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同じ轍を

 それからレヤンとアネリーゼは、どちらからともなくギルドへ向かう様になった。先に着いた方が無料のお茶を啜って待ち、揃ったところで掲示板の依頼を吟味する。

 掲示板に下がる木の板に書かれている依頼で、Eランクのレヤン達が受けられるのは、近場で採取や町のお手伝いくらいだ。


 この日も採取の依頼を受けたが、レヤンがシュリアや仲間達と学んできた知識をアネリーゼに教えているのも有り、殆どまっさらなところから模索していったシュリアの時とは違い、採取で満足出来なくなるのはアネリーゼの方が早かった。

「アネリーゼ、明日は獣を狩ってみようか?」


『レヤン、明日は獣の狩猟に挑戦してみないか?』


 狩猟の依頼はDランク昇格試験として申請すれば、Eランクでも受ける事は出来る。それでいて冒険者をやるようなのは血気盛んな若者達のばかりなので、余程の不器用でなければEランク止まりはそうそう無い。

「そうですね! 今度は狼が来ても腰を抜かさないようにしますよ!」

 アネリーゼも“剣士”なだけあって、チマチマ採取をするよりは豪快に戦う方が肌に合っていた。



 翌日。二人は早目にギルドへ向かい、安定した需要が無いくせに冒険者には人気どころな、害獣駆除や食肉確保の狩猟の依頼を狙う。運が悪いと直ぐに無くなってしまうのだが、早目に動いたのが功を奏して、アネリーゼにお誂え向きな“狼退治”の依頼を見付け森に入った。


「そろそろ目撃された場所に着きますね〜」

「アネリーゼ、弓は奇襲に対応に弱いんだ。なるべく開けた場所を歩いてくれよ?」

 アネリーゼを心配するレヤンだが、当のアネリーゼはそれには些か不満がある様だ。

「むうぅ〜、私だって戦えます! 狼が藪から飛び出して来たってへっちゃらですよ!」


『レヤン、気持ちは分かるがお前は後ろだ。私が誘き出してお前が射つ。任せたぞ!』


「───そうか······じゃあ、任せるぞ。僕の弓の死角に入らない様にだけは気を付けてくれ」

 アネリーゼは新調した長剣をしっかり握り周囲を警戒する。その姿はかつてのレヤンに重なり、かつてのシュリアと同じ目線に立ったレヤンは思う。

(······僕はシュリア(お前)とは違うんだ)


 その日の狩猟は多少まぐれが有りながらも、アネリーゼが有言実行で狼を一頭狩猟することが出来、レヤンとアネリーゼのパーティーはDランクへの昇格を果たした。



 夜は昇格祝いで少し奮発した料理を選ぶ。レヤン達の主食のナーンには、普段と違い贅沢にチーズが練り込まれている。それをアネリーゼは、スパイスが効いた付け合せのスープに浸して口いっぱいに頬張り、テーブルの真ん中に置かれた燭台の灯りに照らされて、幸せそうな顔を見せていた。

「君は本当に美味しそうに食べるね」

「だって美味しいんですもの!」

 アネリーゼは一日一食、夜だけ食事を摂っている。食べる事が好きなアネリーゼは一食の量が多く、他に合わせて食べると、どうしても体型的な問題が出て来てしまう。そこでアネリーゼは、夜だけ気兼ね無く食事を摂る事にして、現在に至っている様だ。

 ナーンのお替りをしたアネリーゼは、お替り用のチーズの無いナーンにがっかりしながらも、スープをきれいに拭き取り食べ終えた。



 それから、レヤンとアネリーゼは害獣駆除を軸に依頼を選んで、冒険者稼業を進めて行く。これはレヤンとシュリアも通った道で、食肉や毛皮用だと町まで運ぶのに人手が足りず、一度苦労してからは討伐証明部位以外は、その場で自然に還す事が出来る駆除を選ぶ様になった。

 放置された獣の死体は、新たに獣や魔物を呼ぶ撒き餌になり、冒険者を含めた生態系の維持に貢献する事になる───のだが、駆除依頼も数に限りが有り、そればかり選んでいる訳にはいかない。

「アネリーゼ、パーティーメンバーを増やさないか?」

 レヤンは受けられる依頼を増やす為に、アネリーゼに提案した。

「レヤンさん······私では力不足ですか?」

 “僕じゃあ力不足か?”それはレヤンもシュリアに言った言葉だった。そして続きを思い出す。


『レヤンは頑張ってくれているが、流石に二人で運ぶのはキツイ。だから男手を増やそうと思う』


 その時のレヤンは心を酷く傷めた。だからレヤンは言う。

「いや······そうだね。アネリーゼは凄く頑張ってくれてるよ。このまま二人でも良いかな?」


「レヤンさん、私頑張りますよおっ!」

 レヤンの答えにアネリーゼは胸を張って答え、比較的大振りな胸の膨らみが強調される。レヤンはアネリーゼの元気な姿に安堵するが、それ以上にアネリーゼに嫌われなかった事に安心した。

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