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新聞部(仮)【リレー小説】  作者: 「小説家になろう」LINEグループ
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昨日のあれは?

この回の執筆者は立待月です。

 駅で待ち合わせか。思えばこうして誰かと待ち合わせするのも久しぶりな気がする。

 天を仰ぐと雲一つない青空が広がっていた。デートには打ってつけの天候ではあるが、気温が上がり過ぎないことを祈る。優子の体調が悪くなったりしたら大変だからな。

 時刻はもうすぐ八時二十分になろうとしていた。待ち合わせ場所である駅に近づいてくると俺は奇稲田くしなだの姿を探す。と言ってもさほど広くない駅だ。相手もわかりやすい場所に居ると思うし、直ぐに見つかるだろう。

 案の定、奇稲田の姿は直ぐに見つかった。ただその理由は俺の予想とは違う方向ではあったが。

 駅の前の道に彼女は居た。とても邪魔になりそうな場所だ。行き交う人々は奇稲田に怪訝な眼差しを向け去っていく。

 その当人はというと左を見たり右を見たりと挙動不審な動きをしていた。近くに交番があればすぐに職務質問を受けかねない様子ではあったが、幸い交番は少し離れた場所にあり面倒なことにはならずに済みそうだ。

 あと数歩で駅に着くというのに奇稲田は俺の存在に気づく様子もない。このままではいつ警察を呼ばれるか分かったものではないためすぐ合流しよう。


「奇稲田、ごめん待たせたかな?」


 比較的自然な感じで話しかけたのだが。


「ひゃっ! あ、りょ、良太君!?」


 なぜだかとても驚かれた。俺ってそんな影薄いだろうか? 少し悲しい。

 目を丸くしていた奇稲田は取り繕うようにぎこちない笑顔を向ける。


「い、いいえ。い、今来たとこです」


 テンプレ的な返しに対しわざわざ突っ込む必要もないか。


「そうなんだ。と言ってもこれから俺達は優子と鸞君を待たなくちゃいけないんだけど」


「そ、そうですね。ではあそこのカフェで待ちませんか?」


 彼女の指差す方向、構内の一角にはこの小さな駅に似つかわしくないオシャレなカフェが店を構えている。距離的にも見つかる心配はなさそうだ。


「うん。そうしよっか」


 俺と奇稲田は並んで店へ入る。九時前から開いている店が少ないためか客の入りは半分以上が埋まっていた。


「いらっしゃいませ!」


 白い歯を見せ爽やかな挨拶で出迎える若いウェイター。彼に連れられ窓際の席に腰を下ろす。顔の整った奇稲田と向かい合わせになるのは少々照れくさいが、優子のデートを見届けるのが今日のミッションである以上あまり意識を向けるわけにもいかない。

 お互いドリンクを一杯ずつ頼むと、ウェイターは一つ頭を下げ去っていく。

 店内を見回すと外観と同様、落ち着いた雰囲気で男性客より女性客のほうが多い印象を受けた。初めて入った店に多少の緊張を覚えながらも奇稲田との話題を探す。

 しばらくすると先ほどのウェイターがドリンクを運んできた。俺は緊張を紛らわすようにカフェオレを口にする。甘い味わいが口内を満たし落ち着きを与えてくれた。


「うん、うまいな。そういや奇稲田、昨日確か何か言ってたよな? あれってどういう意味だったんだ?」


 “琴美です!”という発言。俺はあれが一体どういうことなのか未だに理解できないでいた。


「それは……い、いえ何でもありません気にしないでください」


 一瞬陰りが差す。だが気づけばすぐにいつも通りの奇稲田に戻っていた。


「そ、そうか」


「押し切るにはまだ早いかな」


 小声で何か言っていた気がするが、奇稲田は何もなかったかのようにちゅうちゅうとストローをすすっている。


「どうかしましたか?」


 笑顔で尋ねる彼女からは一切おかしな点を感じられない。


「あ、いや何でもない」


 のどの渇きを潤すように俺はカフェオレを口に入れた。

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