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7日目のビルドエラー

11月分 2つ目

 昼間に十分寝たはずなのにキアの目がとろんとしてきて眠そうになっている。

 食事も十分とったし、昼寝くらいでは寝足りないようだ。


「おれもそのうち転職しようかな。

 しばらくはレベル上げをしながら生活費を稼ぐから、明日からよろしくね」

「お任せください」

「がんばるゾ」


 翌朝は寝すぎる位に寝たせいで頭がぼんやりする。

 おれは寝すぎたが、ニアとキアにとっては適正な睡眠をとれたようで肌と髪の艶が増していた。

 元々きれいな2人だったけど、健康的になって表情まで明るくなった気がする。


『遊佐 蕗

レベル 17+10=27

HP 41+20=61

MP 41+20=61

攻撃 19+10=29

防御 19+10=29

知性 19+10=29

精神 19+10=29

敏捷 19+10=29

SP 411+10=421

EXP 8192+4907=13099

NEXT 13500


スキル(+)』


 朝一番のステータスチェックをしたら10レベルも上がっていた!

 昨日の予想では8レベルくらいかと思っていたが想定より多い。

 どうやら、横殴りペナルティで保留されていた分と昨日増加した分の9%が増加の係数に加わったせいらしい。


 おれがステータスをチェックしてるのを見てニアたちも自分のステータスを開く。

 そして一瞬手と顔が固まった。


「いいのカ? 毎日となると恩返しできる気がしないゾ」

 キアがニアの服の裾をつまんで小声でニアに問いかける。


「うちは恩返しはあきらめました。

 これからは従魔の基本に戻って、わが身をリーダーの所有物だと考えます。

 キアも恩返しよりも、より良い従魔であることを心掛けなさい」

 ニアは悪い方向に吹っ切れたようだ。

 2人の経験値を利用させてもらっているのはおれの方なんだけどな。


『ニア 術師

レベル 58+1=59

HP 118+1=119

MP 234+3=237

攻撃 88+1=89

防御 88+1=89

知性 146+2=148

精神 146+2=148

敏捷 88+1=89

SP 33+1=34

EXP 28853+613=29466

NEXT 29500


スキル(+)』


『キア 剣士

レベル 64+1=65

HP 252+3=255

MP 124+1=125

攻撃 158+2=160

防御 158+2=160

知性 94+1=95

精神 94+1=95

敏捷 94+1=95

SP 7+1=8

EXP 31724+613=32337

NEXT 32500


スキル(+)』


 パーティーのタブから2人のステータスを覗き見る。

 自分の10レベルアップを見た後だと1レベルアップがかわいく見える。

 2人にもおれのステータスを見せてやろうかと思ったが、1レベルアップを見て固まるのだから10レベル上昇なんか見たら腰を抜かすんじゃないだろうか。


「今日はオークの討伐だな」

 10レベルアップを見た後だと魔物を狩って経験値を稼ぐのが無意味に思えてくるが数値としての経験値とは別に実体験として討伐を経験しておくのは無駄にはならないだろう。

 ただでさえスキルに頼りきりの『剣術』に『光魔法』だ、長年かけてレベルとスキルを育ててきたベテランと手合わせをしたらあっさり負けてしまうんじゃないだろうか。


「はい」

「ゾ」

 ニアとキアはコクコクと頷く。


「拠点も変更しよう。

 おれも職業に就きたいから何かの神殿がある街を目指して移動したい」


「移動は今日からですか? オーク狩りは森の深い方に入りますから、オークを狩ってから次の街を目指すのは大変ですね」

 両方は無理か、オークの討伐も特定の個体を対象にしているわけではないから、この街で受けた依頼を他の街で報告しても構わない。

 期限も差し迫っているわけじゃないから、街の移動が先かな。


「先に移動しようか、転職というか就職できるなら早い方がいいだろ?

 この街って神殿はあるのに就職できるって話は聞かないし」

 おれの言葉にニアはポンと手を叩いて納得の顔。


「この街の神殿は無職になるための神殿ですからね。

 あまり訪れる人もいないですし、無職の方に対して説明することもないでしょう」

 職業のリセット?

 前も考えたけど、スキルの取り方によっては職業に就いた方がスキルポイントの効率が悪くなることもある。

 だとしても能力値は就職した方が上だし、自分の傾向を把握したうえで就職するから、無職に戻るのはよっぽど考えなしの人だけだろう。


「それじゃあ用はないな、どこを目指すかはまだ決めてないけどこの街からは離れることにしようか」

 なにしろ、明日の朝には転職条件である30レベルは越えているわけで。


「魔法と剣術どちらを伸ばすべきかな?」

 剣術も魔法もスキルレベルを3まで上げているので、どちらかの職業に就くとスキルポイントの消費が損と得で相殺かマイナスになる。

 だが、魔法を育てるには魔法のスキルレベルに加えて、個別の魔法も覚えなければいけないので余計にスキルポイントを使っている。


「リーダーは両刀使いだったナ」

「それでしたら無職のままでいるのも一つの選択ですね」

 ニアの意見としてはステータスを伸ばすよりはスキルポイントの効率を求めた方が最終的に強くなりやすいということだ。

 そして効率を求めるのであれば魔法か物理のどちらかに特化させるのがこちらの世界での常識になっているみたいだ。


「育て間違ったか? 魔法戦士みたいな職業はないってこと?」

 あと両刀はなんか意味が違うように聞こえるからやめて。


「職業としてはあまり聞いたことはありません。

 リーダーのように武器と魔法を両方育てて、30レベルを超えても無職のままでいる人はいますけど」

 ニアは口を濁しているが、そいつもビルドエラーじゃね?


「そうカ? 会ったことはないけど蒼剣士とか緋剣士なんか聞いたことあるゾ」

「あれは職業なんですか? てっきり自称しているだけかと。

 でもそうですね、魔法使いだけでもメリットとペナルティーのかかり方が何種類もありますから、剣術にペナルティーがかからない魔法使いの職業があるのかもしれません」

 キアの噂レベルの話にニアもないことではないという。

 職業でオープンにされているものは戦士と魔法使いくらいのもので大抵のものは条件が付いているか隠されている。

 簡単な条件としては魔法使いギルドに入って上納金を治めるとか、国の軍隊に志願して兵役を務めるとかだ。


 キアの就いている剣士なんかはその兵役で就くことができる。

 でも、ニアの木魔法術師なんかはエルフが隠していることもあって、存在すら知らないものも多い。


「噂しかないなら探して見つかるものでもないだろうな」

 蒼や緋だというなら水魔法と火魔法だろうし、おれが今覚えている光魔法はそれ以上に見つかりにくいだろう。


「そうかもナ」

「武器と魔法、両方覚える人は実は多いんです。

 スキルレベル3で必要なスキルポイントが100に跳ね上がりますので誰もがそこで伸び悩みます、そんな時に手軽に取れる魔法があったらつい手を伸ばしてしまうのでしょう。

 結果どちらも伸ばし切れずにそのまま引退する冒険者も多いと聞きます」

 ニアがよくありがちなビルドエラーの例を話す。

 まんまおれだった。

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