1話 @マーク
いつまでもプールの帰りのことが頭から離れない。誠くんのことが頭から離れない。私は揺れている。何度割り切ったって、本当にいいのだろうか。と、頭に声が響く。でも私は御厨くんを見ている。そんな自分が嫌になる。穴の空いた心を、御厨くんで満たす。無限ループだ。もう嫌だ。最近の話をしよう。最近はずっと御厨くんと帰宅している。電車のなかでは、隣に座るのが私たちの帰宅時ルーティーンだ。彼は私より手前の駅で降りていき、そこで別れる。家に着いた私は、御厨くんとあいつのことを考える。その後宿題をして夕飯を作る。一人で食べて父親が帰宅する前に風呂に入る。なんとなく父親が家にいるときは風呂に入ろうにも気が進まない。その後はスマホと過ごす。気づけばLINEの通知を気にしていてそのうちに父親がかえって来る。帰りは12時くらいなので、日によってはもう寝ている。朝は5時くらいには起床。朝食を作る。父親と六時半頃に一緒に食し、片付ける。朝食の十五分くらいが父親と話せる唯一の時間だが、殆ど話さない。やはり高校女子の私にとって、父親と二人だけの暮らしはなにかと疲れる。生理用品を買う時にはついてきて欲しくないし、買うことを頼むなんて論外だ。洗濯だって父親の下着なんてさわりたくもない。無論、自分の下着も触って欲しくない。それでもどちらかが洗濯をせねばならない。週末を除いて、家事はすべて私が行っている。週末は一切行わない。学校がある日は7時10分に家を出る。33分の電車に乗る。しばらくして御厨くんが乗って来る。いつもお互いに会えるように一番後ろの車両に乗る。今日も無事会えた。アイコンタクトでおはようを言う。アイコンタクトで返される。そのまま約20分。駅について学校に向かう。どうでもいい話をして学校に向かう。学校ではあまり、御厨くんとは話さない。お次は放課後になって、帰宅部の私たちは校門で待ち合わせをして、一緒に帰る。なかなか良い毎日のような気がするが白い紙に、インクのシミがある。私は今、それを御厨くんというホワイトテープで隠して偽りの白紙にしている。
11月にも後半になると、寒くなってくる。今日も一緒に帰っている私たち。ポケットに手を突っ込みながら駅へ向かう。ちなみに私の首には、御厨くんのマフラーが巻かれている。とても落ち着く、私の精神安定剤だ。こっそり、返すのを忘れた振りをしてもって帰りたいと、私は思う。彼の最寄り駅に着くと、我慢して返す。そんな日常。平和で良いのか、それとも自分は何か大罪を犯しているのか。そんなことを毎日考えている。でも、今日も御厨くんは私の隣にいて、私は彼の隣にいる。どこか後ろめたくて、どこか幸せなのだ。
「ねえ美鳥、24、空いてる?」
ほら、自然に笑顔になっている。御厨くんから見たら、さも嬉しそうだろう。実際そうなのだが。
「あいてるよ。どっか行く?」
「そうだね。せっかくのクリスマスだからね。」
「遊園地にでもいってみる?ああでも混んでるかな。」
「そうだね。そこら辺が難しいんだよね...あぁ、それか逆に、うちに来る?」
「え?いいの?ぜひぜひお願いしたいな。」
「じゃあ、そうするか。」
今や私の全てとなった御厨くん。本当に二人だけの空間だなんて。胸が高鳴る。
「あっ、ねぇねぇ。今度の日曜日にカラオケでもいこうよ。」
「あぁ、それは良いね。クリスマスだって後一ヶ月近く先だし。どこか良いところある?」
「私のいつも行くところにいこうよ。」
「じゃあそうしようかな。」
罪は2倍になった。それでも御厨くんがそばにいるのが本当に嬉しくて仕方なかった。カラオケボックスのなかで、私はどさくさに紛れて彼の腕に抱きついた。それにまみれて、彼は私をそっと抱き寄せる。私は彼の背中に手を回す。このまま時が止まれば良いのにと思った。私の心は彼にある。my heart is @ him.今の私の心を一言で説明できる言葉だ。
お読み頂きありがとうございました。本日2020,5,19の午後の投稿から、7時投稿に変更させて頂きます。というわけで、「カウントダウンとストップウォッチ」は、毎日朝7時、夜7時投稿となりますのでよろしくお願いいたします。
「僕はあの娘になって君に恋をしたい」も、近日中に更新する予定ですのでお楽しみにq(^-^q)
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