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プロローグ

小説初投稿です。拙いところがあるかもしれませんが、どうぞ温かく見守ってくださると幸いです。

俺はとにかく顔がいかつい。

どれだけかと言えば、少し睨んだだけで大方の人は逃げていくぐらいいかつい。

勿論生まれ持った顔付きのせいでもあるし、小学生低学年からつけているメガネが原因でもあった。

メガネは日光に当たるとサングラス化するというなんとも特殊な機能がついていて、俺はそれが気に入っていた。

しかし小学生でサングラスっぽいものを掛けている人を見かけたら君はどうするか考えてみてほしい。

少なくとも俺だったら近付かない。殴られたりしたら怖いし。

おかげで友達には恵まれなかった。永遠にぼっちだった。中学生になり、DQN系の中二病の人々は近付いてきたものの、俺の本性は弱虫だということを知るとすぐに去っていった。

喧嘩などしたことないのに。握力二十代後半くらいなのに。リンゴとか握り潰せないよ? 俺、腕相撲本当弱いよ?

こんな顔に産んでくれた親を少々憎む時さえあった。

だって、淡い恋心を抱けど、その子は俺に振り向くどころか近寄ろうともしないんだぜ?


ここら辺で人生の愚痴はやめにしておいて、なぜこんなことを急に語り出したか説明しよう。

そう、それはまだ十分前のことだった——

****

このままじゃあ俺一生ぼっちだなと事の深刻さを嘆いた高二の夏。


夏休みの初日、少し早いのか耳を麻痺させるように鳴り響く蝉の声。目を開かなくても分かる、僅かに開いた窓から否応なく照りつける眩しい陽。全てが夏を顕著に表していた。......はずだった。


これから夏休みだ、でも友達はいないし無論彼女もいない、どうやって楽しめばいいんだよクソがという思いを胸に抱きながら目をうっすらと開けた。


黒い。ただただ黒い視界が一面に広がっている。


さっき確かに光が瞼を通して俺の目に届いたはずだった。なのになぜ真っ黒なのだろうか?


俺は布団を無意識に被ってしまったのだろうと結論付け目をぱっちりと開いた。体が横の状態になっているため腰に力を入れて起き上がる。だが上に布団があるという感覚はない。

大きく開いた瞳で辺りを見回してみる。だがしかしそこには真っ黒な世界が一面に広がるのみであり、どこにも太陽の陽や蝉のやかましい声はない。


「.....あれ......」


恐怖が全身を包み込む。二の腕が軽く粟立ち、背筋が寒くなってくる。

どういうことだ? 俺は殺されたのか?

そういや昨日コンビニの前をたむろしているヤンキーっぽい方々をちょっとチラって見ちゃったような.....。俺の容姿だとチラ見でもガンを飛ばしたように見えてしまったかもしれない。

そうなると俺の死因はヤンキーたちによる暗殺? なにそれこわい。いや待て、俺は死んだと確定したわけじゃない。

すーはーすーはーと深呼吸をし、若干荒ぶっていた呼吸を抑える。

一回座り、対策を考えてみよう。

地面が黒いからか、初めて体験するような浮遊感を感じつつゆっくりと座る。


現状分析一。俺は今家ではない謎の空間にいる。

自分自身の体はよく見ることが出来る。つまり目が見えなくなったわけではないのだろう。そして愛しの家具たちがないことからここは家でないことは確かであると言える。

現状分析二。辺りは黒い。

これは言わずもがなだろう。ただただ黒い風景が広がっている。

確かめるためにちょっと立ってみるとしよう。

地面に手をつき、どっこいしょと声を上げながらゆっくりと立つ。

なんかふらふらするがまあ大丈夫だろう。ただの立ちくらみのはずだ。


「......本っ当に何もねえな」

虚無の空間にただただ呟く。もちろん何も返事は帰ってこない。嗚呼辛し。


いきなりだとは思った。

急に視界が明るくなり、やがて俺の視界は草いっぱいで埋め尽くされていた。


****

とまあ、こんなことがあったからである。

それは俗に言う「異世界転移」らしく、別に死んだわけではないことをここに明記しておきたいと思う。

って明記ってなんだよ自分で語り出しておきながら。

にしてもあの時は本当に恐怖を覚えた。そりゃいきなり黒い空間に飛ばされたらびっくりするわな。

まあ十分前のことなのだが。

......まあ十分前のことなのだが。

くどいかもしれない。でも、俺は声高らかにこう叫びたい。


「十分で何が起きたん俺なんで異世界に飛ばされてんの俺なんかしましたかちょっと神様出てこいやおらあっもしかして昨日のヤンキー神様だったのかよいやそれ置いといて向こうにドラ●エのモンスターっぽいもんいるんですけど母親に腕相撲で勝てないのにんな戦えるわけねえだろ魔法使えんのか魔法、剣術も拳術も使えねえぞ責任者出てこおおおおい!!」


そう何もない澄み渡った空に叫んだ俺の顔は、恐らく人生で一番いかつい顔をしていた。

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