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エッセイごった煮

文旦大好き!

作者: 鶴舞麟太郎

 嫌いな方はブラバしてください。





 みなさん。今シーズンは文旦食べましたか?


 え、食べてない!? それは大変! まだ、ギリ間に合うかもしれません。こんなものを読んでる暇があったらすぐ注文しないと!


 え、食べたことがない!? なんということでしょう! そんな方には私が文旦の魅力を教えて差し上げませんと!




 文旦ぶんたんは、別名ザボン。ボンタンとも言います。駅のキヨスクとかでよく見かけませんか? ボンタン飴。あれの原料ですね。

 ボンタン飴といったらなんと言ってもオブラートです。最近はオブラートにくるまれているものが減りましたので、うちの子どもなんかはあれを剥がして食べてました。「そのまま食べられる」って言ってもなかなか信用しないんです。オブラートはラップみたいだから信じられないのも無理はないんですが、あんなものなのに口の中で溶けてく感じが良いんです……。





 すいません。文旦の話でした。


 最初から偉そうなことを語ってみましたが、私と文旦の接点は、20歳(はたち)前までは、それこそボンタン飴ぐらいで、ボンタン飴の原料になっている柑橘かんきつ類があるってことぐらいしか知りませんでした。 


 私が生文旦に初めて出会ったのは、大学時代、自転車部の春合宿で訪れた高知県でのことでした。

 高知県には、山口県の秋芳洞、岩手県の龍泉洞と並ぶとされ、日本三大鍾乳洞の1つということになっている龍河洞というものがあります。私は鍾乳洞も好きなので、この3つは全て行ったことがありますが、龍河洞は突き抜けていました。私がどう思ったのかは、この後の文脈から察しろ。


 さて、その龍河洞。春休みの観光シーズンということもあって、出口には露天が出ており、その中に子どもの頭ほどもある巨大なミカンを売っている店がありました。それこそが文旦だったのです。


 明らかに荷物になることはわかりきっていましたが、とりあえず食べ物なら何でも挑戦するのが私です。「こんな面白そうなものを食べなかったら、わざわざ金をはたいてまでこんなところ(●●●●●●)に来た甲斐がない!」とばかり、即決で数個買い求め、30kmほど先の宿まで運んで食したのでした。




 以下、初文旦の感想です。


 ①でかい。

 ②きにくい

 ③皮が厚い

 ④可食部が少ない

 ⑤種だらけ

 ⑥旨い!


 まず、皮が厚すぎてそのままでは剥けない(※刃物は持っていませんでした)ので、自転車の修理用に持っていた六角レンチをお尻の所にぶっ刺して、そこから指を突っ込んで剥き始めたのですが、皮が厚いこと厚いこと。頭の方なんか2cm以上ありそうな感じです。


 で、頑張って剥き終わったときには、剥く前と比べると、何かちんまりした感じになってしまい、心の底からがっかり感が湧き出てきました。


 気を取り直して、袋を開くと……。


 中から出てきたのは、透明感の強い薄い黄色の果肉と、大量の種でした。


「これ全部取るの? 手が滑って果肉をつぶしちゃって、手がベタベタになるんじゃね!?」


 げんなりしながら、種を外し始めたところ、意外や意外、果肉の粒がしっかりしているため、指を突っ込んで種を取っても果肉に傷が付きませんでした。そんなこともあって、大量に種がありましたが、すぐに落として、いざ実食。




 食べた感想は『旨い』。味は『爽やか』。これだけでした。



 甘みもありますし、酸味もあります。ただ、それ以上に『爽やか』なんです。それしか言いようがありません。

 食感も最高です。果肉の粒がしっかりしているので、噛むまでは完全に形を保っています。

 そして、噛むことによって初めて、果肉のひと粒ひと粒から瑞々しく爽やかな果汁がほとばしり、口内いっぱいに広がる。


 こんな最高の出会いをした私は、すっかり文旦のファンになっていました。





 とある小説があります。 某サイトのランキング1位にして、総合評価も数十万ポイントに達しているその小説には文旦が登場します。そして、その小説の文旦は、万能薬『エリクサー』の原料ともなる、伝説の果実『アムブロシア』と同一の物として描かれています。私は初めてそれを読んだとき、一瞬にして深く納得しました。


『アムブロシア』なる物が存在するとしたら、文旦の大きさ、爽やかさ、そしてかぐわしさこそ、それにふさわしい。私はそう思いますし、作者の慧眼に感心することしきりです。



 ただ、1つだけ問題があります。その小説で文旦が出てくると、食べたくなるのです。


 いつでも食べられる温州ミカンやリンゴ、バナナなどとは違い、文旦は冬から春にかけての一時期しか口にすることは叶いません。

 ところが、小説の方は、夏だろうが秋だろうが、話の展開次第で文旦が登場することがあります。

 そんな時、私は主人公たちが旨そうに文旦を食べる様子を読みながら、身もだえをするしかないのです。



 さあ、そんな中、今シーズンも文旦の旬がやって参りました。

 2月末以降、私は行きつけのスーパーで、毎日文旦を探しておりました。昨年まで毎年入荷していたので、今年も入ることを信じて。ところが4月に入っても入荷しません。

 じれた私は、30kmほど離れた、高知県と交流のある道の駅にり出しました。こちらにもありません。例年なら山のように積まれているのに……。いぶかしく思い、店員さんに尋ねると、「今シーズンは不作で入荷しなかった」という衝撃の情報が!


 このままでは来シーズンまで食べられません。色が似ていても文旦はグレープフルーツではないのです。慌ててネット通販を見ると……。良かった! まだ売っています!!


 そして私は、何とか今シーズンも文旦にありつくことが出来たのでした。


挿絵(By みてみん)

 通販で買った文旦

※ちょっと小ぶりです。が、このサイズ



挿絵(By みてみん)

 パカッと皮を剥いて



挿絵(By みてみん)

 身を取り出し

※このように種だらけです



挿絵(By みてみん)

 種を取って、盛りつけて


 いただきます!!













 今年もおいしゅうございました。


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― 新着の感想 ―
[良い点] え!? ザボンと文旦って、同じものだったんですか!? ザボンは食べたことがあるけれど文旦は食べた事がない(ボンタンアメの材料とは知っている)と思っていました。恥ずかしい……。 そしてザボ…
[良い点] 正直フルーツは自分で買ってまで食べない上に、文旦、甘夏、夏みかん、八朔、あとなんだっけ……とにかく見分けがつきませんでした。 これを読んだらスーパーで初めて級に意識して果物売り場を眺めて…
[良い点] しまった〜まんまとテロリストの術中に(;´Д`) 晩白柚も負けないくらい美味しいですよヽ(=´▽`=)ノザボンは砂糖漬けをよく食べてました(*´艸`*)
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