I‘m looking for you.
ある日、僕が出会ったのは――黒猫。
その黒猫が、僕の運命を狂わせた。
そう、あれは――。
僕は、夕方に学校からの帰り道を歩いていたんだ。
賑わう街中を抜けて、人通りの少ない住宅街を通っていた。
夕方といえば、夕飯の支度を始める時間帯だ。所々の家から美味しそうな匂いがし始めてきた。
早く家に帰ろうと、足を速めた。
僕の家は、住宅街の外れの方だ。此処からは、あと二十分位掛かる。
近道をして帰ろうと思い、角を曲がって、すぐまた角を曲がる。
曲がった角の所に青くて丸い蓋付きのごみ箱があり、その上に黒猫が居た。なんだか、黒猫と目が合ったような気がした。
黒猫は、ごみ箱の上から飛び降りて、僕の横を素通りして行った。
それから、また、道を曲がったり裏道を通ったりして家に帰った。
次の日の朝。午前六時。
まだまだ寝たいと思いながらも、無理矢理に身体を起こす。
欠伸をして伸びをして、ベッドから降りる。
制服に着替えて洗面所に向かう。
「大智。起きたのー?」
「ああ、うん」
「そう。ご飯出来ているから。リビングの机の上ね」
「わかった」
リビングの机の前に座る。のろのろとご飯を食べ始める。
「あと、今日高校のころの友達と同窓会で、遅くなるから。自分でご飯でも作って食べといて」
玄関から声がする。母さんもう出るのか。
僕の母さんは、中学校の教師だ。遅くに帰ってきて、夜遅くまで書類整理とかしている。
父さんは、今中部の方に単身赴任中だ。ほとんど帰ってこない。
「はいはーい」
「じゃあ、お先に行ってきます」
「行ってらっしゃい」
ご飯を食べ終わった頃にはもう七時近かった。
そろそろ出ないと間に合わないな。
今日は、再来週にある文化祭の打ち合わせをするらしいらしい。僕のクラスの奴は全員七時半に集合だ。
「さて、出るかな」
二階の自分の部屋から鞄を取ってきて、戸締りをして、
「行ってきます」
誰もいない家に鍵をかける。
『竹井』と書かれた表札をちらりと見た。自分の家でも、引っ越してきて二年目。いまだに何となく違和感がある。前に住んでいた新潟の方と比べると、東京は自然が少ない。
のろのろと歩いているうちに、昨日の黒猫が居た場所まで来ていた。
《おい、お前》
「えっ?」
住宅街を見ながら歩いていた時、誰かに声をかけられた。周りを見回しても人一人いない。
《おい、聞こえないのか?》
くるりと後ろを向くと、昨日会った(と思う)黒猫が居た。
軽々とごみ箱から飛び降りた黒猫は、僕の後ろにちょこんと座った。
《そう、お前だよ。竹井大智》
「わっ。猫が……」
《しゃべったからどうした?》
「いや、不思議だろ……。それに、僕の名前……」
《ああ、知っているさ。俺は、お前だからな》
「はっ?」
黒猫の姿が歪んでいく。
目がおかしくなったのかと目を擦る。
そして、もう一度見たときには、僕が僕の目の前にいた。
「僕……!?」
そこには、制服じゃない僕の姿があった。ジーパンにTシャツを着て、紺色でチェック柄の上着を羽織っていた。私服は僕のと全然違う。
それでも、ありえない……! 似すぎている。
夢かと頬を抓るが、目の前にある景色は変わらない。夢なら覚めるはずだ。
《だから、そうだと言っている》
「他人の空似……じゃない……よな?」
《正真正銘、俺はお前だ》
「でも、こんなことあるのか?」
《何を言っているんだ。目の前にあることを否定するのか?》
「……。じゃあ、目的はなんだ? お前がここに居るのは何でだ? 黒猫が急に人に変わるなんて非現実的すぎる」
《それは……》
グサッ――。
《――こういう事だ》
「えっ……?」
僕に鋭く光るナイフが突き刺さる。丁度腹のあたりに刺さった。十五センチほどの長さの黒いナイフ。
最初は驚いたせいもあり、痛みを感じなかった。でも、徐々に傷口が痛み始めた。血も傷口から漏れる。
痛みで力が抜けて、立っていられなくなってきた。コンクリートの上に両ひざをつく。
「うっ……!」
《心臓に一突きの方がよかったか?》
見上げるとあいつが笑っていた。
今見ると、なんだか悪魔みたいだ。
「何でだ……? 僕を殺そうとした理由はなんだ!?」
《理由? お前に教える義理は無いね。それと、これは返してもらうよ》
あいつは、僕の腹に刺さったナイフを思いっきり抜いた。
「くっ……。痛……」
《刺されて痛くないなんてその方がおかしいと思うぜ?》
僕の血がべっとり付いたナイフを、ペロッと舐めた。ここまで来ると気味が悪い。それは、映画とかで殺戮者がやることだろ。
なんだかさっきより痛みが引いてきた気がする……。
僕は死ぬのか……?
でも、もうこんなに血が出てるし。もう、ダメかな。
「じゃあ一つだけ教えろ! お前……本当は何なんだ?」
ぼやける視界が真っ黒になる前にあいつが教えてくれた。
《俺か? 俺は……お前の影だよ》
ある日僕が出会ったのは――僕。
そして、僕の運命を塗り替えた。
そう、あれは――僕の影だった。
僕の人生に終わりを告げたのは、僕自身。
‐END‐
初投稿です。
まだまだ、初心者なので下手ですが……。感想、アドバイス等くださいましたら嬉しいです。
これから気長に書いていきますので、温かい目で見てやってください。




