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とある学生たちのおしゃべり

作者: 芳寛

『呼び出したのは……』に出てきた小野一族の方のお話です。

私は国立大勤務のしがない事務員である。(ヒラ歴10年。嫁さんナシ。)

今日も今日とて学生食堂で、安いが「金返せぇぇぇ!」と時折無性に叫びたくなるマズい定食を掻き込み、学生たちの何気ない会話をオカズにしている。

なんで旨い飯屋に行かないのかって?

近くに食堂やコンビニが無いし、少ない時間で飯を食いながら学生たちの流行を知っとかないと、会話が成立しないからだ……。本当に切実なんだ………。

あとは裏家業上のリサーチといったところか……。


なんか面白いネタないかなぁ~などとラーメンと同じ具がしか入ってない冷やし中華を食べてたら、妙な会話が後ろの席から聞こえてきた。


「っくぅあぁぁぁぁぁ………チャーハンの不味さが身に滲みる………寝不足に効くなぁ~」

「コーヒーみたいに言うなよぉ~。余計不味く感じるじゃんか。

……最近何かあったのか?クマできてるぞ?」

「最近ゼミの研究が山場で、泊まり込みが続いてるんだけどさぁ~、仮眠とってると真夜中に外から『いちまあぁ~い…にまあぁ~い』なんて何かを数えてる声がするんだよ……」


それってまさか……いやでも確かあのゼミの外には確か古井戸が………。

ン百年経ってんのにまだ成仏してないのか………。


「なんだあ?真夜中に在庫管理でもしてんのか?明るいときにしろっての。」

「だよなぁ?しかも、毎夜『一枚たりないぃぃぃぃーーーー!』って叫んでんだぜ。

こっちはこっちで不眠と溜まった疲労で、体が死後硬直みたいになって動かなくってさぁ。声も出せないから無視して寝てんだよ。」


ソレ違うから!いろいろ間違ってるから!


「何を合わせてんのか知らないけど、結構前からその在庫管理やってるみたいなんだよね。

こんなに長い間合わないなら作り直すか再発行するかすべきだろう?

なのにこの間は『(いち)から(きゅう)うぅぅぅ!』なんて数えててさあ~。」


グレた!? っつーか、どっから仕入れたそのネタ!ちょっと古いけど。


「近所迷惑も考えずに夜中に大声で仕事してる癖に、怠慢だな。数をきちんと合わせるのが研究員の勤めだろう。」


って言うか、むしろキミ達いろいろツカれてないか?泊まり込みってどのくらいだよ?労働基準法抵触してないよね?

ちょっと周りと相談するか………。



本家に相談の結果、美術科で試作している国宝の日本画をプリントした皿を古井戸にお供えしたところ、『真夜中の在庫整理』はなくなったらしい。

らしいというのは、とある職員の苦言により、泊まり込みの研究が自粛されたからだ。どうしてもという場合は数日おきに健康診断が義務化され、ひどい場合にはドクターストップがかかるようになった。

複数のゼミからは苦情が出たが、「過労死が出て研究が打ち切られるよりはマシだろう」と言ったところ、口を閉ざした。(実際どこぞのゼミでは過労死寸前だったらしい)

その為、例の学生たちからはその後の『在庫管理』はどうなったか聞かれなかったが、あの声は他にも目撃者(?)がいて、その後のことは彼等から聴いた。


その過程で誰一人として怪異であるとは気付かず、むしろ邪魔しないようにと放置していた事が判明した……………。



(仮名)お菊さぁ~~んんっっっっ……(泣)



いや、近づかない・相手にしないってのがベストな対処法なんだけどね!? 

コレがジェネレーションギャップというものか……………。


ようやく帳尻が合ったのだろうと皆明るく言っていたので、多分これで良かったのだろう……そうに違いない。そう思おう。




そして私は今日も食堂でマズい学食を食べるのだった。

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