幕間
自分は今、物陰に隠れている。
物陰からそっと頭を出すと、自分と同じくらいの少年と、大きなバットを持った男の人が向かい合っている。
「おい! あいつから奪ったものを返せよ!」
男の人に怒鳴り込んでいるのは、まだ小学校低学年頃の少年だ。
少年は自分より明らかに大きい男を見上げながら叫ぶ。
「はあ? あいつって誰だよ」
「とぼけんな!」
男は少年のをイラついた目で睨みながら、下げている視線をさらに下げる。
「はっ震えてんじゃねぇか。無理すんなよ」
「ふっ震えてなんかねぇ!」
少年は震えている脚を叩くが、震えは止まるどころかさらに酷くなる。
「お前があいつから盗ったものはな、あいつの大事なものなんだ!だから俺が取り戻すんだよ!」
男の人は何が何だかわからない、といった顔をしていたが、やがて思いついたように笑う。
「なるほど、あのガキの友達か。それだったらここにあるぜ」
男の人は、ポッケから腕時計を取り出して言った。
物陰に隠れている少年は、男の人が持っている腕時計に目が行く。
「やっぱり持っているじゃんか!!」
腕時計に反応しているのは、物陰にいる少年だけではなく、向かい合っている少年も同じのようだ。
男の人は、ニヤリと笑うと、腕時計を握り占めると地面にたたき落とす。
二人の少年は怒り、驚愕の表情を、それぞれ表す。
「てめぇ!!」
向かい合っている少年は怒りを露わにし、自分よりも遥かに大きい相手に飛びかかっていった。