幕間 死神と弟子入り その三
その日、城内に講堂が増えた。
簡単な構想の建物くらい、師匠は一瞬で構築してしまえるらしかった。
神が光あれと言ったから光があったように、師匠が講堂を作ったと言ったのならできたのだろう。
言うだけあって、クロムたちを統括するオリジナルは格が違ったようだ。
これは、ある意味思考停止に近いが、最高位の魔術師の非常識さは身を持って知っているので、考えるだけ無駄なのだろう。
応接室で講義をするわけにもいかないので、師匠は丁度いい建物を作ったのだ。
魔族の建築も精霊魔術でドカンとやるので豪快だが、それに勝るとも劣らない現象だ。
「常識の話をしましょう。
魔術師、および魔術は一般的に二種類に分けられるわ。
・・・“代用”タイプ、そして“流用”タイプ、その二つにね。」
自分の作った講堂を柱に手を当てて、師匠は俺たちに言う。
「それは魔術というものが、“代用”と“流用”の技術だからよ。
その二つの意味するところは、魔術がどういう過程を経て生じたかによるの。」
こつこつと柱を手で叩きながら師匠は続ける。
「即ち、自らの魔力を生成し、杖などの恒常的な効力を持つ触媒を介して魔術を行使する技術を“代用”。
逆に“流用”はあらかじめ用意していた外部的な触媒を介したり、消費して魔術を行使したりする技術を言うわ。
基本的に魔術師はこのどちらかの技術タイプが主体となるわ。
魔術を行使するうえでどちらも必須になるし、どちらか一つだけに特化した魔術師は珍しいわね。」
「ウチの“処刑人”の先輩やった二人はどっちもどっちかに特化してたけど、珍しいタイプやったんやなぁ。」
師匠の言葉に、フウセンが感慨深そうにそう言った。
「この概念は魔術師たちにとって普遍的なもので、雑魚魔術師どもの派閥の党名にもなっているくらいよ。
どっちが優れているとかで日夜言い争っているらしいけど、馬鹿よね。
その二つの技術を“両立”させ、自分に合ったスタイルを構築して、ようやく魔術師として一人前と言えるわ。」
「はいはい、そういや、『盟主』を支持してる魔術師の派閥に“両立派”ってあった気がしたけど、そこからきとるん?」
手を挙げて質問するフウセンに、ええ、と師匠は頷いた。
「魔術とは結局、魔力で結果を引き出すことにあるわ。
ここで二つの大きな違いは、魔力の使い方にあるわ。
“代用”は燃料が自分なのよ。
自転車をこいで歩くよりずっと速いスピードで目的地に移動する過程と結果を魔術の工程に置き換えればわかりやすいかしら。
対して“流用”は魔力源は別に置いておいて、自分の魔力は起点にするくらいね。
原動機付き自転車を想像してほしいわ。充電したバッテリーで動くあれよ。それを使って目的地に移動する。
例えだけれど、これでこの二つの違いは分かったわよね?」
師匠の分かりやすい説明に、俺もフウセンもこくこくと頷いた。
「この二つの特徴はよく覚えておきなさい。
魔術師は、必ずこのどちらかが主体にして魔術と戦術を構築してくるわ。勿論貴方たちもね。
これが身を守るために一番最初に覚えておくことよ。」
師匠曰く、これが基本中の基本らしい。
教科書で言えば最初の方に書かれている常識なのだろう。
学ぶ機会がなかったとはいえ、すごい今更な感じがするのはどうしてだろう。
例えば、物語中盤で最初に教わるべきことを聞いたような虚しさは。
「そうね、そこの彼女は典型的な“代用”タイプの魔術師ね。
燃費が良くて全体的に安定していて生存率が高いという、お手本みたいに典型的な“代用”タイプの魔術師の例ね。
代わりに決定打は欠けるけど、しつこくて面倒な相手よ。」
師匠が俺たちの後ろで講義を聴いているエクレシアを見やってそう言った。
「本来排斥すべき敵である錬金術師の権威である貴女にそう思われているのなら、私も騎士団の一員として誇らしいです。」
「弟子の分際でお目付け役がいるとか、生意気ね。
でも私の方針とやり方は変えないからそこはよろしく。貴女に口出しする権利はないんだから。」
「それは、わかっていますよ。ですが・・」
「大丈夫よ、加減くらいはわかってるから。」
二人がそんな殺伐としたやり取りをしているのを見るとなんか空気が重くなるので、思い切って俺は質問してみた。
「あのさ、師匠。エクレシアは“流用”タイプじゃないのか?
だって教会の魔術は神様の力を借りてるって話じゃないか。」
「あなた、そんな建前を本気で信じているの?
それはあくまで概念としてであって、教会の魔術は神の似姿を象った発現だから、“代用”タイプでいいのよ。」
「・・はあ。」
むしろ馬鹿にするように師匠は鼻で笑ってそう言った。エクレシアは何か言いたそうにしていたが、結局口をつぐんだままだった。
・・俺にはどういう意味だか全く分からなかった。
「つまり、呪術の原理としての概念を利用しているのよ。
自分は神に近しいと定義して、その力をも近似であるとして、その恩恵を与るの。
その発現の過程を自身の魔力で行っているから、その術式は“代用”タイプというわけよ。おわかり?」
「つまり、神Aと人間Bがあって、人間Bは神Aに似ていると定義すると、人間Bは神Aの持つ力まで持っている、と言えるようになるわけだろ?
でもそれって君たちの言うところの“流用”に当たるんじゃないのかい?」
俺が若干混乱していると、クラウンが師匠に質問を投げかけた。
「それは過程に依るわね。
例えばネクロマンサーが悪霊の力を借りて目的を達するとき、それは“流用”の魔術よ。
貴方の精霊魔術だって、精霊の力を介して現象を引き起こすから典型的な“流用”の魔術なのよ。
精霊魔術の原理からして、自身に共鳴する精霊を操るわけだから。
自らの魔力で発現させて結果を求めるのとじゃ、全く種類が異なるわ。」
「なるほどね。人間は面白い考え方をするんだね。」
そしてクラウンは納得したようだった。
こいつは魔族らしからぬ柔軟な頭を持っているからな。
要は一から十まで自分の魔力と触媒でやるのが“代用”タイプの魔術で、自分の一の魔力で精霊などを介して十の結果を求めるのが“流用”タイプの魔術なのだろう。
「勿論この二つにも個人によって傾向や得意不得意がある。
それで、本題よ。私がこんな簡単な常識を貴方たちにくどくも説明したのは、その適性を判断するためよ。」
そういって師匠は手元に数枚の資料を取り出した。
「やっぱなんか検査とかあるんやろか?」
「いいえ、もう貴方たちの適正は分かっているから、これからはそれに従ってもらうわ。」
資料に目を通しながら師匠はそう言った。
「フウセン、貴女は“代用”タイプの特化型にするわ。」
「えッ、でもそれって珍しいんじゃ。」
「貴女自覚してないかもだけど、貴女に“流用”タイプの魔術を使う利点が無いのよ。」
「・・ああ、確かに。」
エクレシアは師匠が言いたいことを理解したようだった。
「“流用”タイプの魔術は道具や精霊を使い、瞬間的に自身の出力を超える魔力をも扱えることが利点なのですが、貴女の場合それは足枷にしかならないでしょう。」
「なんてったって、貴女自身が“魔王”という最高レベル機構を有しているんだから。
自分自身が触媒で十分な程よ。その莫大な魔力で全て、どんな現象も賄えるでしょうね。
幸い、私は知り合いに貴女のように強大な魔力に恵まれた者を知っているから、伸ばし方も十分に熟知している。
何をしたって失敗はさせないし、しないわ。」
師匠は当たり前のように自信満々でそう言った。
「・・・わかった、師匠を信じるわ。」
「ありがとう、安心して、貴女の才能を潰すなんて愚かな真似はしない。
必ず芽吹かせるわ、我が師と大師匠の名に賭けてね。」
頷くフウセンから師匠は視線を俺に向けた。
「俺はやっぱり、“代用”タイプですか?」
普段から自分の魔力を使って魔術を行使してるし。
「いいえ、貴方は“流用”タイプに適性があるわね。」
「えッ。」
「今までの貴女の魔術行使を見てきた“私”から記録を取得したけど、魔力の性質とか波長とか諸々の要素を踏まえて、貴方は自分の魔力を運用するより、起点から生じた魔力を制御する方が向いているわ。
貴方は使われるより使う方が向いているのよ。」
驚く俺に、師匠は畳み掛けるように言葉を続ける。
「そう言えば貴方は戦い方を所望していたわね。
直接的なアドバイスをするなら、まず馬鹿みたいに敵に近づいたり魔剣の雷撃を使うのは止めなさい。
見た目は派手だけど、魔力で生成された雷撃は空気中の魔力減衰と魔力抵抗力をもろに受けて効率は悪いわ。自衛以上の手段にはならないから。
あと即死攻撃とかに耐性があるわけでもないのに、魔術を使える敵に近づくとか馬鹿じゃないの。
普通、魔術師を相手にする場合、即死級のダメージか呪術的に即死させる術を当たり前に有しているものだわ。これ黒魔術師の常識よ。
これは魔族が相手でも言えるわ。魔術の防護の上で自身の耐久力を一撃で上回る相手は沢山いるわ。
魔術師ならもっと安全な戦い方をしなさい。じゃないと死ぬわよ。長生きできない。」
怒涛の如くダメだしをされた。
・・・ちょっとへこみそう。
「これから中衛の距離を維持し、自衛の為に近接戦闘をするように心掛けなさい。
これが守れないようなら、私は貴方が今後どんな強敵に逢いまみえたとしても知らないわ。」
「分かりました・・・。」
「物わかりがいいわね。素直な子は好きよ。
今言ったことは、私の敵に対する心構えよ。私は人外の耐久性を防護魔術で出すとかしないし。
そう、敵は必ず即死させる魔術を持っている。誰に対してもそう疑いなさい。
そして首を落として、心臓を止めても、油断しないこと。魔術師にとって死とは肉体的な物ではないのだから。
それらを出来る魔術師はごく限られるけど、私はそれで何度も命拾いをしたわ。心しなさい。」
「・・はい。」
師匠は実力だけでなく、魔術師としてのキャリアからすれば大先輩にあたるわけで、そのありがたいお言葉を聞き流すほど俺は馬鹿ではなかった。
言い方は高圧的だが、この人はこういう言い方しかできないのだと思うと、以前クロムを怒らせて手や足が出た時に比べれば随分と優しいのだろう。
「私が想定している“敵”とは、今言ったように首を落とし、心臓を止めても平気な顔をしている連中よ。
世界中に推定百万人以上の魔術師がいると言われているけれど、そんなことができる連中は多く見積もっても千人も居れば多い方ね。」
世の中にはそんなビックリ人間が千人もいるとなると、魔術というものがどれだけ常識はずれか分かるというものだ。
「百万人か・・・魔術師って意外に多いんですね。」
あくまで推定らしいが、よくそれで世間一般に彼らの存在を秘匿できているとは思う。
「その九割以上がこの『本部』の十五階層から上に住んでいるのだけれどね。
言っておくけれど、この中で実戦ができるのは半分にも満たないわよ?
だって彼らは研究者なんだもの。戦いなんて野蛮で非生産的なことするなんて馬鹿らしいと思っているのが大半。
ましてや自分で汗水垂らして戦うなんて、もっての外だと思っているでしょうね。」
「でも、叡智は欲しい。そういうことやねんな。」
「ええ、そうね。」
どこか自嘲気味に笑って、師匠はフウセンの言葉を肯定した。
「だからね、ナンセンスなのよ。戦い方を教えてほしいとか。
私としてはもっと有意義な時間の使い方をしてほしいとも思うけれど。」
「俺も師匠みたいに体がいくつも有ったら、是非ともそうしたいですね。」
言い方は嫌味っぽくなったが、本当にそう思っている。
身体がいくつも有るなんて、便利じゃないか。
「まあ、実力はあって困るものじゃないし。
大師匠の系譜に連なる者として恥ずかしくないほど戦闘能力は持ってもらわないと困るしね。
吹けば倒れるような雑魚が私の弟子じゃ、私の名誉にも傷が付くし。」
「あの、やっぱりウチの戦い方にも問題あったりするんやろか?」
俺がボロクソ言われたせいか、フウセンも不安な表情で師匠を見上げた。
「うーんとね、貴女の場合、その魔力を十分生かした戦い方が必要かもね。
これは持論だけど、何でもできるのなら、何でもすればいいと思うわ。」
「どういうことなんですか・・?」
「その絶大な『才能』を生かした戦いをすればいいということよ。
まだプランを練っているから、貴女は後回しになるわね。どうせすぐに吸収するだろうから、まずは更に基礎を強化したいところね。
いくら適応できたとは言え、貴女の体じゃ魔王の力を御するのには荷が勝ちすぎているもの。」
といった具合に、流石の師匠でもまだフウセンの才能の伸ばし方を決めかねているようだった。
無理もない話だ。
自力で俺たちを追い詰めた能力を磨こうというのだから、師匠であってもその最果ては想像できないのだろう。
「魔王と言ったらやっぱりあれよね、いや、あれも捨てがたい。
いいや、ここはむしろ・・・むふふ・・。」
・・・師匠は怪しく笑っている。
何だか聞くのも怖いので、俺は何も考えないことにした。
「し、師匠。」
「なにかしら?」
「戦闘スタイルを変えるのはいいんですが、俺の魔術ってほとんど魔導書の奴が代理詠唱しているんですよ。
だから別のやり方で魔術を使わないといけないのかな、って思って。」
「ん?」
俺の言葉に、師匠はなぜか眉を顰めた。
「何を言っているの、そんなの今まで通り魔導書にやらせればいいじゃない。」
「え、でもその方法だと“代用”タイプの魔術になりませんか?
だって魔術を行使するとき、俺の魔力を消費していますし。」
「・・・・なるほど。勘違いしていたわ。」
はぁ、と師匠は軽くため息を吐いた。
「私は今まで、貴方が一人で魔術を使っているものだと思ったの。
だってその魔導書の存在だって、今日初めて知ったんだから。」
「そうでしたっけ・・?」
確かにクロムに言ったことはないが、とっくに気づいているものだと思っていた。
「素人がどこで魔術の知識を得たのかと思ってたけど、そこを詮索するのも野暮だしね。
ああ、別に咎めているわけではないのよ。魔術師が奥の手を隠すのは常套手段なんだから。
でも貴方と魔導書の繋がりまで把握できないとなると、相当隠密性の高い代物なのね。」
「そうなんですか?」
「貴方は超強力で危険な魔導書を持っている相手に近づきたいかしら?
それを秘匿するにも誇示するにも、まずそれを今持っていることを悟られないようにするのはとても大事なことよ。貴方たちも覚えておきなさい。」
はい、と頷く俺とフウセンを尻目に、師匠は俺から魔導書をかすめ取った。
「あッ」
「・・・・・ああ、道理で。」
その直後、バチッと師匠の魔導書が持つ手から火花が散った。
すぐさまその火花は激しくなり、直視するのも眩しくなるほど拒絶反応を示しだす。
「危ないッ!!」
師匠の行動に驚いたエクレシアが咄嗟に叫んだ。
「黙れ。」
しかし、師匠はただ一言そう告げた。
それだけで、弾けたように強烈な魔力が霧散し、砕けた。
「止めた・・?」
「魔導書相手になんて無茶を・・。」
エクレシアだけでなく、クラウンも呆気に取られた様子だった。
「弟子二号、一時的に止めているだけだから、貴方がマスター権限で抵抗を停止させなさい。
これ以上抵抗させると面倒よ。空間を侵食して防衛機構で無差別に敵性生物を排除しだすわ!!」
「わ、わかりました。」
俺はすぐさま魔導書に呼び掛けた。
―――『警告』 当書に不正な権限の行使を確認。これを排除します。
「やめろ、彼女は俺の師匠だ。これは命令だ。」
俺は魔導書に訴えかける。
―――『承認』 現マスターによる、当機能の停止要請を受諾。これより一定期間、防衛機構の完全停止をします。ご注意ください。
「・・・・・。」
「・・・・止まった、か?」
「止まったわ。」
ふぅ、と師匠は肩を落とした。
「なんて危険なことを・・・かの『黒の君』の魔導書の防衛機構の危険さは、貴女は知っているでしょうに。」
エクレシアも額に浮かんだ汗を拭ってそう言った。
察するに、相当やばい状況だったらしい。
「私は師匠に幾つもの“WFコレクション”の解析を任されていたわ。
この手のパターンなら経験したし、大よその傾向も知っているから別に暴走させたりはしなかったわよ。
それでも彼に止めさせた方が早かったのは事実ね。」
「ちなみに暴走したらどうなるんだ?」
「この辺一帯は更地になります。」
俺が訊くとエクレシアは真顔でそう言った。笑えなかった。
「て言うか、なんでこんなことを・・?」
まさか俺から魔導書を奪い取りたかった訳ではないだろう。
それをするならもっと早くやってるだろうし。
「魔導書の仕様が気になったのよ。一通りの機能は他の魔導書と共通しているみたいね。
ところで貴方がこれのマスターらしいけれど、本当なの?
貴方に対して一方的な繋がりしか感じられないわ。これじゃあ私でも分からないわね。」
「え、どういうことです・・?」
「貴方から魔導書の間には、念話を繋げる程度の魔術的エアラインしか存在しないってことよ。
対して、魔導書からはやろうと思えば貴方を操り人形にすることだって可能よ。
つまり貴方は、ある程度権限を有した魔導書が現実に魔術を出力するインターフェイスのようなもの程度なわけね。
分かる? 貴方は現状、便宜上マスターという名の周辺機器なのよ。」
「・・・わかっています。」
「でもまあ、魔導書の叡智に与っているわけだから、マスターという呼び方もあながち間違いじゃないわね。
だけど、少なくともこの魔導書は完全に貴方に服従はしていないわ。
貴方は確かに利用されているけど、貴方も利用している。そんな関係なわけね。バカみたい。」
師匠は俺と魔導書の関係を一発で見抜いたばかりか、それをあっさり馬鹿らしいと切って捨てた。
「大師匠も大師匠だけれど、こんな道具如きに明確な意識を与えるなんてどうかしているわ。
ふふふ、つまり私もどうかしているってことだけれど。」
師匠は自分で言って可笑しそうに笑った。
「道具に使われるなんてバカみたいだから、これ使いやすいように回路組み直しておくわ。
そもそもこいつには貴方の十倍以上の常駐魔力とそれを生成する魔導炉が備わっているのに、それを使わずに持ち主の魔力を消費させるなんて、協力的じゃない何よりの証拠よ。
せめてそれだけあれば彼女が覚醒した時の戦いはグッと楽になったはずよ。」
師匠は半笑いを浮かべつつ、フウセンを横目で見ながらそう言った。
「え、じゃあ、今までキツイ魔力消費の負荷を耐え続けてきた俺って・・・。」
「きゃはははは、全くの無駄、ムダ!!
完全掌握化に無い魔導書なんかの言うことを言われるままに信じるなんて、馬鹿じゃないの?
でもこいつ、道具のくせに生意気だからこの感情を保全している術式回路壊してやろうかしら。」
「ちょ、ちょっと、師匠!!」
可笑しそうに笑う師匠を、俺は思わず止めてしまった。
「なによ?」
途端に不機嫌になる師匠。
そうだ、この人は自分の行動を遮られるのが何よりも嫌いな人だった。
「さすがに、それは、その・・・」
「可哀想だとでも言いたいわけ?
貴方を利用していた魔導書の人格を?
言っておくけど、これは大師匠の悪意よ。
私が解析した他の魔導書にも魂や精神はあったけど、明確な人格までは無かった。機械のように術式に書かれたことを実行し、術者の命令に忠実だった。
水面下で術者の不利になることを隠すこともなければ、黙っていることもなかったのよ。
それが意図されていないものならば、これは不良品になるわ。」
魔導書の角で俺の頭をコツコツと突きながら、師匠は大げさにリアクションを取りながらそう言った。
「まあ、逆に特別性なのかもしれないけれどね。大師匠が無意味なことするわけないし。
その辺の意図は貴方が読み解けばいいわ。私は知らないし、どうでもいいわ。
あと、どうせ自動修復機能があるから、術式を破壊したところでどうにもならないから安心しなさい。大師匠の魔具はその辺徹底しているから。」
「あ・・そうなんですか。」
「この魔導書は自身に干渉する攻撃性の魔術を迎撃したりもしてくれるから、むしろ肌身離さず持ち歩いて盾にするくらいで丁度いいわ。」
冗談じゃ、無いんだろうなぁ・・・。
「あの、おもったんやけれど。」
そこでふと、フウセンが声を上げた。
「魔導書にばっか頼っとったら、自分の技量上がらんとちゃうの?」
それは俺も懸念していたことだった。
「・・・私がいつまでもそんな甘えを許すような女に見えるかしら?」
師匠が薄く笑ってそう言った。
なぜだろう、今背筋にゾクって寒気がした。
「あのシミュレーターに行ける銀のカードは持っているわよね?」
「は、はい。」
「あれを使えば、たった一睡の間に150時間以上もの実体験での学習が可能となるわ。
術式の展開の手順から、詠唱の呼吸法、並行処理からの同時展開や魔法陣の使い方、無意識下の魔術の展開と持続の方法、その一連の効率化まで魔術師としての必須技能は徹底的に仕込んであげる。」
「お手柔らかにおねがいします・・・。」
急に俺の中に後悔と言う単語が浮かび上がってきたが、首を振ってそれをかき消した。
これは自分が選んだ道だ。
それも、飛び切りの最短ルート。
多少の苦難など、あの死神に立ち向かうと決めた時に比べれば何が有ろうと生ぬるいに違いない。
「あとは、貴方の望み通り戦い方ね。さっきはああいったけれど、私が納得できれば貴方の好きにしていいわよ。
これに関して一つの方針は、徹底的にシミュレーターで実戦をさせて戦闘経験を積ませるつもりだけれど、その度に調整を加えようと思っているの、それでいいかしら?」
「わかりました。望むところです。」
「これでも交友関係は広いから、楽しみにしてくれていいわよ。
可愛い弟子の為ですもの。リネンとか、魔導師級の達人とかゲストで呼んじゃったりして。」
「勘弁してください。」
俺は涙目になってそう言った。
割とシャレにならない。実はあの『パラノイア』の一件は地味にトラウマになっているのだ。
「魔術師に何より求められるものは平静さよ。
連中クラスとの交戦経験を積めば、何が起こっても驚かなくなるわ。
そう言った連中は年中暇してるから、遊び相手が出来たと言えば喜んで相手になってくれるわ。」
「・・・・・。」
魔術を究めて暇を持て余すような化け物なんですね、分かります。
「まあ、最初は程度を見極めたいし、軽いジャブ程度にするから安心しなさいよ。」
・・・信用できないのはどうしてだろう。
そして、いま師匠の口元の端が若干吊り上ったのは目の錯覚だと信じたい。
「フウセン、貴女にもこれを渡しておくから、彼と一緒に必須技能の訓練を今夜行うわ。
夜に寝る前にこれを枕元に置いておきなさい。」
「分かりました。」
フウセンも師匠から銀のカードを渡されて頷いた。
「とりあえず、初日にしておきたいことは終わりね。
あ、そうそう、ねぇ貴方、これを忘れたら大変だったわ。」
「なんでしょうか・・?」
師匠が俺に向き直ってわざわざそんなことを言うので、俺は思わず身構えてしまった。
「辻本 命。貴方の名前ね。良い名前だと思うわ。
だけど、その名は今日限りで貴方の心の中にのみ存在することになる。
つまるところ、これから貴方は魔術師名を決めて、それを名乗ることになるわ。
本名を捨てろとは言わないわ、捨てては意味が無いもの。」
「ッ・・・」
俺は無意識の内につばを飲み込んだ。
「魔術師名か、確かにそれを決めるのは大事な儀式だ。」
「確かに、変更は効きますが、最初に決めた魔術師名を変えたと言う人は知りませんからね。」
クラウンもエクレシアもそんなことを言ってきた。
「そんなもんなんか? ウチはフウリンと一緒に決めたからなぁ・・・。」
フウセンの場合、彼女の魔術師名を考えたのはきっとフウリンなんだろうなぁ。
こいつに掛詞とか使うセンスがあるとは思えないし。
「願掛けみたいなものだけど、伝統だから決めなさい。
思いつかないなら、弟子の門出に私が贈ってあげてもいいわよ?」
「いいえ、それには及びません。
俺が俺だと名乗るのにふさわしく、端的に俺を表す言葉を知っていますから。」
だけど、あの『悪魔』のセンスを拝借するとは言え、流石にそのままと言うのは芸が無い。
「笹花―――ササカ、と。
これから俺はそう名乗ります、師匠。」
折角の門出だ、少しばかり見栄を張った。
「そう、それが貴方の魂を現した名なのね。」
それを聞いた師匠は、どこか楽しそうに笑っていた。
それは弟子の門出を祝福しているようには、なぜか見えなかった。
まるで師匠は俺を見ているのではなく、俺を通して何かを観察しているかのように。
そしてそれから間もなく、今日はお開きになった。
・・・・
・・・・・
・・・・・・
「ササカ、ですか。」
謁見の時間の準備をしに行ったフウセンと別れて、俺とエクレシアとクラウンは三人揃って移動していた。
「やはり、あの『悪魔』に言われたことを気にしているのですか?」
「・・・いいや。そういう訳じゃないさ・・・。
・・・・・ごめん、嘘言った。すごく気にしてる。」
何となく誤魔化そうとしたが、エクレシアが目の前に居るので止めた。
「でも笹船じゃ語呂悪いし、言われたまま成長してないって認めてるみたいでやだからさ。
笹の葉如きも花開けるってことで。願掛けだし、それでいいかなって。」
「良いんじゃないかな。ペットの名前みたいなのから、花の名前になったんだから。
これからもよろしく、ササカ。」
対してクラウンの態度はさっぱりした物だった。
こいつの傍若無人とは違う、他人を気にしないところが俺は好きかもしれない。
「それじゃあ、僕は謁見の間に先に行っているよ。
君も親衛隊員として遅れるなよ。」
そして彼は気を使ってくれたのか、俺とエクレシアを残してさっさと行ってしまった。
「・・・・なぁ。」
「―――――です。」
何となく間が持たずに彼女に話しかけようと思ったら、エクレシアは急に何かを口にした。
多分、人の名前だったと思う。そう言うニュアンスが伝わってくるのだ。
「私の本当の名前です。」
呆気にとられた俺に、エクレシアは微笑んでそう言った。
「私達は魔術師ですから、二人きりでも呼び合う事はできません。
しかし、是非ともその心の中に留めておいてください。これを預けることは、普通生涯の伴侶だけが魔術師業界の通例ですから。」
それを聞いて、俺は段々顔に熱が篭っていくのを自覚した。
エクレシアもそれから黙っていると思ったら、彼女は彼女で顔を真っ赤にしていた。
それから結局、俺たちは別れ際になるまでお互いに言葉を発せずにいたのだった。
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「それにしても、貴女が弟子を取るなんて、意外ですね。」
リネンは上機嫌に身振り手振りで話をする親友の言葉に耳を傾けながら、その合間にそう口を挿んだ。
今日も今日とて第二十八層では二人だけのお茶会は行われている。
今日の話題は勿論、メリスの弟子入りした二人の件だ。
「そうかしら?」
「ええ、本当は弟子など取らずに、自分だけで真理を完結させるものと思っていましたから。」
「弟子を取りたいと思っていたのは本当よ。
予定外に予定外な人材が志願してきたから、その芽を育ててあげようと思ったのよ。
この私を師と仰ぎたいなんて、見る目があると思わない?」
「本気ですか・・?」
リネンは信じられないようなものを見るような目でメリスを見やった。
「だって可愛いじゃない、ヒヨコのように私に縋りながら頼ってくるのよ?
私にも母性はあるもの。私に身を委ねるというなら、優しく抱きしめてあげるくらいはしてあげるわ。」
「私は貴女の新たな一面を見られて驚きました、と言っておきましょうか。」
ですが、とリネンは言葉をわざわざ切って、次に言葉を繋げた。
「流石に身内にする必要はあったのですか?
自家の魔術の相伝をするわけでもなく、魔術の教授をするだけなら、弟子入りにしても方便はもっとあったはずでしょう?」
少なくとも、リネンの知るメリスは善意で才能ある者を弟子として囲ったりする様な者ではない。
「魔王の魂の“断片”の持ち主がそんなに魅力的ですかね。」
実はリネンは『マスターロード』に招かれ、二番目の声明をものすごく近くで聞いていた。
それからの事態の推移はメリスを通じてだけでなく、自らの使い魔を用いて調査してもいる。
魔族の動向はリネンにとっても関心事なのだ。
「それもあるけど、今はそれは落ち着いているから後回しね。」
「後回し、ですか?」
「フウセンの持続的に満足のいくデータは取得できているし、何より方針が固まっていないもの。
データは出揃ってきたし、これから色々と実験をしてから、本格的にプランを組み立てる予定なのよ。
更に弟子にしたことで私との間に地盤は確固としたものになった。貴女の言うように、身内にまでしてね。
彼女のことは、残りの“断片”のこともあるし、経過を見守ってからにするわ。」
「なるほど。」
リネンは頷いて、一応の納得しして見せた。
「今私の興味わね、リネン。フウセンと一緒に弟子入りした彼よ。
貴女の敵になった彼女が見初めた男よ。」
「・・・ああ、彼ですか。居ましたね、そんなの。」
それはリネンとって興味の引く内容ではないのか、彼女の反応は薄かった。
しかし、メリスは自信満々といった態度でこういった。
「彼は間違いなく、英雄気質の持ち主よ。」
「なんですって?」
リネンが、眉を顰めた。
「一世代に人類全体から大よそ五十人前後現れるという、アレですか?」
「そうよ。」
メリスは自信満々の笑みのまま頷いた。
「彼らは歴史に残るような偉業を残すこともあるし、陰に埋もれて後々の大きな布石となることを成すこともある。
それが別に人類に対しての進退は問わずに、一人の強力な引力を持つ人間だと私は思うわ。
この“英雄”という単語は、何も戦争で英雄的な活躍をするから当てはまるわけじゃないわ。文化英雄という言葉もあるように、歴史的な発見や発明をした者も対象になる。
彼の場合、高確率で前者になるでしょうけど。」
「それが貴女の興味を引く内容ですか。」
「ええ。彼はきっと、前代未聞の人間になると思うわ。
だって彼、言ったのよ。自分は笹の花だって。自覚はしていないでしょうけれど。」
「六十年に一度の花・・・ちょうど、一世代はそのくらいですね。」
「面白いでしょう?」
「はぁ・・・。」
同意を求めることを催促するようなメリスの視線から逃れるように、リネンは目を逸らした。
「貴女の敵である彼女の横に現れた彼は、英雄の資質の持ち主だった。
ねぇリネン、もうすでに敗北フラグが立ってるわよ? 貴方って本当に天運が無いのね。
これは下手にケンカを売らない方がいいわね。またまた理不尽な“奇跡”が連発して敗走するのが脳裏に浮かぶようだわ。」
「気にしているんですから言わないで下さいよ。
とは言え、私はそもそも異物なんですから、“筋道”にいる彼らを邪魔できないのは道理ですよ。」
「あら? 少し前の貴女なら向きになって頭ごなしに否定したでしょうに。」
「最近、占星術を嗜んでいるんですよ。
私は自分自身だけでなく、もっと大きな流れに目を向けるべきでした。」
「私の知ってるリネンじゃない・・。」
ぶるぶる、と何を感じ取ったのかメリスが身震いした。
「ですが、だからと言って何もしないなんて、あるわけないじゃないですか。」
「あ、やっぱりいつものリネンだった。」
「メリスには悪いですが、いずれ潰しますよ。時が来るなら二人揃って。」
「それは面白いわね。私の弟子とリネンが殺し合うなんて。
それってとても面白いわ。それなら私はリネンを退屈させないようにしないとね。」
ふふふ、とメリスは怪しく笑う。
彼女にとって、両者の確執なんてそんな程度の認識でしかなかった。
「私の最大の懸念事項はメリス、貴女ですよ。」
「なにが?」
「貴女はなんだかんだ言って、情に弱い。
身内となった二人が貴女にとって複雑な立ち位置に成るのは目に見えています。
それが貴女に災いをもたらすのではないかと、危惧しているのですよ。」
「馬鹿ねリネン、それを楽しめないようじゃ、“生きる”なんて出来ないわ。」
「貴女はいつでもどこでも楽しそうで何よりですよ。」
最終的にリネンが苦笑して、紅茶のカップを口に運んだ。
いつも通りのやり取りだ。
メリスの弁舌にリネンが呆れて笑う。
彼女の話はいつもユニークで、飽きない。ずっと変わらない二人の関係だ。
「私はね、思うのよリネン。
彼、ササカはきっと、二か月前この『本部』の第二層に来た時、初めて英雄としての資質を得たのだと思うの。」
「ほう、それは『黒の君』の理論と真っ向から相対すものですが?」
英雄気質は基本的に先天性だと、『黒の君』だけでなく多くの魔術師が支持している学説だ。
メリスはそれに物申すと言う。
「彼は本来なら、地上の人間として生きて死んでいくだけの存在だった。
それが数奇なことに大師匠の魔具によって捻じ曲げられた。
大師匠曰く、人間が何かしらの関係を持つことができる相手は決まっている、というのにね。
多分その時、彼という人間は死んだのよ。或いは別の性質を持つ人間に変化した、と言うべきかしら。」
「彼がそもそもそういう“筋道”を持って生まれたで説明できる事柄ではないですか。」
「それを思考停止というのよ、リネン。
さしもの大師匠であっても、“運命”を捻じ曲げることはできないわ。あの魔具は幸運量の操作で、現象を操作するものだったもの、
もしかしたらリネンの言う通りなのかもしれない。だけど、本当にそうかしら?
本当にタダの市井に生まれた人間に、魔王の断片を退けられるかしら?
私は今、その回答に興味があるのよ。その解をどうやった得られるか、とね。」
「なるほど。貴女らしい命題ですね。」
錬金術と魂の関連性は切っても切れない関係にある。
人の使命が肉体に宿るのか、魂に宿るのか、それとも行動に寄るのか、はたまた偶然か。
そんな思想的で哲学的な問答も、また錬金術の分野なのだ。
リネンはそんな突飛な発想の元に理論を展開してくる友人が好きだった。
人智を遥かに超える高位の悪魔に問えば、あっさりと返答をくれることは間違いないだろう。
だけど、そんな野暮なことはメリスはおろか、リネンもしたことは無い。
彼女は悪魔に技術は求めても、真理を求めたことは無かった。
それはなぜか、リネンは何となく理解できる。
多くの魔術師がそうであるように、真理とはその自身の中にあるからだ。
そうでなければ、“創生魔術”なんて成立しないし、そもそも魔術はもっと科学に近しい技術になったであろう。
きっとどんなに正しい回答を提示されても、メリスが認めなければ彼女は納得しないだろう。
その強固な自我こそが、人を別の次元へと押し上げるのだ。
すると、そんな折だった。
空間が捻じ曲がり、一人の人影が現れた。
「あら、師匠じゃない。こんなところにわざわざ何の用?」
「メリス、貴女・・ッ!!」
現れたのは、『盟主』リュミスだった。
「貴女は、何をしたか分かっているのですか!!!
せっかくフウセンのことは私は静観を決めたて許したというのに、勝手なことばかりして!!」
端的に言って、彼女は激怒していた。
メリスは事後報告をしたと言っていたから、それを見たからだろう。
「どうしてって、その辺りの詳細はちゃんと報告したわよ。」
詰め寄ってくる『盟主』に面倒臭そうにリュミスは対応している。
「そういう問題ではないのですッ、彼女は魔王の可能性を持っているのですよッ!!
それを、あろうことか弟子にするなんて・・・。」
「大師匠はオッケーだしてくれたのに、なんで師匠はこんなに頑ななのかしら。」
「ッ・・・わかりました、それはもういいでしょう。
ですが、先日の一件を忘れたとは言わせませんよ。あれの事後処理がどんなに面倒か分かりますか?
こんなに立て続けに問題行動ばかりして、“コキュートス監獄”に放り込んだだけじゃ頭は冷えなかったようですね。」
二人の言い争いを、うわぁ、という表情でリネンは眺めていた。
なんというか、『盟主』は『黒の君』の名を出した時点で腰が引けてて、論点を変えてメリスを責めるも覇気無さも手伝って言いがかりを言っているようにしか見えなかった。
実際は彼女の方が圧倒的に正しいのに。こればかりは生まれつきのカリスマ性というやつなのだろう。
「何を言っているのよ師匠ッ!!」
私が何をしたって、師匠はあっという間にリカバリーしちゃうじゃない。
私が来るまで『本部』の運営も杜撰で非効率的でムダばっかりだったくせに!!
どうせ全部師匠の掌の上なんでしょう!! 私嫌よ、そんなの嫌ッ!!」
そしてメリスもキレるもんだから、事態の収拾は簡単につきそうになかった。
「なにをッ・・・子供ですか、貴女は!!」
「無駄に歳だけとって脳みそカチンコチンになった師匠に言われたくないわねッ!!」
二人は魔術師の師弟関係という、本来殺伐としたものなのだが、リネンは傍から見てて姉妹喧嘩にしか見えなかった。
これはしばらく続きそうだな、とリネンは紅茶を空になったカップに入れ直しながらそう思ったのだった。
ネタバレ:次回主人公はハチの巣になる。
メリスは手加減という言葉を知りません。それにしても説明回だとはいえ、今回は彼女中心の回になってしまいましたね。
もともと自己主張が強いキャラなので、自重しないとだめですね。
まあ、そんな彼女弟子入りしたてしまったので、ある程度は仕方がないのですが。
そんなわけで、特に誰からも要望はなかったのですが、次回あの爆弾娘が再登場・・かも?
それでは、また次回。