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第10話 親バカ魔王 農業改革をする③

私は早速、四天王の秘書の一人であるアレヴのもとへ向かい、先ほど思いついた案を伝えることにした。

直接、四天王のナリッサに話をしないのは、内政全般をアレヴに一任しているためだ。


執務室に入ると、アレヴはティーカップを片手に、一息ついていた。

その様子を確認し、私は声をかける。


「アレヴ殿、少しお時間よろしいでしょうか」


「どうしました、メリク殿」


アレヴは静かにカップを置き、こちらへ向き直った。


「アルチャコヴァの農業用水路の改善案を考えましたので、ご拝聴いただければと思います」


「分かりました。では、お聞きしましょう」


「まだ大雑把な計画ではありますが、今から着手すれば、今年の収穫量を大幅に増やせる可能性があります」


私は手元の資料や地図を広げながら、話を続ける。


「また、現地を直接視察しなければ詳細は分かりませんが、老朽化しているとはいえ、既存の水路があるため、資材や労働力を大幅に節約できます」


アレヴは一通り説明を聞くと、考え込むように腕を組んだ。


「確かに、この計画なら資材も人員も近隣の調達で賄えそうですね」


どうやら、かなり良い感触のようだ。


「話を聞く限り、この計画は資材と人員の節約だけでなく、工事期間も通常より短縮できそうですね。

まだ具体的な詰めはこれからでしょうが、どのくらいの期間を想定していますか?」


通常、この規模の工事であれば、半年から一年で終えられれば上出来といったところだ。

だが、今回の計画なら──


「三ヶ月……いや、二ヶ月で終わらせましょう」


アレヴの目がわずかに見開かれる。


「……この規模なら、一年かかっても早い方だと思いますが。ちなみに、その根拠を教えていただけますか?」


なるほど、確かに無理もない反応だ。

アレヴは土木の専門家ではないとはいえ、内政を担う以上、工事の計画書には数多く目を通してきたはず。

大まかな規模感で、必要な期間を推測できるのだろう。


「もちろん、条件次第ではあります。

しかし、旧水路の損傷が軽微であれば、そのまま流用できる。

たとえ損傷が激しかったとしても、全てが完全に使えないわけでなければ、復旧作業は短期間で済みます。

さらに、人員や資材の移動が円滑に進めば、二ヶ月で完成させることも可能でしょう」


「なるほど……。分かりました」


アレヴは納得したように頷く。


「では、詳細を記した計画書を作成してください。そちらを精査した上で、着工の時期を決めましょう」


まだ納得しきれていない様子ではあるが、それでも前向きに検討してもらえそうだ。

とにかく、今は四天王秘書としての仕事をこなし、魔王軍内での立場を確立しなければならない。


──そして、娘が魔王城に戻ってきたときには……。


……いや、待てよ。


「会いに行くだけなら、今すぐにでも行けるのでは!?」


視察で回っているだけであれば、移動中でもおおよその居場所は把握できる。


(どのみち視察のためにいずれ外へ出るのだから……。

……いや、より綿密な計画書を作成するための調査だ! しょうがない、これは職務の一環だ!)


自分の中で都合のいい言い訳を並べ立て、 私は視察ルートを知るために駆け出した。


軽快な──それは、実に軽快な足取りで、魔王城を駆け抜けるのだった。

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