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遥か高みへ至る者  作者: 英明孔平
第二章
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第四十三話 相談と裏

「アルドと打ち解けたい、ということか?」


 朝の訓練が終わり、昼休憩の時間。

 俺はアルドを除いた女性陣三人に、アルドとどうにか打ち解ける方法はないかと相談することにした。

 男同士の関係について、女性陣に聞くのはどうかと思うが、生憎この異世界で、気軽に話ができる男性陣はいなかった。


 エルーシャが顎に手を当てて考える。

 

 今この場には、俺とエルーシャ、お姫様にリーゼがいる。

 アルドについての話なので、アルド本人には昼食の用意を頼んでいる。


「私には、マサヤ様と彼は、良好な関係を築けていると思いますが」

「……兄さんは私にもマサヤさんの話をよくします」


 お姫様は首を傾げ、リーゼはうんざりしているかのような表情を浮かべる。


「だ、そうだが」


 エルーシャは二人の言葉を聞いて、俺に視線を向ける。


「そうじゃなくて、なんというか……リーゼみたいに気軽に接してくれるといいんだけど」

「私の……ように……ですか?」


 リーゼは最初こそ人見知りの気があったが、今ではすっかり懐いてくれていると思う。

 夜、物語を聞くときは、膝の上に座ったりと、護衛や世話役といった立場では考えられないことだろう。

 しかし、きちんと仕事時にはそういう行動は控えている。つまりオンオフの調整だ。


「身近で言えば、お姫様とエルーシャと俺とエルーシャみたいかな。二人はきっちりとした主従だけど、公じゃないところでまで、過剰に固くはならないよね」


 俺の言葉に、お姫様とエルーシャが頷く。

 二人は主従である前に、長年の友人でもあるということは、俺が騎士になってしばらくしてから知った。


 俺とエルーシャは先日の通りだ。訓練時は上官と部下だが、普段は友人(以前、面と向かって恥ずかしげもなく言われた)だ。


「できればそういう感じになりたいんだけど……」


 難しいことを言っているのはわかっている。

 この世界は貴族社会だ。

 ルッカさんが貴族などではないことは既に聞いている。その子供である二人も、実力はあってもそれほど階級は高くない。

 俺も二か月前までは平民という扱いだったが、今では仮ではあるが王女の騎士だ。一応、貴族の扱いにはなるのだろう。


 貴族制度による壁など想像もつかない。

 それを気にするなというのだから無茶な話だ。


 しかし、異世界で気軽に話せる人間? は数少ない。アルドともそういう関係になりたい。

 

 ちなみに弟妹みたいなものだ、というのは気恥ずかしくてルッカさん以外には言っていない。友達だと思ってはいても、改まって友達だよな? と確認するよりハードだ。


「それならば、一緒に体を動かして汗を流せばすぐに打ち解けられるはずだ」


 悪くない案なのだがエルーシャが言うと、ただの脳筋発言に聞こえてくるから不思議だ。

 

「一緒にお出かけすると言うのはどうですか?」


 確かにお姫様とは、城下街の散策でけっこう打ち解けられたと思う。


「兄さんは……尊敬する人にはああいう性格ですから」


 リーゼは難しそうな表情をする。

 尊敬されるような人間でもないんだがな。


 一先ず、エルーシャの案から試してみよう。

 




「閣下、もうじきあの方が到着する予定ですが」


 フェルナンド公爵の執務室。

 本来ならば、僕程度が入ることなど許されない場所だ。

 しかし、この部屋の主は僕がいることを気にしない。


「ベルナルドめ、厄介な奴を寄越しおって」


 部屋の主である閣下は、難しい顔を顰めながら、高価な羊皮紙を使った書簡とにらめっこをしている。


「マサヤ君にはまだ伝えていませんが、どういたしますか?」

「可能ならばあやつをマサヤには会わせたくはないのだが、二通目の内容のためにそうもいかなくなった」


 にらめっこしていた書簡を机に置き、溜息をつく。


「これ以上、ベルナンドのやつを誤魔化すのは得策ではないな。全く、わざわざギリギリに二通目を送ってきおって」

「それでは後程、マサヤ君に伝えておきます」

「うむ、カーリーの子供二人は優秀だと聞くし、あいつもエルーシャの特訓で、少しはまともになっているはずだ。この要求程度なら平気だろう。もしもの時は頼むぞ」

「はっ」


 僕は、胸元に手を当てて礼をする。

 ついでに、壁際に控えているメイドの彼女から、頷く気配がした。


 いったい何時からいたんだろうか。

 閣下に仕えて十年、彼女の神出鬼没さには、今だに慣れない。


 さて、マサヤ君。今回は大丈夫だとは思うけど、君はどう動くのか。

 

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