で飾ってきたまえ」
「はいはい、仰せのままに四天王様」
まるで茶番のようなやり取りだが、彼女なりの激励なのだろう。
四天王の秘書――そんな肩書きで魔王軍に加わったばかりの自分は、今ごろあちこちから恨みや嫉みを買っているに違いない。だからこそ、こうして人目につく戦場で実績を立てろ、ということだろう。
だが、俺にはもう転生前のような力は残されていない。それを分かっているのか、いないのか……。いつもながら、ナリッサのノリは軽い。
ユニークモンスターの脅威は言うまでもない。だが、まずはその周囲を取り巻くクルトカランたちから片付けなければならない。




