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鳥籠      

作者: アキバ サクラ




「スクスク、」


「……。」



目の前のやたらと肌の色が白く服装は黒のタキシードといったいつの時代なのかと聞きたいが嫌という程それが似合う男は何時ものように不愉快に笑い出した。



「いつまで、そんな“鳥籠の姫君”気取りでじっとしてるの?」


「は?」



なにが鳥籠の姫君だ。私は生まれてこの方そんな被害妄想時見たことは思ったことはないんだけど。



「勝手なこと言わないで。私だって好きでここにじっとしてるわけじゃないんだから。」



そう言うと組んでいた足を解き、猫足の一人がけのソファーから立ち上がり開けっ放ししていたバルコニーからどうやってこの3階の部屋まで登ってきたのかわからない男に近づいて、



「それに、私を悲劇のヒロインみたいに言わないで、」



そこまで言うとぐっと顔を近づけた。あー、なによこのいやらしいぐらい綺麗な肌、私のと交換しなさいよ。



と、そんなことを腹の裏で思っていたら、



「だって、そうだろ?」



だなんでいつもと変わらないトーンの声音で言った。


ここまで近づいてるんだから動揺の一つぐらいしなさいよ。



「だってオマエもう19年間こんな牢獄みたいな部屋にいるんだろ?俺だったら悲劇のヒロインとしか思えないが、」


「っ、」



なにも言えなかった。


だってこの男が言っていることはなにも間違ってないから。









だか、このままだと癪だ。


より一層近づき男ネクタイを掴みこっちに引き寄せた。


だから私は少しこの表情一つ変わらない男を少し困らせることにした。



「じゃ、」


「アンタが言うこの鳥籠みたいな牢獄から今すぐに出してよ。」



ま、そんなことができたらのはなしだけど。



そういうと男は困るどころか好都合のようにシニカルに笑い出した。



「……なによ。」



反応が遅れたのはあまりコイツの表情を知らなくて初めて見る顔だったから。


若干引き目でいると、



「そういう挑戦的に言われるの待ってたんだよ。」


「はっ!?」



最後まで言い終わるか言い終わらないかの狭間いきなり私の腰周りに腕を回してきた。



「っ!?な、なによ、いきなり。」


「うるせ、挑発してきたのはオマエだろ。」


「だからって何よ!この腕は!!」


「だから五月蝿い。人が来るだろーが。それと、」



そこで一旦切るとにやりと挑発的に笑い、クッと顎を持ち上げた。



「噛み付かれたい?」


「!!!」


「ばーか、そんだけで顔赤くすんな。いいから静かにしとけ。」



そう言うとスッと戻した。

何を言い出すと思ったらとんでもないことを言い出したよ、この男。てか、今から何やる気よ!



「ねぇ、アンタ今から何やる気なのよ。」


「あ?強いて言うなら。」



そしてニヤリと悪そうに笑って







「誘拐犯?」



そう言うと反論言う暇ものくコイツは私を抱き抱えたままバルコニーを背にして外の方へ倒れていった。









鳥籠

  からの脱走劇








突然背中から落ちていくので怖くなり癪だが抱きついてしまった。


当然ながらそんなことはすぐに気づかれてしまい頭上から小さな笑いが聞こえた。


カチン、ときたので殴ってやろうかと思ったがそんなことをしたら自分の身の危険を感じやめにした。



「っわ、」


「俺って天才かも。」



おそらく地上に着いたらしく。



「立てる?」


「立て、ます、はい。」


「何そのへんな間。」



頼むからそこに突っ込まないでくれ。



降り立ったのはよく部屋から見ていた中庭の噴水と薔薇の木々。

昼はよく見るけど夜は見たことないので新鮮に感じる。



「キレー……、」


「知らなかったの?」


「知らなかった。」


「とは言っても今日で見納めだからよく見とけよ。」


「ん?」



頭が働いていなくてよく意味が分からず、後ろを向こうとしたら……



「!!!」



腰周りに再び黒いスーツの腕が伸びて、反対の手には塀にかけられたロープを握っていた。



「じゃ、こんなくだらない」


「“脱走劇”に幕を下ろしますか。」



そう聞こえ頭上を見るとシニカルに笑っていた。



なんだか、


「ん?」


「落として死んだら呪ってやる。」



今更ながらコイツに賭けてみたくなってきた。


そう言うと口角をより上げて、



「喜んで、姫君。」



と言い、それを合図のように私は男の方を向き首筋に腕を回したとたん浮き上がり、塀を越えていった。











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