表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あなたの居る風景。  作者: miu
3/3

最後のアイスティー




わたしは オレンジジュースを頼む


きみはいつもの アイスティー。









子どもみたいだときみは笑うくせに


運ばれてきたオレンジジュースを


いつも 一口だけほしいとねだる





正方形に整えられたグラスの中の氷が


ちいさく、ちいさくなるまで


飲み干すことも忘れて


きみを見つめた





左目の下に並ぶ


小さなほくろが好き


その甘い声を響かせる


優しい形をしたくちびるが好き





きみと視線が交わりそうになると


わたしは決まって


オレンジジュースを少しだけ口に含んで


うつむいて


無意味にストローをくるくるまわしたりする





きみは、気付かぬふりをして


冷たいアイスティーに手を伸ばす









それだけで、良かった



わたしの幸せというものは


たぶんひとつのグラスに


簡単に入りきってしまうくらいちっぽけで



シロップを落としたアイスティーの


不安定な歪みのように


儚くて うつくしかった








わたしはアイスティーを頼んだ。



オレンジジュースをねだるきみはもういない


初めて飲んだきみのアイスティーは


きみが笑ったときみたいに少しだけ甘くて



後味はいつまでも、苦かった。





fin.


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ