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9.王都への道程

 あけましておめでとうございます٩( 'ω' )و

 昨日ぶりの更新となりますが、今日も更新しますよ


 とはいえ、正月期間はさすがに予約投稿となってますので

 不備やらなにやらの対応は、後ほどになるかと思います


 本年も本作をよろしくお願いします!


 この大陸――ガタカ・マハーラ大陸は、シュームライン王国を真ん中に、その周辺に五つの大国が存在している。


 そしてシュームライン王国を含むそれらの国は六大国家と呼ばれていた。


 私が売られた先、ハイセニア王国もその六大国家の一つであり、シュームライン王国の北にある――国土が六国の中で一番狭い国だ。


 海に面した北側には、壁のような岩山が連なっている。海に沿って連なるその山脈のせいで、海側からハイセニア王国に入るのは難しい。


 一応、山脈の途切れというか、隙間のような場所が一カ所あり、そこはホワイト・ポートという港町があるので、最低限の海洋利用はできているようだけど。


 さらに北側の山脈と繋がるように、領土の北東には三日月状に山が広がっている。

 緑こそ在れ、岩山から連なっているせいか、非常に固い地盤を持っているそうだ。


 その山そのものを城壁として、自然を生かす形で作り上げられたのが、王都アーマイアだという。


 そんな堅牢たる天然要塞に守られた王都に行く場合、シュームラインとの国境のクレバス砦からスタートしたならば、ハイセニアという国を縦断することになる。


 北側の岩山たちをのぞけば、領土全体として起伏が乏しく、なだらかな丘陵や平地が多い土地だ。


 かなり綺麗に道が整備されていて、馬車の揺れも少ない。


 とはいえ――いくら小さめの国であっても、国境のある南から、王都のある北まで、国を縦断するとなれば、距離もあるし時間もかかる。


 話によれはおよそ十日から十四日ほどの道程になるそうだ。

 魔獣の出現状況や天候に左右されやすいそうなので、ブレが大きいそうだけれど。でもそこは重要ではなく……。


 つまり何がいいたいかというと――


《ニーちゃん、暇ァ……》

「そうは言うがな、カグヤ」


 ――ずっと馬車に揺られているだけというのもつまらないということである。


 道中ですっかり打ち解けたニーギエス殿下とカグヤは、互いに敬称を付けなくなっていた。どうにも、ウマが合うようだ。

 とはいえ、カグヤの暇を潰せるようなお話も特にはない。


 敬称といえば、私もカグヤに便乗していらないと、殿下に告げた。

 殿下から、敬称で呼ばれるのはどうにも落ち着かなかったので。


 さておき。

 道中で立ち寄る町などでは、シャワーを浴びたり美味しい食事が取れたりはする。

 けれどもこれがちょっとした旅であることには変わりない。


 基本的に馬車に乗りっぱなしというのも、なんとも身体がうずいてしまう。


 ただ、強行軍という感じでは無く、私や殿下はもちろん、騎士たちを休める為の休憩時間はしっかりと設けられているのをみると、だいぶしっかりしてはいるようだけど。


 それに――たぶんこれ、随伴してる騎士たちって、近衛とか精鋭とかそういう人たちよね。


 前後を歩く護衛の騎馬部隊はもとより、巨魔獣を警戒している六機の巨鎧騎兵も同様だ。

 ちなみに六機のうち四機がエタンゲリエ。

 もう二機は雪だるま(シュネーマン)という名前の機体だ。名前の通りずんぐりとしたルックスをしたタスカノーネ製の堅牢な重装型機だ。


 そして、それら巨鎧騎兵のカラーリングも、歩兵や騎馬兵たちの装備も、その色は白かった。


 これは、関所の砦たちの装備と同じで、この国のベースカラーなんだろうけど、私たちに随行している騎士たちや、巨鎧騎兵たちは、それに加えて、装備の一部が金色の縁取りが施されている。


 ニーギエス殿下が乗っていたエタンゲリエは、純白に金色のラインがいくつも入った豪奢なものだった。

 つまり、純白に金色を差すというのは――この国においては王家の色ということだ。


 肩当てや盾、手甲の袖部分などの一部だけとはいえ、そのカラーリングを許された装備をしているというのは、王家にそれを身につけることを認められた騎士たちということなのだろう。


 ということは、私はVIP待遇だと思って間違いない。国賓レベルで歓迎されていることになる。


 ハイセニア王国は、二束三文で買い取った、面白みの無い冷たい女をそんな歓迎して良いのだろうか?


 なんてことを考えているうちに、休憩時間になった。


「んんー! やっと休憩……」


 休憩中に馬車から降りて大きく伸びをするのが日課になってる気がする。


《ホントだねぇ……凝る肩ないのに肩凝って来ちゃいそうだし》

「不自由させてすまないな、二人とも」


 そんな私たちのやりとりに、ニーギエス殿下が声を掛けてくる。

 どうやら、私たち用のテーブルやイスの準備が整ったようだ。


 殿下と共にそちらへと向かいながら話を続ける。 


「退屈なのはそうですが、不自由はしておりません」

「そうかい? それならいいのだけど」

「ただ……」

「なんだい?」

「日々の常に戦闘、鍛錬、勉強、機体メンテナス、書類仕事などをしていた身としては、何もやらない時間と言うがどうにも……」


 暇――というものにどうにも馴れない。

 何かしたいけれど、馬車の中だと出来ないし。


 白い簡易テーブルの上に、お茶とお菓子が用意されている。

 私と殿下は、白い簡易イスに座りながら、話を続けた。


「戦闘、鍛錬、勉強、メンテナンスは分かるが……書類仕事はどのようなコトを?」

「戦果報告や消耗品報告は当然として、ヨーシュミール殿下が定期的に持ってくる王宮の書類仕事などもしていましたね」

「具体的には?」

「王家への奏上や、様々な予算書類や事業の進捗や結果報告、税収や輸出入などを含めた収支報告書などの確認と、それのチェック……でしょうか。

 私が確認したり、気になる点にチェックを付けたりした書類を殿下は持ち帰って、自分のサインだけ書いて完了させていたようですが」


 カグヤとニーギエス殿下が難しい顔をして、顔を見合わせている。

 本当に気が合うのね。あの二人。


《その書類って、ちゃんマスがやる理由ある?》

「一応、王太子殿下の婚約者だし……将来王妃として手を付ける仕事なのだから、今のうちにやって馴れておけ――と言われて、やらされていたけど?」


 ちょっと怒ったような顔を画面に表示させながら訊ねてくるカグヤに、私が素直に答える。

 すると、カグヤとニーギエス殿下は二人揃って嘆息した。


《ニギのアニキ……こりゃ相当だぜ?》

「本当にな……意味がわからんぞ」


 私は二人のやりとりの意味が全く分からないんだけど……。


「キミは働きすぎだ……いや、働かされすぎと言うべきか?」

《マスターは、仕事と使命に、日常を上書きされすぎちゃって、常識に疎くなりすぎてるカンジだねぇ……》


 やっぱり二人の言っている意味が分からなくて、私は首を傾げる。


「本人に自覚がないのがタチが悪いな」

《その膨大な量の仕事を、涼しい顔をして完璧にこなしてしまうからこそ、怖がられたんだろうけどさー……》


 怖い? 私が?

 うーん……ただ与えられた仕事を必死にやってきただけなんだけど……。


「あ、仕事と言えば……」


 せっかくだからニーギエス殿下に聞いておこう。


「到着してから教えて頂けるそうですけど……結局、私はハイセニア王国に何を求められているのでしょうか?」

「ん? そうだな……」


 ニーギエス殿下は、お茶で口を湿してから、少し考える素振りをして、応えてくれた。


「詳細は王城で父や兄を交えてすると思うが――ざっくり言ってしまえば、うちの巨鎧騎兵(リーゼ・ルストン)に関する質と技量の向上……かな」

《つまり、うちのマスターに教導をしてもらうって話? むしろ、うちのマスターを中核にした教導隊の設立とかそういう?》

「教導隊か、いいなそれ。まぁでも操縦技術や巨鎧戦術(きょがいせんじゅつ)だけの話じゃあないんだよ」


 ……操縦や戦術だけの話じゃない?


「技術力――文字通りの巨鎧騎兵関連の魔導技術(マギ・テクノロジー)の向上も」

《え? 技術力ってそっち!?》


 カグヤが驚いているけど、私も驚いている。

 教導ぐらいなら出来るだろうけど……テクノロジー向上はさすがに私には荷が重いような……?


「ハッキリ言うとね。うちって、巨鎧騎兵関連――というか魔導工学の技術力は六カ国の中で恐らく下の方なんだと思う。

 ヨーグモッツ魔導国や、タスカノーネ将国のように、他国へ輸出できるほどの巨鎧騎兵の量産体制はない。

 それどころか、シュームライン王国や、商業国家ポート・アオーノのように、最低限の独自開発技術もない。

 私の専用機含めて、どれも他国から輸入したモノだ」

「独自開発技術がないのは、ナイトース王国も同じでは?」


 ナイトース王国は農業国家で、自然信仰が強い国だ。

 生活に必要な最低限の魔導技術だけを使っているせいもあって、巨魔獣に対して脆い国でもある。

 なにせ、巨鎧騎兵すら最小限にしか配備してないのだから。


「確かにその通りだけど――あそこはタスカノーネとしっかりと同盟を結んでいるからね。

 資源の乏しいタスカノーネへ食料などを優先して融通する代わりに、自国では対応困難な巨魔獣などの対処をタスカノーネに依頼しているんだ」

「ああ……そうでしたね。

 それに、あの国は大陸の食料庫として上手く立ち回ってますからね。何からあれば、周辺諸国が手を貸すコトもあるでしょう」

「そういうコトだね。だけど、ハイセニアはそういう周囲からお助けは期待できない」


 周辺諸国との仲が良好であるうちはいいけれど、悪化してきた時を想定するとかなり厳しい……か。


《あー……カグヤちゃんも分かってきたぞぅ》


 ハイセニア王国は、何かあったとき――今の各国の均衡(きんこう)が保たれている時代が終わった時、非常に脆い。


 巨鎧騎兵の独自生産環境が整ってないから、ヨーグモッツやタスカノーネから機体の輸入が出来なくなった時、巨魔獣などに対応する手段がないのね。


「独自開発機がないというのも、何かあったときに弱い」

《いくら外国製のが性能良くたって……結局は外国製だもんね。問題が発生した時に対応しきれなかったり、変な仕掛けされてる可能性だってゼロじゃないかぁ》

「そういうコトだ」


 ニーギエス殿下はカグヤにうなずいたあとで、私を見る。


「もちろん、全てを十全にこなして欲しいとはいわないさ。

 ただ、軍事教導だけでなく、そういう技術についてもアドバイスなどが欲しい。

 そういう意味では、キミは我が国のテコ入れ要因――あるいはカンフル剤、みたいなカンジかな」


 ……ハイセニアから評価が高すぎる気がするのだけど……。


夜にもう一話更新予定です٩( 'ω' )و

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