一章 一話
朝、目覚まし時計のけたたましいアラームが鳴り響いている。私は、それを聞こえないフリをしながらしばらく放置したが、鳴り止まない音の暴力に観念して、もぞもぞと布団から腕だけを伸ばしてアラームのスイッチを切った。
「ふぁ〜…っふ」
のそっと上半身だけを起こした私は大きな欠伸を一つ、それに連動して両腕を上に上げ伸びをする。
時計が今指し示している時刻は午前4時半。早起きと言うには少々…いや、かなり早い時間である。
私はまだ学生だし、部活動だってやっていない。本来ならこんな早起きをする必要は全くない。
(でも、必要はなくとも理由はあるのだった)
などと心の中で1人呟く。
駄目だ。一人暮らしをする様になってから、家にいる時あきらかに口も心も独り言が増えてしまっている。
(ま、外に出ないと話し相手が居ないんだからしょうがないしょうがない)
そんな感じで脳内1人会話をしながら私は布団から抜け出し、せっせと布団を片付ける。
(それにしても、毎日布団から出るたびになんだか“やった”気になるのは何なんでしょうね?)
そんなくだらない事を考えているうちに布団を片付け終えた私は、台所へと向かいシンクの前で歯を磨き始める。
…激安アパートに洗面所など無いのだ。
口をすすいだ後、自分でシンクの奥の壁に設置した小さな鏡で磨き具合をチェックする。
(我ながら完璧な仕上がりですねぇ…!)
自我自賛。自我自賛はとても大事だ。なんたって家に褒めてくれる人が自分しかいないのだから!!
言っててちょっと悲しくなった。
悲しみを乗り越えた私はクローゼットから制服を取り出して姿見の前で着替える。
「…よしっ」
着替えの最後にリボンの位置をキメた私は、学校の指定鞄を手に取って玄関へ向かう。
時刻は5時過ぎ。登校するには早すぎる時間だが、私は学校へ行く前に寄らなければいけない場所があるのだ。
「うふふん」
その場所の事を考えるだけで自然と笑みが溢れてしまう。
今の私にとってそこは、何より“重要”で大切な場所なのだ。
「…いってきます。」
誰もいない部屋に声をかけ、私は家を出発した。
今日も私の1日が、始まったのだ。
超がつくほど遅筆ですが、これから宜しくお願いします。




