某国宮廷魔術師デュパン=ミレナリオ
カランカラン。
来訪の鈴の音を聞くと同時に。
目の下に隈を浮かべたずんぐりむっくりな髭もじゃのシックな緑色のローブを身にまとったやつれたドワーフが現れた
「酒」
「うち、珈琲屋さんだぞ」
「わかっとる、酒」
店主のシュウジは眠たげにいつもの事かと頷き、とあるウイスキーボトルを出した。
「わしの地元のか」
「50年物だな」
ドワーフは金貨3枚を出すとそのまま煽る。
「多すぎだ」
「毎回安すぎだ、たまには受けとれ」
「デュパンはかわらないな」
「お前もな、シュウジ、そのやる気でよく店主なんぞ務まるな」
「お前も鍛冶では右に出るものはいないだろうに、魔術師として大成してからに」
「なに惚れた女が魔術師だったから同じ土俵で倒したかっただけよ」
「ルーミアは元気か」
「変わらんな、相変わらず美人な嫁だ」
「…ドワーフの国の第三王子がエルフの国の第三王女を娶るとかすごいな」
「魔法で打ち負かして義父殿にはちゃんと筋は通したからの、それからは仲良しだ」
「そんで仲良しになったら?」
「第一王子が魔王の娘を嫁にしたいとして、魔王との交流がはじまった」
「…近場ならガンドルフか、まだましだろ、一応酒飲み友達だし」
「…あいつの溺愛ぶりをみるとな、友人としてはちょっとな、第一王子もよい男なんだが」
シュウジはふぁーとあくびをする。
「めんどくせ」
「お前は目の下の隈をなにも聞かずにそんなことをいうのか」
「知らんわ、もうわかいもんにまかせろよ」
「第一王子は400はいっとるし、魔王の娘は100いっとる、若くはない」
「いや種族的に10代20代くらいなんじゃないのか?」
「…ほんっとにおまいはの」
デュパンはまたごくごく飲む。
「エルフと魔王の種族は前例がないことから、エルフ王は悩んでるんだろうよ」
「大臣達も頭が痛い」
「宮廷魔術師すらも徹夜か」
「…わしとしては結ばれてほしいがな」
「めんどくせ、お互いに惚れたらどんな万難も排すだろうよ」
シュウジはあくびをする。
「されど政治はそこまで単調ではない」
「なら、そのようにするだけ」
「シュウジ、任せていいか?」
「抜かせ、そのためにきたんだろうよ」
シュウジは楽しげに笑う
「なに昔馴染みのバカ二人の件だからな」