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プロローグ
目には見えないものが存在する世界。俗に言う「呪い」や「呪文」と呼ばれる類のものだ。
身分によって格差が激しく、天候に左右される不安定な生産に、人々の不満は募る。しかし、上に反発するにも代償は大きい。不満を述べに行くだけに命を捧げるのはあまりに理不尽な為、直接反発や不満を言おうという輩は居ない。積もり積もった不満や憎悪が、力を持ち何らかの影響を与えるようになったものを、この世界では「呪い」と呼んだ。
「呪い」とは言っても、決して悪いものばかりではない。幸福であって欲しいという願いもまた、力を持ち幸福にすることが出来たなら、それは「呪い」と呼ぶ。
格差が開く中で、人の命は平等ではなくなってしまった。スラム街ではごみのように人が使われては捨てられていく。下層市民は、不満の吐き口をスラム住民・奴隷へと向ける。訴えぬようにと喉をつぶして売る奴隷商人もいると聞く。まぁ、そんなことをしなくとも、奴隷の言葉など聞く耳をもつものなどいないのだが・・。
こんな世界だ、「呪い」が失われるはずがない―――。