表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新聞部(仮)【リレー小説】  作者: 「小説家になろう」LINEグループ
20/45

ロリぃ員長は突然に

この回の執筆者はトーカさんです。

「藍住良太さん、ですよね?」


「ん?」


菅原と別れ、図書室を後にした俺は、目的もなくブラブラと歩いていた。

薦められて、つい借りてしまった小説の、さわりの部分をペラペラと流していた俺に、彼女はそう声をかけた。


「たしかに俺は藍住だけど、そういうお前は誰だ?」


「むむ、私を知らないとは……」


振り替えると、そこに居たのはかなり小柄な女の子。

菅原も大概小柄な方だが、おそらくこっちの方が更に低いのではないだろうか。


ちなみに、俺はこんな奴なんか知らない。

俺に話しかけてくれるような素敵な女の子を忘れるわけがないからな。


「すまん、本当にわからない。人違い……では無いよな、名前は合ってるんだし」


「まあ見た目で分からないのも無理ありませんね。顔を会わせたことは無いですから」


「は? なら、知らないのが普通だろ?」


「いえいえ……なら、こう言えば分かるでしょう! 私は、委員長です!」


脳裏に浮かぶのは、怪力を使いこなし俺に迫る朝倉の姿。


目の前の少女と、俺の知る委員長を比べてみる。

髪はこの少女の方が長く、色も茶髪に近い。

顔も小柄な体躯に合った可愛らしいものであり、パッチリとした目が印象的だ。

肌はきめ細かくモチモチとしていて、さわり心地が良さそうだ。いや、エロい意味じゃなくて。

胸は……妹を思い出した。 後は察してくれ。


つまり、俺の知る委員長では無いことは確かだ。

どちらかと言うと、委員長というかロリである。正統派ロリ。


「どうです? さすがに分かったでしょう!」


「いや、俺の知ってる委員長は、お前みたいなちっこいのじゃ無いんだが……あ、委員長の知り合いか?」


「ちっこ……違います! 私が委員長本人です!」


ふむ、どうやら委員長の知り合いでも無いらしい。

分かっているとは思うが、俺の言う委員長は、このちっこいのことじゃ無くて、怪力メガネが素敵な我らが委員長の方な。


どうやら、このロリも委員長らしい。

いくら親友が厨二病で、知り合いが変人で、先生が異常で、俺がイケメンだとしても、あの残念メガネ委員長(褒め言葉)さんが急にロリ化するなんていうことが現実で起こるとは考えられない。

ということは、このロリは他のクラスの委員長なのだろう。


……二人も委員長が居ると、実にややこしい。

とりあえず、このロリの適当な呼び方を決めるか。


「で、委員長(仮)さんは、俺に何の用だ?」


「(仮)って何ですか! 私は、れっきとした委員長なんですよ! 変な呼び方は止めてください!」


「いやだって、委員長が二人も居ると面倒だし……」


「なら、そのもう一人の方を(仮)にすれば良いじゃないですか!」


「俺の中での委員長はアイツだけだ!」


「そんなカッコつけるところじゃ無いですよ!?」


火照った顔で、肩を上下させる委員長(仮)。

よく通る声なので、大声で叫ばれると響くのだが、幸い、放課後なので人が集まることはなかった。


「まさかですけど、あなたの言う委員長って、朝倉さんのことじゃないですよね?」


「なんだ、知ってるのか。 そりゃ委員長って言えばアイツだろ。他のクラスの奴にも委員長って呼ばれてるくらいだからな」


「にゃ!? やっぱり朝倉さんのことですか! うぅ……なんでみなさん、私じゃなくて朝倉さんを委員長って呼ぶんですか。朝倉さんのクラスだけじゃ飽きたらず、私のクラスでさえ朝倉さんを委員長と呼んで……私の方が委員会活動だって頑張ってるし、仕事も率先してやって、自主清掃活動だって毎回参加してますし、それに……」


怒っていたかと思えば、急に落ち込み始める。ずいぶんと忙しいロリだ。


とりあえず、理由は分からないが委員長(仮)と呼ばれるのは気に入らないらしい。

落ち込んでる女の子に優しくできないほど、俺はひねくれていない。


「で、ロリぃ員長」


「ロリぃ員長って何ですか!?」


「いや、委員長(仮)は嫌だって言うからさ」


「だからって、そんな面白可笑しい呼び方じゃなくても良いじゃないですか! なんとなく誰を指してるのかわかる分、尚更タチが悪いですよ!」


渾身のネーミングをダメ出しされ、少し頭に来る。

そもそも、向こうが「委員長だ」なんて言い出すからややこしくなったのに、俺が責められるなんて納得できない。

俺の知る委員長が、変人メガネ(ベタ褒め)の委員長なのだから、このロリもそれに合わせるくらいはやって然るべきなんじゃないか。

そもそも、用があるのに名前すら名乗ら……


「……名前」


「はい?」


「お前が名前を言えば、解決だったんじゃ……」


「……あ」


どうやら、俺達の過ごした数分間は無駄なものだったらしい。






「改めまして、如月希沙良きさらぎ きさらです」


「どうも、藍住良太です」


人間、ゼロから始めることも大事らしい。

円滑な出会いから再スタートを切り、実に平和的な交渉を始める。


「というか、本当に何の用なんだよ」


「えっと、早い話が勧誘ですね」


「随分遠回りな早い話だな……勧誘?」


「はい、勧誘です!」


勧誘、というと部活だろう。

それはそれとして、なぜ俺なのか。


数秒ほど考え、思い当たる節を見つけた。


「ああ、俺が部活に入ってないから勧誘しに来たのか」


「そうです! 是非、我が美術部に! 良太さんの総受け必至の肉体は我が美術部の新たな可能性を……」


「いや、もう俺部活入ったし」


「にゃ!?」


驚きに、身体が硬直するロリぃ員長。

いやいやショック受けすぎだろ、どれだけ期待してたんだよ。

むしろ、身体目当てで声をかけられた俺の方がショックだろうが。


依然、固まったままなので、とりあえず呼び掛てみる……反応無し。

目の前で手を振る……反応無し。

指でつつく……反応無し。モチ肌が気持ちいい。

面倒なので一発、はたいてみた。

パシン、と景気の良い音が廊下に木霊する。


「にゃ!? 叩いた!? 今、乙女の頭、叩きましたね!?」


「いや、反応無かったもので、つい……」


「だからって、普通叩きますか!?」


「確かに、今のは悪かった。すまん、ロリぃ……如月」


「今、ロリぃ員長って言いかけました!?」


おっと、つい心の声が漏れてしまった。

まあ、ロリぃ員長もやっと正気に戻ったので結果オーライだろう。


「……どこ」


「は?」


「どこの部活どろぼうねこが、良太さんを奪ったんですか!」


「泥棒猫って……一応、新聞部(仮)ってところだ」


「……(仮)ってなんですか?」


「簡単に説明すると、変人達の集まる残念な新聞部だ」


「なんでそこを選んじゃったんですか!?」


なぜ選んだか、それはそこに惹かれるものがあったからだ。

しかし「変人に惹かれたから~」と答えるのは、なんだか人として負けた気分になる。

ならば、俺は何と答えるべきだ?


目標不明、部長の奇行、陰気な部室、未だ形をなしていない活動内容……ダメだ、ロクな返答が出てこない。


「どうしましたか?」


無言で考え込む俺に、ロリぃ員長のロリロリしい声がかけられる。

大きいお友達は、悶絶ものである。


至ってノーマルな俺は、尚も理由を模索する。

何か、何か……そう、一般的な男子高校生があの部活を選ぶ理由。

それは……


「委員長に誘惑(志し的な意味で)されて、つい……」


「また、朝倉さんですか!? ……わかりました」


あれ、答えミスったか。

まあ嘘の無い範囲なら、これが一番だろう。

それに、ロリぃ員長も分かってくれたようだし……


「今回は一度引きます」


「ん? 今回?」


「もし気が変わったなら、いつでも呼んでください! 私、朝倉さんには負けません!」


「お、おう……」


「ええ、本当にすぐに行きますから! 三回手を叩いたら来ましょうか! そうです、そうしましょう!」


「え、あ、ちょ……」


「良太さんは、絶対私が貰いますからね! それでは失礼します!」


止める間もなく、走り去ってしまった。

三回手を叩いたらとか、どこの忍だよ……


後日、試してみると本当に来た。

文化部の癖に無駄に足が早いロリぃ員長。

藍住良太、便利なパシりをゲットしました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ