マリオネット4
「おまえ!何考えてやがる!!」
面倒ごとは避けたいと、早々に立ち去ろうとしていたが、子供の食いかかる声に男は足を止めた。
子供は、影に押さえつけられ、冷たい地面に伏せながら地面を引っ掻いたりと、僅かに抵抗していた。
「それを持って早く行け」
男は、商人から受け取った貨幣を子供の方に放った。そして、影を収め、その場を後にした。
「ふざけやがって!!人の足元見やがって!!」
先程の商人は、酒の入った器をバンッと机に叩きつけた。
「まぁまぁ、命には帰られんでしょ」
連れの男が慰めるが、その顔から怒りが収まる様子はない。
「だいたいあの男なんなんだよ…」
「あー、なんでも、呪いの代行って言ってたっけな…をやってくれるらしいですよ」
あの男の存在は、スラムでは噂になっているようだった。
「あの…その人、どこにいます?」
二人に声をかけてきたのは、酒屋という俗世にのまれた場所に不釣り合いな貴婦人だった。
「おい、いつまでついてくる気だ?」
男は、なお後ろをついて歩く子供に声のトーンを下げ尋ねた。
「気に食わない…誰だお前、ここでは見ない顔だ…」
「名乗らせたければ、先に名乗るのが礼儀というものですよ。」
男は、得物を鞘から抜くと、威嚇程度に子供に突きつけた。
「やめろ…それ、嫌な気がする…お前も…嫌な感じがする……僕は、コカゲ。名乗ったぞ」
「ツキヨだ」
男は、名乗ると得物を鞘に収めた。コカゲと名乗った子供がなんらかの理由で一定の距離を保っているのがわかり、警戒をわずかに解いた。