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遥か高みへ至る者  作者: 英明孔平
第二章
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第五十三話 決めたこと

 一晩考えた。

 それでも俺には、決めきることはできなかった。

 

 所詮、流されないというだけで、自分で決めきることにためらいが生じるのだ。


 自らを笑いたくなる。


 だが決めきってはいないが、少なくとも悩みの半分は決めることが出来た。

 それを伝えに行く。


 俺はベッドから起き上がり、隣の部屋へと続く扉をノックする。

 返事はない。だがいるはずだ。

 エルーシャと話したのか、外で彼女と一言二言話していたのが聞こえた。その後、微かに隣から物音が聞こえた。


「アルド、リーゼ。いるよな?」


 そう扉に問い掛けるとゆっくりと扉が開いた。

 

「マサヤ殿……」


 アルドだ。


「リーゼは?」

「先ほどまで起きていて、流石に疲れには勝てなかったのか眠っています」


 まあ、そうだろうな。

 まだ十二歳なんだ。


「ん……マ、マサヤさんっ」

「ごめん、起しちゃったか」

「い……いえ」

「あー、そのなんだ。二人に言いたいことがあってな」


 俺の言葉に二人の体が震える。


「そ、その前に! 大変申し訳ありませんでした!」

「も、申し訳ありません……」


 アルドの隣にリーゼが駆けつけ、二人揃って頭を下げる。


「マサヤ殿のご決定に背くばかりか、怒鳴りあげてしまうなど……」

「私も……護衛の任を放棄……しちゃって……」


 やっぱりか。

 この二人のことだから、まずこのことについて話しておかないと話を進まないだろう。

 

「今回の件! 責任は私にあります! お咎めはすべて自分に!」

「兄さん、それはやめるって……兄さんだけじゃなくて……私に責任があります」

「リーゼ!」

「二人とも落ち着いてくれ」


 二人が静かになる。

 俺の言葉を待っている様子だ。


「今回の件だけど、二人にはお咎めなし。エルーシャの許可も貰ってるからな?」

「ですがっ」


 喋ろうとするアルドを手で制す。


「当たり前だろ? 二人がいなくなったら、誰が俺の護衛をやるんだ。俺は嫌だぞ? 突然護衛が変わったりして、生活に支障がでるのは」


 手で制したままだからか、二人は言葉を発しない。

 悪いな。こうでもしないと聞いてくれなさそうだし。


「それと、討伐についてだけど、来たいなら来てもいい」


 二人は、驚愕と喜びが混じった表情を浮かべる。


「もちろん条件がある。あくまで最優先は自分だ。俺を庇って前に出るなんてのは無し。これが守れないなら、連れてはいけない」


 制していた手を下す。


「護衛が自分の命を最優先にするなんて、聞いたことがありません!」

「駄目……です。そんなこと」

「だったら許可できない」


 自分で言ってて無茶苦茶だな。

 心の中で苦笑いが浮かぶ。


「何で……マサヤさんは、そんなに私たちを行かせたくないんですか」


 俺は言葉が詰まる。


「マサヤ殿が、母さんと知り合いだということは聞きました。それが理由なのですか? 自分たちは今、母さんの子供として立っているのではなく、アルドとリーゼロッテ、自分たちでここにいるです」


 ああ、わかった。

 俺は、正直逃げ口をルッカさんに求めていたんだと思う。

 二人の危険に晒したくない、ルッカさんのためにもそれに答えたいのは本当だ。だけどそれだけじゃない。俺が二人をどう思っている。


「アルド、確かにルッカさんに言われたから、ということもある」

「……っ!」

「だけどな、それだけじゃないんだ。勝手だと思うけど、俺は二人のことを弟と妹のように見てる」


 二人が目を丸くする。

 そりゃそうだ。こんなことを言われれば当然だろう。


「迷惑だろ? だけど、そんな二人を危険な場所に連れて行きたくない。それが本音なんだ」

 

 心臓がバクバク言っている。力を抜くと足の震えが止まらなくなりそうだ。

 だけど言えた。二人を納得させると言うのに、俺が本音を言わなければ二人は納得しないだろう。


「まあ、そんなわけだ。二人からしたら、ゆっくりと考える時間も欲しいだろうから、しばらく考えてくれ」


 二人は驚きで声が出ないような様子だった。

 できれば、拒否の方向じゃないといいんだけどな。


 固まっている二人をもう一度見てから振り返り、扉を閉めた。





 それからだ。

 二人は俺に同行すると伝えてきた。

 俺が言った条件を飲むとのことだったので、俺はもう反対しない。


 弟妹の件については何も言われなかった。俺も聞かなかった。


 二人はいつも通りに戻っていた。それには安心できた。


 中庭で訓練すると、お姫様との気まずい空気が流れるが、エルーシャのしごきを受けるとすぐに気にする余裕がなくなった。

 

 そして、お姫様との空気を解消することもできず、討伐軍が出発する日となった。


すいません、しばらく不定期更新になるかと思います

大変申し訳ないです

 

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