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第六話 魔族の町へ





「やぁ、調子はどうだい?」

そんな声と共に、俺が今居る部屋に光が差し込んだ。


クラウンが作成した急造の地下暗室である。

俺の部屋だ。安物の木のベッドと申し訳程度のテーブルが置いてあるだけの、寝るだけの部屋だ。


普段、俺は上に居るのでそれでも問題ないが、今日は違った。




「ああ、感覚は掴めてきた・・・。」

「そりゃあ身を持って一度は流れた力だ。それくらいは短時間で出来て当然だろうね。」

俺がやっているのは、暗室での瞑想だった。


瞑想と言っても、ただ座って目を瞑るだけではない。

全身にあると言う魔力の流れを感じ取り、操るためにずっと感覚を研ぎ澄ませているのだ。


だが、その段階はもう終わっている。

俺には全身を脈打って巡る力のラインが感じられるようになった。


それは血に含まれる魔力だという。

血には通常限界まで使用できる魔力の数倍の量が含まれており、体内では心臓と共に最も魔力が濃い部分である。



「このお香は効いたろう?」

「・・・ああ・・。」

俺は今、夢見心地だ。


クラウンが持ってきた小さな香炉で焚いているお香のお陰だ。

数種類のハーブと毒キノコで調合されている、と自作したらしいクラウンが嬉しそうに教えてくれた。


毒性があると聞いて最初は躊躇ったが、魔導書にも伝統的なウィッチクラフトだと言われては、とりあえず試すしかない。

結果は劇的であった。



それまでクラウンや魔導書と相談して行うことを決めて数日何も変化しなかった瞑想の効果がすぐに現れたのだから。


「魔術を扱うに置いて最も邪魔なのは、常識だ。

これは出来ない、こんなのは無理だ、そんな固定概念が最も邪魔なんだよ。

君の中にある常識が、魔力なんて未だ信じられないと言う思いがどこかにあり、それが邪魔していたからうまくいかなかったんだ。

だけどこうして幻覚作用のあるお香を使ってその常識を曖昧にすることで、君の認識力を手助けしたって寸法さ。」

クラウンはそう語る。


そう、あれだけ馬鹿げた動きが出来た魔術というものを、未だ俺は良く分かっていなかった。

クラウンは楽しそうに理論を語ってくれるが、よく分からない理屈をごたごたと並べられるだけにしか聞こえなかった。


そこでこの手段である。

確かにこれは深淵を覗きこむような手段である。何度かこの世に居てはいけないモノも見えてしまった程だ。




「これで魔術を使う基礎段階は終了だ。後は実践だね。」

「これだけで・・いいのか?」

「本来なら小さい頃から馬鹿みたいな量の知識を詰め込んで、理論を体で覚えさせられるそうだけど、君にはそれは必要ないだろう?」

確かに、知識は無理矢理植えつけられたし、やり方は全部魔導書がサポートしてくれる。


そんな便利な代物だけあって、魔術師の間ではこのような魔導書は万難を排してでも手に入れる価値があると言う。

それこそ、人を殺してでも。



「あとは普段から軽い魔術を継続して使用したりして徐々に慣らしていくといい。一週間もすれば魔力がそれを君の体に定着させ、比べ物にならないくらい君の体は丈夫になっているだろう。これは僕ら魔族のやり方だけどね。それでもまだ基礎の基礎だ。」

「・・・・わかった。」

「簡単に言ったけど、結構大変だよ?

勿論、魔導書のサポートは切ってね。常に集中しないといけないから。

ああ、集中力は大事だよ。魔術の強度は大体これで決まるからね。これがダメだと簡単にレジストされたり、最悪の場合は術の発動すらしない。」

「ああ・・・」

クラウンの言葉が頭に浸透する。

そういう力のある言葉だとはすぐに理解できた。




「で、話はそれだけか?」

こいつが俺の状況が心配ってだけで俺の様子を見に来るなんてありえない。

きっと他に用事があるのだろう。


「そうそう、忘れるところだったよ。

いろいろと入用になってね。君がそれを済ませたら町に出ようと思ってたんだ。君も行くかい? 興味くらいあるだろう?」

「ああ・・・そうだな。」

魔族の町というのは、確かに興味がある。



人間以外の知的生命体がひとつの文明を形成しているのだ。

よほどの出不精でないかぎり、一度は見てみたいとは思うだろう。



「まあ、つまらないところだけど。」

おい。自分で誘っておいてそれか。



「ついでに騎士の旦那にいろいろと頼まれちゃってさぁ。

こんな辺境だと町にしかない必要な物もあるからね。行商人とかも来るんだけど、時期が外れちゃったみたいでね。」

「まさか俺に荷物持ちをさせる気か?

人間は労働力にもならないって言っていたのはそっちだろ?」

「ああ、だからオークの彼を借りられた。」

当然のようにクラウンはそう言った。


この間知ったが、オークのギィンギはゴルゴガンの旦那の部下らしい。

人間で言うと屯田兵みたいな感じなのだろうか。普段はこの村の開拓や農作と警備を行い、有事の際には戦力になる兵士。


土地の限られているこの“箱庭の園”には、魔物と魔獣が跋扈する村の外の開拓は急務であるとされているそうだ。

ギィンギを普段見かけないのはその為だ。村の郊外の農地で魔物と戦いながら開拓や農作業をしているようだ。



で、こいつはそんな彼を使用人みたいに扱っている。

料理を自分でしないクラウンはギィンギにその辺を全部頼んでいるらしい。当然食費や手間賃は払っているようだが。



「じゃあ、昼には出発するんで、用意があるならしておいてね。」

「俺が用意を必要とするほど物を持っていると思うか?」

「それもそうだね。」

話はそれで終わりと、クラウンは踵を返して部屋から出て行った。





・・・・

・・・・・・

・・・・・・・・





「これ、本当に大丈夫なのか?」

「平気ダ、ヨク、訓練サレテル。」

オークのギィンギはクラウンの家の前に荷馬車の用意をしながらそう言った。


しかし、それを引こうとしているのは馬ではなく、この間コボルトが連れていたブラックドックだった。

聞けば先日の戦果の褒賞として与えられたのだと言う。

扱い方もこの集落に住むコボルトにちゃんと教わったらしい。



イヌぞりは人間の間でも優秀な移動手段であり、犬と同じ重量を運ぶことができると言われているからその辺は心配していない。

普通の犬の二倍大きさはあるブラックドックが五匹も居るのだから、これだけでかなりの物資や人員を輸送できるだろう。

コボルトの危険度跳ね上げる要員だけではあるようだ。


しかし、訓練されている魔物とは言え、どうしても苦手意識は拭えない。

だってこいつら、普通に俺くらいなら丸呑みしてしまいそうなくらい大きいんだから・・・・。



ただでさえ訓練された大型犬は人間より強いと言う話を聞いたことがあるくらいなのだから、これくらいでかかったら多分俺くらいなんかじゃきっと太刀打ちなんてできないだろう。




「ちょっと、そこの人間。」

この場で人間は俺だけなので振り返ると、この間の夢魔が立っていた。



「町に行くんでしょ? これ師匠から買ってきてほしいもの。」

「あ、ああ・・・・」

ラミアの婆さんからと言われたら断れないから思わず彼女の差し出したメモを受け取ってしまったが、それは俺が決めていいことなのだろうか・・・。




「おいおいおいおーい。お前この間町に行ってきたばかりだろう? 何でまたすぐに必要なものが出てくるんだい?」

すると、クラウンが家から出てきて俺からメモを奪い取った。


「なんだ、殆どお前の私物じゃないか。」

「ちッ」

明らかに夢魔の奴が舌打ちしたのが分かった。

当然俺より耳のいいクラウンにも聞こえているだろう。



「仕方ないじゃない、師匠は余計なものを置くの嫌うし。」

「仮にも魔術師の端くれが俗にまみれてどうするのさ。

まったく、何でお前なんかがばあ様の弟子なんだろうね。」

そんな嫌味な台詞を言われ、夢魔は憎憎しげにクラウンを睨んだ。

しかし、ドレイク相手に文句を言おうとは思わないのか、黙ったままである。


「そんなに手間じゃないだろ。そんなに大したものじゃないなら別に良いんじゃないのか?」

何だか空気が悪くなったので俺は一応フォローすることにした。


「あら人間。話が分かるじゃない。」

「俺は人間って名前じゃない。メイだ。」

「そうなの? じゃあ、メイ。私はサイリス。頼んだわよ。」

まだオーケーとも言っていないのに、夢魔のサイリスは投げキッスと共に去っていってしまった。



「君が処理しろよ・・・。」

「・・・・わかった。」

クラウンの冷たい視線と共にメモを押し付けられ、俺は頷くしか出来なかった。今のは間が悪かった。


幸いメモの内容は香水とか女子が好みそうな小物ばかりでかさばるような物ではなかったのが救いだ。



「しかし、君はああいうゲテモノが好みなのかい? あんなのとの番いに成りたいなんて、全く、人間の趣味は分からないね。」

「ああいうのが好きって奴もいるだろうけど、俺はピンと来ないな。」

「信じられないね。」

俺もお前の感性もイマイチ把握できないと、とまでは言わなかった。




・・・・

・・・・・・

・・・・・・・・




クラウンは第二層の中心部にある町には丸一日掛かると言っていたが、なんと翌日の朝には着いてしまった。

ブラックドックが予想以上に持久性と走破性に優れ、一晩中整備もされていない道を走り続けていても全く疲れた様子を見せないのだ。


こっちはがたがた揺れる荷馬車の上で吐きそうだったのに、クラウンも御者をしているギィンギも一晩中揺られているのに涼しい顔をしている。お陰で眠れてない。たしかに、こいつらが基準なら人間なんて労働力にすらならないだろう。

根本的にこいつらとは違うのだと理解できた。


まあ、帰りはそうもいかないだろう。荷物もあるだろうし、移動に時間も掛かれば魔物にだって襲われるだろう。

今回は運が良かったと、ギィンギも言っていた。


普通なら護衛を付けて集団で行くのだろうが、クラウンの存在は少数での買出しを可能にするのだろう。

それくらいドレイクは強大な種族なのだ。実感は微妙だが。



町は城壁に囲まれていた。

その周りは水掘りがあり、魔物の進入を防ぐ工夫がなされている。


町に入るための橋を兼用した門を渡ると、門番をしていたオークの兵士に呼び止められた。

どうやら、出入りを管理しているらしい。


門の内部の事務所に人数などを伝えると、通ってよいとのお通しがあったのでその通りにする。



クラウンはつまらないと言っていたが、町の中は中心地に向かうに従い、かなりの賑わいを見せていた。

てっきり町のように活気がないのだと思っていたので、意外だった。


ここでは魔族が人間を連れているのが珍しくないのか、俺がクラウンやギィンギと歩いていても誰も気にも留めない。

そういう意味では気楽である。




「オレハ、頼マレタ物、買ッテクル。」

適当なところに宿を取って荷物や荷馬車を置き、ブラックドック達を預けて町に出ると、ギィンギの奴はさっさと買い付けに行ってしまった。



「じゃあ、適当にどこか回ろうか。」

そしてこいつはそれを当然のようにギィンギの奴に任せやがった。


「おい、手伝わなくて良いのか?」

「彼は何度も買い付けに来てる。僕より勝手は分かってるさ。道中の護衛は僕、それ以外は彼。役割分担、適材適所って奴さ。」

居ても邪魔になるだけだろう俺が言っても仕方ないが、こいつはやっぱり全く気にしていない。

こいつに何を言っても面倒だから、もうそれでいい気がした。



「何か名所とかあるのか?」

「名所ねぇ、強いていうなら上層と下層に向かう施設があるって所かな?」

「それって名所なのか?」

「名所だよ、下層は“不在宮”の正面玄関に直接繋がっている。

他にも第一層には僕達ドレイクの聖地である御霊山がある。他にも語りきれないほど色々あってね。

上層との中間地点であるこの第二層には人が集まる。だからその周辺は毎日のように大賑わいで物流も盛んさ。毎日馬鹿騒ぎしてる。」

「なるほど・・・・」

道理で宿も多いわけだ。


俺たちはとりあえず中心部に向かうことにした。

そろそろ人通りもかなり多くなり、様々な魔族が行きかっている。



「とりあえずサイリスの頼まれ物だけでも買っておくか・・。」

メモを預かっているのは俺だけだし。


「困ったな、君を一人にすると浚ってくれというようなものだ。

すぐそこには奴隷市もあるし、人間が居てもおかしくは無いしね。」

「奴隷市なんてあるのか・・・。」

「あれ? 興味ある? やっぱり番いは同じ人間の方がいいもんね。」

君が気に入ったので安かったら買ってあげるよ、なんて笑えないことを言うクラウン。



「よし、さっさとつまらない用事は終わらせてそっちに行こうか。」

こいつの中ではもう奴隷市に行くことは決定事項のようだった。


こいつは自分と同じ人間が売られていく様を俺にどう見ろと言うのか。

それとも、自分の境遇を目に焼き付けろとでも言いたいのだろうか。


俺は、複雑な心境のまま付いていくことしかできないのだ。




・・・・

・・・・・・

・・・・・・・・





「おや、なにやら騒がしいねぇ。」

サイリスも頼まれごとの買い物を済ましてクラウンに付いていくと、彼がそんなことを呟いた。


「そうなのか?」

俺には全く他の喧騒と見分けが付かない。

相変わらず魔族の密度は三メートル先が見えないくらいだ。



「ここからじゃ見えないな。ちょっとこっちに行こう。」

「ん?」

クラウンに手を引っ張られて路地裏に連れて行かれると、急に跳躍して近くの屋根の上に引っ張り上げられた。



「うおッ・・っとと・・一言くらい言えよ。」

バランスを崩さないように何とか踏みとどまると、俺は既に屋根の端で下を見下ろしているクラウンの元に向かう。



「へぇ・・・・面白いことになってるなぁ。」

クラウンはそう言って喧騒の奥を指を刺した。


そこは、ぽっかりとドーナツ型のように人の居ない輪が出来ていた。

その中心に、一塊になっている集団が居た・・・・それは・・。




「人間!?」

そう、まるで魔族に追い詰められて四面楚歌の状態で、人間が一塊に集まっていたのだ。

少なく見積もっても百人は居る。



「もしかして、あれは全部奴隷か?」

「多分そうだろうね、ここに人間が居る理由なんて攫われて連れて来られるくらいだろうからね。」

「・・・・・・じゃあ、なんで捕まえないんだ? 普通檻に入れたり鎖で繋いだりするもんだろう?」

だと言うのに、魔族に囲まれている以外は奴隷の人間達はほぼ自由の身だ。

よく見れば首輪や足輪を付けられている者も居るが、鎖が根元から断ち切られている。



「その原因は、多分あれさ。」

クラウンが指先を動かす。


そこには、無人の輪の中にまるで魔族を遮るように両手を広げて仁王立ちをする人間が見えた。

まるで奴隷と同じようにみすぼらしい格好で全身を隠しているためどんな人間かは見えないが、覇気みたいなものは伝わってくる。


それはとても侵しがたい何かで、それが魔族の進入を躊躇わせているのだろう。




「・・・・いったい、どういう状況だ?」

「うーん・・・どうやら、あの人間が奴隷の解放を訴えているみたいだね。

耳のいいクラウンがそんな情報を拾ってくる。


「それでこう着状態・・・。馬鹿だねぇ、そんなことしても余計酷い目に遭わされるだけだって言うのに。」

「・・・・・・ああ、そうだな。」

「奴隷に許される自由は、優しいご主人様に行き会うことを願うことだけだって言うのに。ねぇ?」

「お前は自分が優しいと思っているのかよ?」

「え、こんなに優しい魔族はそうそういないよ?」

俺は新手のジョークだと思うことにしてシニカルに笑って見せた。



「うーん、それにしても、無辜の民の為に無心で尽くす・・・そんな人間、本当に居るんだねぇ。救世主でも気取っているのかな?

これで奇跡の一つでも起こして見せたら、まるで聖人だね。」

「おい、クラウン。そういう奴はな、人間って言わないんだよ。」

俺は他人事のようにそう言った。

事実、俺には全く関係の無いことなのだ。



だけど、だけどなぜか、それがとても悔しかった。

それが愚行でも、そんなことを実行してしまえるあの人間がどこか羨ましかったのかもしれない。




「おっと、事態が進展するようだよ。」

「え?」

「“代表”のお出ましだ。」

クラウンは顎をしゃくって見せた。


そこには、竜が居た。

俺の知識が通用するなら、あれは翼竜。ワイバーンと呼ばれる竜だ。



そして、ブラックドックを駆るのが犬の姿をしたコボルトなら、竜を駆る魔族は一つしかいない。




「あ、あー。これで言葉は通じるか、人間?」

まるで人間のような声で、その“代表”と呼ばれる魔族は言った。


魔族代表交渉役。

そう、称される魔族は、ドレイクだった。




―――『検索』、246ページ。


種族:ドレイク(ロード:最上位種) カテゴリー:獣人・幻想種

性格:最悪  危険度SS  友好性:余地無し


特徴:

ドレイクの最上位種族。魔族の支配階級であり、同属以外にも数多の種族を支配している。

魔王の為に集団的かつ勢力的に活動し、日々暗躍と蹂躙を企てている、人類種の宿敵である。

ロード種は魔族でもトップを貫くだけの実力と能力を持てるドレイク族から選ばれるエリートであり、根本的にはドレイクとは変わらない。

しかし、彼らは強力な竜神の加護を受けることが許されており、並みのドレイクとすら一線を画すほどの怪物である。

このドレイクロードが率いるドレイクのワイバーン部隊は城を容易く陥落させる悪夢として語り継がれており、筆者も辛酸を舐めさせられた。

下手をすればエンシェントドラゴンに匹敵する強敵であり、討伐には決戦を挑む覚悟で行うように。


性格は前述の通り最悪であり、傲慢で常に人間を見下している。人間を残虐に殺す様を眺めて楽しんでいる節すら見受けられる。

知能は人間よりも高く、魔族には珍しく謀略で相手を貶めたりもする。

遭遇すること事態は魔王でも現れない限りほぼ無いが、もし集団以下で出会ったのなら死を覚悟してもらうほかない。


連中に関しては筆者でも情報が不足している。幸い、連中は自己顕示欲が大きいので、後手に回っても体勢を立て直す時間はある場合が多い。

万全の準備を期して、決戦に臨んでもらいたい。





「ドレイクの・・・ロード種!?」

浮かび上がる知識だけでも身震いするほどの化け物だと分かる。


事実、あれほど密集していた魔族の群れがぞわぞわと波紋のように引いていく。



「ご機嫌麗しゅう、お嬢さん。

私はドレイク族の族長を勤め、魔族の代表交渉役を担う者だ。

――――――皆は私を『マスターロード』と呼ぶ。」

空中のワイバーンから降り立ち、魔族の前に立ちはだかる人間の前に躍り出た。


威厳だとか、畏怖だとか、そういうものではない。

圧倒的な存在感がそこにあった。まるで、巨大な竜を目の前にしているような、圧倒的で絶望的なほど強大な存在だ。




「あらゆる種の頂点と嘯きますか。」

そして、竜の顎に飲まれかけていると言う状況にも等しいのに、彼に相対する人間は一歩も引かなかった。



「そうやって、あなたは自分以外の全てを見下すのですか?」

ぶわッ、と風が吹いて、その人間のぼろ布が剥がれ落ちる。



まだ俺と同じくらいの、金髪の若い女だった。













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