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転生もの

執事の私に出来る事は、これくらいしかございません。

作者: 柊スイレン

第3者視点としてあえての執事サイドを書きました。

我が名はオスクリダ


ティ二バス王国が誇る公爵家のパールス家に仕える執事でございます。


公爵家であるパールス家に旦那様に奥様そして兄のレフェウス様と妹のレイラ様がいらっしゃいますが本日はレイラお嬢様のお話をさせていただきましょう。


うちのお嬢様は幼少の砌より、他の子供より若干小柄と言う事以外は公爵令嬢としてどこへ出しても恥ずかしくない教養を身につけた非常に理知的な御子でございました。


もちろん旦那様と奥様の血をしっかり受け継いだ美しい見た目は当然ですが、何よりお嬢様の異端とも言える才をはじめに把握したのはこの私だと自負しております。


あれはお嬢様が7歳の時の事です。


いつもとちょっと顔つきの違ったお嬢様に呼び出しを受けた私にお嬢様は「あのねオスクリダ、わたしが将来通う事になる学園の事を知っておきたいの」とおっしゃられました。


お嬢様いわく、レフェウス様が昨年まで通ってらした学園に通うのはとても楽しみだけど同時に不安で、それにせっかく通うのだったらより完璧な学園生活になるように今から良く知っておきたい。そして時代に合わせて改善すべきところは直していきたい。とのこと。


私、お嬢様の台詞を聞きその成長に非常を感動したのを昨日の事の様に覚えております。


早速、その日のうちに旦那様に指示を仰ぎ(私から話を聞いた旦那様もお嬢様の成長と先見の明にそれはそれは感動に打ちひしがれておりました)


次の週には学園長として学園を守っていらっしゃる旦那様の弟君でありお嬢様の叔父上と面会と話し合いをいたしました。


レフェウス様の時はパールス家の系列の子が4人も同時に入学していて特別感が薄かったのと何より王家のお子様はいらっしゃらなかった事もあって特に問題に思わなかった校則が貴族の子にとっては非常に自由度が高すぎ下手したら取り返しのつかなくなる穴をたくさん見つけました。


学園長のアプロク様は第一王子の入学する7年後まで、まだ時間があるうちに学園から隙を無くす事を決定いたしました。


奇しくも7年後はパールス魔法学園創立100周年の記念すべき日でもあるのでそれに副わせる形で校則の大改革を発表する予定です。


この時は私もアプロク様もお嬢様が過ごしやすくなる為としか考えておらず、この改革がこの国の未来の繁栄に繋がる等と言う事には全く気付いておりませんでした。






この年の卒業パーティでアプロク様は寄付を募りました。


この学園の卒業生は国でも有数の貴族がほとんどで自身の子供や孫にも当然将来は通わせたいと思ってらっしゃる方ばかりです。


そんな彼らにこの国の将来を担う子供たちの為により良い学園を作る事を提示したのです。


小国の国家予算にもなりそうなほどの寄付が集まったと知ったのは寄付を募ってからほんの1か月後の事でした。


この頃には旦那様に命じられアプロク様の助手として学園改革のお手伝いをさせていただいていた私ですが集まった予算には驚きを隠せませんでした。


そして、この頃から毎日お嬢様はメイドのソナリサと共に学園にやって来ては校内を練り歩き、やれ「裏庭が殺風景で怖い」やら「見通しのいいテラスがあると良い」やら「教会の裏でなにかしたらどうかしら?」など的確な助言をしていらっしゃいました。


アプロク様はお嬢様のアドバイスを元に新しい校舎やホールの建築計画を進め、同時に学園時代からしっかりと貴族階級とは何たるべきかを当たり前に学べるように【魔法属性】と階級によって徹底してクラスや使用できる施設を時間や曜日で区別することにしたそうです。


特に階級に関しての区別ですが、これに関しては卒業生の何人かの証言を元に徹底してルールを作り上げていました。


何年かに1度程度の割合ですが実際に貴族階級のバランスの取れない者同志が学園で恋仲になってしまい、元々の婚約者との仲が拗れたり、結果として婚約破棄に至ってしまった事もあり貴族間のパワーバランスに問題が起きた事がありました。


やはり、平民の様な自由恋愛では国を支えるべき貴族の繋がりを整える事は難しいと理解した上で階級区別を実地する事を決定いたしました。


一部から批判の声が上がらなかったと言えば嘘になりますが、良い現状である今の状態が変わらない事の方が大事な事を理解してらっしゃるので最終的には上手くまとまったようです。


ちなみに、この頃のお嬢様ですが、相も変わらずソナリサを連れて変わりつつある学園を見回っておられました。


時々アプロク様に何かしらを伝えてらっしゃる様子を見かけましたが第1皇子との婚約もほぼ内定のことと聞きましたので、今後は王宮にて王妃教育を受ける日が増えるため学園内で見かける日は減っていくでしょう。






学園の校則改革も3年程が経ち変えられた校則に教師や生徒が戸惑いつつも努力する昨今、公には王妃候補筆頭としか公表されていないお嬢様ですが最近また学園に姿を現すことが増えてらっしゃいます。


しかも、最近はソナリサだけではなく婚約者の第一王子もご一緒です。


10歳のお嬢様と11歳の王子は学園中を子猫の様に駆けずり回り(時にメイドのソナリサを撒いてしまうのでその際には厳重注意をしておきました)最近、魔法省が発表した録音魔石を人通りのつかない所に設置するべきだとアプロク様に訴えてらっしゃいました。


ちなみにアプロク様が魔法省に問い合わせたところ既に国王から連絡を受けているので出来次第学園に届けに参ります、との事でした。


その後、王子の入学した年に映像も記憶出来る魔石が出来、お嬢様の一言でそれも設置されるのですがこの魔石のおかげで少なからず問題が起こる前に鎮圧できた自体があった事をここに報告させていただきます。






そしていよいよ創立100周年の年になり学園にアンジェロ・フラマ・ソル王子が入学する日がやってまいりました。


国王の命により王子の入学と同時に暗の者たちが学園中に身を潜める事が決定いたしました。


彼らは云わば王子の盾であると同時にお嬢様のボディガードも務めるそうです。


そして同時に諜報活動も務めるまさしく暗の者たち。


建て直した校舎はもちろんですが、やはり大きく改変した校則は王子達にとってとても過ごしやすい学園となられました。


特に王子は各属性の練習場を気に入ったらしく時間があると火の魔法の鍛錬をしていらっしゃると報告を受けております。


先日、アプロク様へ旦那様からの書類をお届けする際に久しぶりに学園に顔を出した所、王子に話しかけられお嬢様への伝言を承りました。


ほんの数年前は子猫同士がじゃれているだけの様なお二人の関係にも緩やかな変化が感じられてきたようで喜ばしい事です。


そしてこの日アプロク様の元に地方で希少な光属性持ちの平民が見つかったとの連絡が届けられました。


どうやら十数年ぶりに光属性の平民がこの学園にやって来る事になりそうだとアプロク様は興味深そうにしていらっしゃいました。






いよいよお嬢様が学園に入学なさいました。


入学の日に御者から危なっかしい様子の方がいらっしゃったとの報告は受けましたがお嬢様とは学年が違ったようでその後は関わりも無く過ごしていらっしゃるようです。


ほぼ毎日学園内の教会に通い光属性者としてのトレーニングを欠かさずしているようですし、週に1度は王子と共にテラスや屋上ですごし良い関係を築いていらっしゃるそうで何よりです。






ある日の事です。


定期的に届けられる学園の報告書とは別に緊急報告書が旦那様のもとに届けられました。


内容は王子とお嬢様達が放課後ティーパーティをしている所に紛れ込もうとした平民がいたとの事でした。


帰宅したお嬢様とソナリサに旦那様が事情を聴いたところお嬢様は直接話は交わさなかったそうです。


ソナリサが読唇術で読み取った彼女の言動を聞きましたが意味が解りません。


王子の従者のジュリウス様と王国騎士団騎士長のご子息であられるヒース様とその婚約者のモデナ様の説得により王子とお嬢様には何事もなかったとの事なので旦那様も学園側への厳重注意を通達する程度で済ませておりました。






お嬢様にとって初めての共同魔術実習の日がやってまいりました。


ここの所ずいぶんと夜遅くまで自習をしていらしてたので特に心配はしておりませんでしたが結果は1年生として十分素晴らしいA+の成績をいただいて非常に喜んでいらっしゃいました。


この実習でお嬢様は3年生の公爵令嬢のビクトリア・ルス様と親しくなる機会があったそうで今日は朝からご機嫌で彼女に招待されたお茶会へ行くためのドレスを選んでいらっしゃいます。






卒業式まであと数日となったある日アプロク様から相談したいことがあるとお呼びがかかったので久しぶりに学園へ伺いました。


話を聞き終えた感想としましては、どうやらある生徒を退学にすべきか否かを聞きたかったようです。


私は迷わず「話をまとめる限り彼女の為にも退学にしてあげるべきです」と答えました。


退学処分になる方は平民出身の光属性の持ち主だそうです。


お嬢様もそうですが所謂【光属性】の方達には優秀な者ばかりといった特徴があります。


今回、こちらの学園のミスはその特徴を過信し過ぎて、平民であるが故に気を付けるべき学園での過ごし方などのケアを怠ってしまった事です。


カリキュラムがはっきりしているこの学園では属性別の専門学は同学年の同属性と行動を共にする事が必須ですが、運の悪かったことにその方の同学年である光属性の2人は婚約者同志でした。


その2人は非常に仲睦まじいが故、唯でさえ浮きがちな転校生であり平民の彼女を気配る事に興味を向けられず、結果として孤独にさせてしまったと彼女が登校拒否をしてしまった今は反省しているようです。


もちろん、それだけでは退学にはなりませんがこの学園は貴族に標準を合わせて作り直された校則がすべての軸にあり、平民の彼女は何度もワザとではないにしろ校則を破ってしまったそうで彼女の担当教員でもある光属性のエリオット・ライト先生も学園長であるアプロク様もこのような残念な結果になってしまったお詫びとして彼女の地元近くの魔法学校への転入手続きをしてあげるという結論に至っておりました。


私としては特別な感情はございませんが少し不幸だった彼女の未来が良くなることを祈っております。






2年後


お嬢様の卒業パーティが先程終了いたしました。


昨年卒業なさったアンジェロ様がパーティの最後にレイラお嬢様の前に膝をつき、お嬢様の手を取り改めてプロポーズをなされました。


学園のダンスホールは沢山の歓声と拍手に包まれ、何より久しぶりに見た心から幸せそうなお嬢様の笑顔が今後のお二人の未来を表しているようで。



我が名はオスクリダ


ティ二バス王国が誇る公爵家のパールス家に仕える執事でございます。


この国の未来を担う事となるお二人の始まりを見届けさせていただき、とても幸福でございました。



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パールス家の執事オスクリダ視点でした。


前世を思いだすまでのレイラをずっと見守って来た彼は小さなお嬢様が貴族が貴族として生きる苦しさを少しでも軽減してあげられる事が出来ればと少なからず考えていました。

なので突然レイラが言いだした学園改革を進めてくれました。

平民の事を一切思わない校則を推し進めたのも全ては貴族であるレイラの為と言えるでしょう。


彼にとってレイラは唯一の大事な可愛いお嬢様です。

そして彼は自分の仕事はそのお嬢様が生き辛い貴族社会で生きていく手助けをする事だと思っていました。

卒業式後のパーティでプロポーズされたレイラの笑顔を見た瞬間、彼はとても嬉しかったと同時にとても寂しかったのだと思います。


非常に優秀である彼は亡くなるその日までパールス家の人間の事を第一に行動する執事でした。



誤字脱字など、気になる部分がありましたらすぐに直すので教えて下さるとありがたいです。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 誤字報告? そして同時に諜報活動も務めるまさしく『暗』の者たち。 国王の命により王子の入学と同時に『暗』の者たちが学園中に身を潜める事が決定いたしました。 →陰者という部隊がある…
[一言] 3作品読みました。 結局ヒロイン以外に平民がいるのかいないのかよくわかりませんでしたが、もしいないのであればそのまま貴族しか入れない学園にした方がいいでしょうね。 テンプレ的に考えれば、…
[一言] 更新ありがとうございました。 学園改革の内幕、楽しかったです。 と、いいながらなんですが、私だったら入学したくない。とか思ってしまった。権利や義務を重視する貴族ならともかく、ある程度自由が…
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