3話 コウモリ
自分でも嫌になるが、私は御厨くんとの時間を楽しんでいた。去年一年間の空白を埋めるように、もとからの土ではなく、”似たような土”で穴をふさいだ。変だと思う人も多いと思うが、物事の本質を穴を埋めることにおいていた自分にとって、御厨くんはある意味丁度いい存在だった。ここからは、”ドッペルゲンガー”との話をしようと思う。夏休みの前日、私たちはLINEを繋いだ。そしてその4,5日後だったと思う。
「おはよう。もし暇してたら、二人で泳ぎにでも行きませんか。水曜日以外ならいつでもいいので、」
誠に初めてカラオケに誘われたとき、こんな嬉しさを感じた気がする。
「木曜なら行けますよ。」
「それでは木曜の10時頃にそちらの駅にいくので待っててくださいね♪」
木曜の9時半くらい。お金、スマホ、水着、タオル、クシ、その他もろもろ持って駅へ向かう。10分も前なのに、もう御厨くんはそこにいて、私を待っていた。そういえばあいつも私と出かける時だけは遅刻をしなかったな。
「御厨くん、おはよ。」
「咲湯波さん、おはよう。」
「美鳥でいいけど?」
「じゃあそうさせてもらおうかな。」
「今日はどこにいくの?」
「梓高の2つ先に、大きなプールがあるからそこに」
「あ、なんかごめん。遠回りさせて。」
「まあまあ。それより目一杯はしゃごうじゃないか。」
「うん」
空気輸送の電車に35分揺られてついたのは静かな山の麓の駅。5分ほど歩いて目的地に着いた。本当に大きなプールだった。着替えて、まずはと二人で飛び込む。火照った体をひんやりと包む水が心地よい。時間は本当に早く過ぎて行き、あっという間にお昼になった。出店でコーラとホットドッグを買って食べる。そしてまた泳ぐ。飛び込み台、かなり怯えながら飛び込んだ私を御厨くんは腹を抱えて洗った。冗談混じりに水をかけるとやり返してきた。そんな風に私たちは延べ5時間無邪気に遊んだ。手先はふやけてしわしわだった。帰り道、すんでのところで電車に逃げられた私たちは、10分くらい次の電車を待っていた。その出来事は唐突にやって来た。
「ねえ。」
「ん?どうしたの?」
「もし、もしだよ?僕が君のこと一番好きって言ったらどうする?」
一瞬の間に脳内会議が開かれた。裏切り者。お前はコウモリのように都合のいい方へいくのか?良いじゃないか。ドッペルゲンガーなんだし。無い物ねだりだ。それぞれ相違する意見が頭のなかで飛び交う。そんななか、やっと口にできたのがこれだった。
「えっと...」
じれったそうに御厨くんが言う。
「あ、あのだから、君のことが...好きです。」
吹っ切れた。
「えっと...私もです...」
「ありがとう」
黙って電車に乗る。彼は黙って私の駅まで来てくれた。
「じゃあm」
「あのさ。」
私の声を遮って彼は言う。
「また一緒に、どこか行ってくれる?」
自然と、笑みが浮かんできた。
「もちろん。またいこうね。」
彼も笑い返してくれた。じゃあまた。そう言って私は歩き出す。またな。と、後ろから声が聞こえて振り替える。手を振る。
家に帰ると何か寂しくなってきた。私は何をして居るのだろうか。何回こう思ったことだろう。もういい、いっそ御厨くんに溺れよう。誠くん、ふ今頃どうしてるんだろう。誠くん、こんな私を許してくれますか。誠くん...いつの間にか泣いていた。御厨くんからLINEがきた。喜んでいる自分がそこにいた。
さて、本日までが第四章でしたがいかがでしたでしょうか?次回は2020,5,19朝9時に投稿します!お楽しみに~
そしてそして、星牙の初の小説が、明日2020,5,19,の早朝5時に投稿されます!そちらもどうぞご覧ください!
wacca




