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新聞部(仮)【リレー小説】  作者: 「小説家になろう」LINEグループ
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Rの苦悩/Kの提案

この回の執筆者は夜月四季さんです。

 教室に着くと、俺は椅子に座ってそっとため息を吐いた。

 優子ので、でで……で、デートを、見守るためにその方法を探ろうとしたが、一番の伝手はまったく役に立たなかった。まったく、誰がシスコンだと言うんだ。妹の心配くらい、肉親なのだから当然だろうに。

 しかし困ったぞ。他にこういうことに詳しそうなヤツがいない。

 いや、知ってるには知ってるだろうがロリぃ員長ほど詳しいヤツはいない。彼女は何をどうやってるのか知らないが俺の拍子1つでどこからともなく現れる。お前、どこで見てるの? とか、聞こえてるの? とかいろいろ突っ込みたいところはある。だが今はそんなことより、その方法を伝授してほしかったのだ。

 察知されずに隠れる技術! 遠くからでも聞こえるその聴力!

 どうすればそれが得られるのか……。俺には皆目見当もつかない。


「さて、どうしたものか」

 ロリぃ員長が頼れない以上、他の誰かを頼るしか手はない。自分の現在の力のみでなんとかなるとか思ってない。そこまで思い上がれるほど、俺は自信満々ではない。――おおよそ3年くらい前ならわからんがな。


「いやーなこと思い出してしまった……」

 いや、さすがに当時書いた俺の黒歴史は完全に削除したから大丈夫だが。色々なとこを見て回ったが魚拓なぞ取られていなかったし、完全消滅したと言ってもいいだろう。まあ、あんなもの誰が興味持つんだという話だが。

 そんなものを当時はノリノリで書いていたことを思い出すと……。


「――鬱だ、死のう」

 なんだか妙に気分が落ち込んでしまった。


「サイバー君、どうかしたんですかー?」

「奇稲田。いや、ちょっと嫌なこと思い出しちゃってなあ」

「どんなことですかー?」

「いや、それは……」


 不思議ちゃん相手でも答えられません。というか、黒歴史を把握してるのなんざ充也だけで十分だ。クラスメイトたちに知られたら恥ずかしさとその他もろもろで普通に死ねる。


「あー、うん。いわゆる黒歴史ってやつだから気にしないでくれ……」

「そうですかー。ところでですねー、優子ちゃん、今度デートするそうですね」


 思わず椅子から滑り落ちた。

 なぜ知ってるんだ……!?


「きっと妹思いのサイバー君は居ても立ってもいられないでしょうねー」

「ま、まあそれはな……」


 まったくもって否定できない。心配で心配でその日は何もできないだろうくらいには気になって気になって仕方ない。

 というか、今からほとんど何も手に着かなくなってる時点で察してほしい。


「そこでですね。よろしければ私が手伝いましょうか?」

「え゛っ」


 予想外の提案に思わず変な声が口から飛び出た。

 いやいやいや、そんなまさか。奇稲田からそんな言葉が飛び出るとはまったく全然想像もしていなかった俺はせっかく椅子に座り直したのにまた落ちそうになっていた。

 え? え? っていうか、奇稲田ってそんなことできるの? マジで?


「個人的に気になるんです。これでも女の子なんですからねーっ」

「いや、そりゃ。奇稲田は十分に女の子だけど……」


 さらさらの黒髪とか、一般的にはかわいいと言われるその顔だとか。

 あと、接近されたときに感じる独特のいい匂いとか、柔らかさも女性らしくて――って、何考えてるんだ、俺は!


「いやいやいや、でもそんなまさか。手伝うって言ってもそういうストーカー紛いなことじゃないだろ。たぶん普通に話を聞くとかそういう――」

「是非とも一部始終全部見ておきたいところですね」

「って完全にその気まんまんだなおい!?」

「え? 当然じゃないですかー。話を聞くだけなんて、そんなんじゃ満足できませんよー。……それとも、サイバー君は私と二人きりは嫌ですか?」

「いや全然そんなことはない! むしろ」


 嬉しいくらいだ! と言おうとしてはっとする。

 興奮のあまり気がついたら奇稲田の肩を掴んでいた。


「わ、悪い!」

「いえ、気にしないでください。……サイバー君って思った以上に力が強いんですね」

「お、おう。わかった」


 とりあえず手を離して、少し距離をとる。

 ……奇稲田って思った以上に華奢なんだな。しかも結構柔らかくて――。

 そこまで思って、ぶんぶんと首を振る。だから、そんなこと考えてる暇はないだろ、俺。今はどうするかだ。

 正直な話、奇稲田の提案はありがたい。俺一人だとできないし。ただ奇稲田と二人きりというのは俺の精神衛生上あまりよろしくないというかなんというか。いや、別に嫌なわけでは断じてない。問題は俺が舞い上がってしまって本命を忘れてしまいそうなことだけだ。


「んん! と、とりあえず俺はいてくれたら嬉しいけどさ。奇稲田はいいのか? こんなことに貴重な休日を費やしちゃうなんて」

「私にとっては、休日を潰すだけの価値がありますから問題ないですよ? サイバー君とお出かけもできますからねー」

「そ、そうか」


 思わず照れるようなことを笑顔で言われて困惑してしまう。

 まずいな。ちょっと顔が熱い。


「そ、それじゃあ頼む、奇稲田」

「はいっ」

「それで、時間と場所だけど。どうする?」


 変な時間に出ても優子に訝しがられるので、よく考えなくてはいけない。

 あと場所もだ。変なところに集まって誰かに見つかったり、優子自身に感づかれるのは回避したい。


 優子ちゃんがでるよりちょっと早めに家を出て、駅前で集合。あたりを回って、優子ちゃんが出かける時間まで待ちます。おそらくですけれど集合場所は駅前になるでしょうし、優子ちゃんが相手と合流するタイミングを狙って駅の近くまで移動しましょう」

「駅前か……まあ、ここら辺だとあそこくらいしか待ち合わせにいい場所もないもんな」

 しかし、なんか妙に詳しいな……?


「優子ちゃんが家を出る時間はサイバー君がさりげなく調べておいてください。それはサイバー君にしかできませんし」

「あ、ああ。それは任せておいてほしい。聞いたら連絡するよ」

「お願いします。――では、日曜日。約束ですよ?」


 いたずらっぽく微笑んだ奇稲田にドキッとしながら頷く。

 こうして、優子のデートを見守(かんしす)るための準備が整った。決戦は日曜日――いったいこれがどう転がるのか、今の俺には想像もできなかった。

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