キャラメイク
「いいですよ」
「この世界の一般の人はどのくらいのスキルポイントを持っているんですか?」
先生の許可をもらい紀先が質問した。
おれもそこは気になる。
「そうですね、多少の前後はありますが成人した時に10ポイント持っていると思ってください」
けっこう少ない、戦闘用の魔法は覚えることもできないのか。
「レベルが上がってスキルポイントをもらえたりしないんですか?」
紀先が質問を続ける。
そうだな、1レベルごとに初期値と同じ10ポイントがもらえるなら10レベルになれば100スキルポイントがもらえる。
おれたちは同じレベルでも90ポイントのアドバンテージがあるからそこそこ有利と言えるのかな。
「1レベルごとに1スキルポイントですね」
えっぐ。
おれたちは90レベルのアドバンテージをもらっているのか?
能力値の成長もあるだろうから一概に90レベルの差があるとは言えないが、それでも50レベル程度の差はあるだろう。
「で、でもみんなレベルが上がりやすいとかそういうことはないんですか」
紀先も多少動揺しているか。
レベルの上がりやすい環境なら100レベルとかごろごろいてもおかしくないからな。
「一般の人ですと10日間戦って1レベル上がるくらいです」
一般の人、ごめん。おれたちチートだったわ。
「皆さんはもっと簡単に上がりますよ、1日に1レベルは簡単。頑張れば3レベルとか上げられます」
ごめんって先生。チートなのは認めますから。
「それでも、せっかく魔法が使えるのにちょっと地味だったかもしれません。
わかりました、あなた方が選んだスキルからひとつランダムでスキルレベルを上げましょう」
先生はそう言うと、また椅子に座った。
え、ちょっと待って。
先生が想定しているのは、スキルレベル2の魔法適性が3になって威力が10倍に上がることなんだろうけど、
全てのスキルポイントを火魔法適性に振り込んでスキルレベル3を取れば4に上げてもらえる。
スキルポイントを1だけどこかから工面してくれば、1000倍の威力の着火が使えるわけだ。
やばくない?
今のはメラゾーマではない、メラだ。ができるよ。
先生の言葉を聞いてクラス中がスキルポイントの振り分けをやり直している。
ランダムで上がるのならスキルレベル1留めはやめた方がいい、1が2に上がっても9スキルポイントしか得をしない。
最低でもスキルレベルオール2。
スキルレベル3の極振りも重要度が増してきた。
早速周りの友達と相談を始める人が増えて教室がざわざわし始めた。
特化するのであれば周りとの連携が重要、さっき考えたように火魔法なら1レベル上げれば1スキルポイントをもらって着火を覚えられるが、
水魔法となると10レベル上げて治癒を覚えないと戦力にならない。
それまでは寄生状態になるので信頼できる友達が必要だ。
おれ? 友達はいるけどどうしてだか2人組を作る時に余るんだな。
おれが余ることで誰かが余らなくなる、そのことにおれは幸せを感じるんだ。
・・・負け惜しみだけど。
周りを見渡すがおれと話すこともある羽村は後ろの席の谷口と話している。
親友と言えるほどの相手がいないので、おれが何かに特化したキャラクターを作るのはリスクが高い。
「それでも見つけちゃったんだよな」
先ほど取得をあきらめた所有経験値増加。
スキルレベルと効果の上がり方の関係を見ると、このスキルもスキルレベルが2になれば所有経験値の増加量が10%になると思われる。
1%でいくら増えるか表計算ソフトで計算した時に10%も計算をしていた。
結果を見て、さすがに現実味がないよなと思っていたが、スキルレベル上昇というサプライズプレゼントにより現実味が出てきた。
「これは、こちらの世界の人生を賭けてもいいんじゃないか?」
敵がいるゲームの世界なら死亡率もかなり高いだろうけどゲームオーバーは現実世界への復帰でリスクは低い。
何よりゲームのようなものだと思えばこれを試さないわけにはいかないだろう。
そうと決まれば取得経験値1%増加を取得するためにスキルポイントを捻出する作業からだ。
スキルレベルに振っているスキルポイントをすべて回収し、魔法もすべて忘れる。
魔法適性を下げて、手当たり次第にスキルポイントを返却した時と同じようにペナルティーレベルを上げていく。
火魔法適性のペナルティーレベル1で火魔法使用不可。
これは適性を外した時点で使うつもりもないので取っていい。
ペナルティーレベル2になると火魔法耐性半減。
返却されるスキルポイントは9で合計10。
「まあまあまあまあ」
魔法使いが多そうなクラスメイトと揉めると命に係わるペナルティーだが、序盤のモンスターが魔法を使ってくることもそうそうないだろう。
恐る恐る火魔法適性のペナルティーレベルを3にする。
効果は火魔法大弱点。
返却スキルポイントは合計で100.
返却されるスキルポイントは破格、一般人が100レベル近くまで自分を鍛え上げてやっと到達するだけのスキルポイントだ。
敏捷で同じだけのペナルティーを取った時には一歩も動けなくなるほどの凄まじい制限。
序盤で火魔法の脅威がない中でこれだけのメリットを受けてしまっていいのだろうか?
「いや、リスクは負うって決めたんだ」
基本の4属性のペナルティーレベルを3まで上げる。
能力値にペナルティーを入れた時と同じような不安を感じる。
これでも合計500スキルポイント、まだ半分しか工面できていない。
ペナルティーを入れる対象としては剣技などの物理戦闘系統。
ためしに剣技のペナルティーレベルを3上げると、剣装備不可から始まって斬撃耐性半減、斬撃大弱点と続く。
「これはダメだ」
序盤のモンスターでもさびた剣ぐらいは持っている、弓は少ないかもしれないがどうやら遠距離攻撃全てに提要されるようで、投石でも致命傷になりそうだ。
だからと言って能力値にペナルティーを入れるのは問題外。
魔法にペナルティーを入れた時に同じような不安と言ったがあれは嘘だ。
能力値のペナルティーの方が100倍は怖い。
「無理なのか」
頭を抱えて一人でぶつぶつ言っているおれ。
自分を弱くするためにここまで悩むキャラクターメイキングがあるだろうか。
せめて魔法の耐性のように序盤には関係のないペナルティーがあればいいのに。
「魔法?」
抱えていた頭を上げる。
一度下げ切った4属性の魔法適性をスキルレベル2まで上げる。
スキル取得欄に現れる上級属性。
「おれの糧になれ」
光魔法、闇魔法、氷魔法、雷魔法のそれぞれをペナルティーレベル3まで上げる。
基本の4属性と同じようにそれぞれ100スキルポイントの返却がなされる。
上級魔法属性なんて序盤はおろか、クラスメイトでも持っているものは少ないだろう。
つまりノーリスクと言ってもいい。
この情報を共有しようと羽村の所に行こうとしたが、先生がパンパンと手を叩く。
「はいはい、ここから先は相談は禁止です」
タイムリーな制限、やっぱりおれも含めて全員の思考は読まれているな。




