6/8
二話 呪われた人形(マリオネット)【2】
「兄ちゃん、あそこによるつもりか?」
「そのつもりですが」
通り雨でぬかるんだ道に足を取られぬよう下をむいて歩いていると、商人らしい男に声をかけられた。
「どうしてもってんなら仕方ねぇが…あそこは気をつけな。特にスラムらはな」
男は仕方ないというように肩を少しあげて首を振った。
「何かあるんですか?」
「まぁな…マリオネットが出るって噂があるんだよ」
「マリオネット…仕掛けもなく動く呪いの人形か…」
「そうそうそれだよっ!普段は人間に紛れて判別もつかねぇが、気に食わないやつ殺しちまうって話だ。だから、あの街に近づきたがる奴は少ねぇ」
「ありがとう。気をつける」
男は何か言いたげに口を開いたが溜息とともにこちらに手を振って去っていった。
マリオネット、呪いによって命を吹き込まれた人形のことだ。