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魔族の掟  作者: ベイカーベイカー
第四章 断片編
67/122

第六十話 レプリカント・アーミー




それを察知できた人間は、一人だった。



「ふんふふんふふーん♪」

「そうそう、上手上手。」

ミネルヴァは、割り当てられた自室で編み物をしていた。


彼女にそれを教えているのは、知り合いの妖精ノームからやり方を教わったと言うフェアリーだった。



とにかく妖精と言うのは長い年月を過ごしているので、人間には真似できない凄まじい技術を会得しているとされている。

刹那的快楽主義者と称される妖精たちだが、大地に根を張る植物の化身であることを示すように土台となる様々な技能を持っている。


大抵はろくな使われ方をしないし、滅多に人前で披露することなどないので目にすることは無いが。

ましてやそれを伝授するなど、通常有り得ない事だった。



「やっぱりドラゴンさんには赤い色がにあうよねー。」

そう言いながら彼女が作っているのはマフラーだった。

あれから練習したのか以前の失敗作より、大分マシになっていた。


彼女が最近に一緒に遊んでいる子供たちの流行が、色んな物を自作して持ち寄ることなのだ。

特に遊び仲間のコボルトの少年が持ってきた木の彫像に彼女はいたく感銘したらしい。


それ以来、こうして暇なときは自室に籠って色々な物を作っている。



部屋の棚には彼女の自信作の泥人形が並べられている。

良く見ればクラウンやエクレシアなどを模していることが分かるくらいにはこだわりを感じる代物だった。

不格好だが、まるで命が吹き込まれているような印象すら受ける。


そしてその前で妖精たちが円陣を組んで、次は何を教えるか相談していた。



いつもは夜の九時に寝て朝の六時に起きる超健康児のミネルヴァであるが、その日のうちにマフラーを完成させようと、十一時を目前にしても黙々と編み物に取り組んでいた。

もう既に八割方は完成していて、火遊び夜遊びなんて危険な響きな言葉が大好きな妖精たちはそれを止めるはずも無かった。


彼女が、いや、彼女らが危機を感じたのは、そんな時だった。



「ッ!?」

ミネルヴァの体が、一瞬ぶるりと震え、一対の棒針を取り落してしまった。

それは悪寒だった。



「なにか、何か来てる・・・。」

それは恐らく、ミネルヴァが生まれて初めての感覚だった。

恐怖だった。


「とりあえず、落ち着きましょう。私たちが付いてるから。」

円陣を組んでいた妖精たちの中からフェアリーがミネルヴァにそう言ったが、彼女は生まれて初めての感覚に身を任せるようなことはしなかったので徒労だった。


だがどうすればいいのか分からないので、頻りに仲間たちの顔色を窺っていた。



「嫌な鉄の臭いがするわね。」

「くっさいオイルとか言う油と、鉄と、火薬ね。」

長く生きてるだけあって、どういう訳か妖精たちは修羅場に慣れているようだった。


「とりあえず、みんなに知らせましょ。」

「私たちは危ない物が近づいていないか周囲を見回っとくわ。」

「うん、じゃあドラゴンさんに伝えよう。ここの兵隊さんたちで一番えらくなったっていってたから、それでいいとおもう。」

頼もしい仲間たちの助言を受けて、ミネルヴァは部屋から駆け出していった。


妖精たちは瞬時に目配りをすると、一人が念の為に彼女に付いていき、残りが壁を透き通ってどこかへ飛んで行った。


一人、部屋に残ったフェアリーが、泥人形の並べられた棚に目を向けてこう言った。



「お前たちはあの子を守りなさい。」

そう言ってフェアリーが飛び立つと、棚の上の泥人形たちがカタカタと動き始めた。






・・・・

・・・・・

・・・・・・




危険を察知した存在は、もう一人いた。

人間ではミネルヴァ一人だったが、妖精たちのように危機感知に長けた存在が居たのだ。


城内の植木の様子を見回りに来ていた、悪魔アルルーナだった。

週に一度の風呂と、パンと葡萄酒の量次第で主人のサイリスからいろんな仕事を請け負っているらしく、主人と違って文句ひとつなく仕事を行っていた。

これ以外にもサイリスは薬学に関して知恵を借りたり、農園の見回りや植物園の管理まで行っている。

彼女の原型となったと思われる女神が豊穣を司っていると言われているからか、その方面の仕事が多い。


仕事量に見合っていない対価に思えるが、悪魔の価値観は人間のそれとは大きく違うのだ。


その日は木に巣食った虫を駆除し、葉が食われた小枝を取り除いていると、彼女の知覚は“それ”を察した。



その人間に持ち得ぬ感覚を、人間が言葉で表すことは難しいだろう。

あえて言うなら、それは“ささやき”だ。


自然が彼女に語りかけるのだ。



「我が主よ。」

彼女は会議室の床から顔だけを出して、サイリスの足元に現れた。


「なによ。今忙しいから念話にしなさいよ。」

せっせと会議の内容を書記として記しているサイリスは若干不機嫌そうにそう言った。


「この城に危機が迫っている。」

「え!?」

いきなりそんなことを言われるもんだから、サイリスは思わず羽ペンを床に取り落した。


「どうしたん?」

ドラッヘン達と明日の段取りを決めていたフウセンだけでなく、その場にいた全員が彼女に注目した。



「すみません・・・どういうことよ?」

サイリスは姿勢を低くして机の下に顔を向け、声を窄めてそう言った。


「詳しく説明する時間は無い。城主殿に早く進言するがいい。」

アルルーナはそれだけ言うと、身を顰めるようにして床に消えた。


そして、すぐに仕事に戻るために立ち去っていないのは、主人の警護の為だった。



「何が有ったんだい、サイリス。」

彼女の気配を察したのか、ラミアの婆さまが問い詰めるようにそう言った。



「はい、使い魔からの予言です。何でも、この城に危機が迫っているとか。」

「はぁ? なんやそれ。」

その漠然とした予言に、フウセンは何だか胡散臭そうな表情になった。


だが、それとほぼ同時だった。




「ドラゴンさーーーーん!!!」

どかーん、とミネルヴァが会議室の両開きのドアを開け破り、クラウンにしがみ付いてきたのが。



「なんだよ、いきなり・・。」

クラウンはミネルヴァをうっとおしそうに引き剥がしながら言った。


「なにか、来るの!! よく分からないけど、来るの!! 怖い、怖いよ!!」

クラウンはすぐに彼女が怯えているのが分かった。

彼は図太い神経の持ち主だが、かなり繊細な感性を持っている。


彼女の後を追従してきた妖精が彼に目配りすると、クラウンは頷いた。



「どうやら襲撃があるようですね。

いったいどこの誰かは存じませんが、少なくとも我々に害意がある敵であることは違いないようです。」

「分かったわ、すぐに警備の連中を戦闘態勢に移行しぃや。

仮眠しとる奴は叩き起こして、城外の警備の強化を優先させ、非戦闘要員は退避させるんや。」

「了解しました。」

フウセンの許可を得たクラウンは、部下たちに念話で指示を送る。



「クラウン、城外の指揮はお前に任せた。

城内は俺が指示を出す。陛下と御要人たちは任せろ。」

「分かったよ。」

旦那の指示にクラウンは頷いた。


そして彼はミネルヴァの首根っこを掴むと、そのまま会議室から出て行った。



「・・・・つまらん会議が続いてたと思ったら、何だか面白いこと成ってるじゃないか。」

「若、我々は?」

「一応、連れてきた手勢に出動準備をさせておけ。」

「御意に。」

ドラッヘンの命令に、フリューゲンは恭しく頷いた。



「ま、楽しそうだったら俺も出るぜ。それまではお手並み拝見か。」

ドラッヘンは、迫りくる戦闘の予感に舌を舐めずりした。




地下から脱出してきた二人が、この会議室に駆け込むまでそれから五分後の事だった。

しかし、その五分はここの城に住む多くの魔族の命を左右した大きな五分だった。






・・・・

・・・・・

・・・・・・




城内勤務の親衛隊は、二百人で四個中隊だ。

城塞に併設されている兵舎四棟に、交代制の警備で常時それだけの戦力が置かれている。


これは現在平時であるからで、戦時ならば城外の見回りをする兵士が追加されることだろう。



「隊長、全員揃いました。」

「ああ。」

リザードマンの隊長ゲトリクスは部下の点呼の聞き終えると、不機嫌そうな表情を隠さぬまま眠そうな隊員達を見据えた。

深夜は夜行性でない彼らの担当ではないので、彼の預かる第四隊の五十人が眠そうにしているのを責める事はできないだろう。



「てめーら、弛んでるぞ!! 陛下の城が狙われてんだぞ、少し気合出せよ!!」

しかし、それを怠慢だと隊長は怒鳴って部下たちを怒鳴り付けた。

そうなると、ピシッと姿勢を正す者が大勢出た。


この一大事に部下に厳しいのは悪いことではないが、当然それ以外にも理由が有った。



クラウン率いる親衛隊は、魔族の中でも精鋭揃いだ。

当然隊長は上級魔族ばかりで、下級魔族の隊長は彼だけだ。


その理由はクラウンが、どの程度無理させられるか分かっているから、と言う物だったからだ。

つまり実力より使い勝手で選ばれたのだ。


偵察部隊時代の性質を引き継いだ親衛隊第四隊は、圧倒的なパワーと体格を持つ連中と違って、機動力や弓矢や精霊魔術などの後方支援に特化している。


他の前衛を務める第一隊から第三隊までの上級魔族たちと比べれば、一部隊に対して彼ら単純に九倍以上の戦力差もある。

つまり、他の親衛隊の連中から舐められているのだ。

だから隊長は名誉挽回したかった。


それでも彼らは必須だった。

この城塞は、人間であるフウセンを基準にしているため、身長三メートルぐらいある魔族は窮屈なのだ。


主な任務は城内警備。

戦時になっても、前に出ないで後方支援。


必要な事とは言え、これは魔族にとって、戦士にとって、後ろで待つと言うのはかなり不名誉なことだった。

前衛で戦う魔族は基本的に、狩猟ならともかく殺し会いに飛び道具なんて邪道だと思っている。

逆に後衛の魔族はバカみたいに切り結ぶだけなんてとんでもない、と意識の差がある。


隊長は以前より魔王陛下との下へ働きたいと願っていたが、それは全力でかの御方の為に戦うためであって、後ろで指を咥える為ではなかった。



「隊長、騎士殿に非戦闘員の警護と誘導に数名ほど手を借りたいと・・・。」

すると、伝令であるガルーダのラサヤナが彼の下に空から降り立ってきた。


「分かった。お前たち、旦那の手伝いに行って来い。」

そう言って、なけなしの彼女に前衛要因を連れて行かせ、いよいよ隊長はため息を吐いた。



そして、城壁の門から第一隊が西側へ部隊の展開が完了したと伝令がやって来たが、彼らには関係ない事である。

城壁は城塞を中心に四部隊が余裕をもって待機するぐらいの、最低限の広さしか確保されていない為、これで少し広くなるな、と隊長は思うだけだった。


具体的には四百メートル走のトラックより若干狭い。

そこに城壁や兵舎などの施設があるから、手狭に感じるのだ。



なぜ彼がここまでやる気が無いのか、それは配置に不満があるからではない。

敵が来ると言う西には、先日まで己が警備していた村があるからだ。


どこをどうしてそこから敵が出てくると言うのか、陛下に忠誠を誓った村民が裏切って敵になるとでも言うのか。

それが油断だと言うのなら、喜んで裏切り者に殺されてやろう、と言う気概まであった。


確かに最近人口の急増で、知らない魔族も増えてきた。

だがそこに敵が混じっていても、テロにしろ強襲にしろ、行動を起こすには早すぎる段階なのだ。


更には敵襲の情報が妖精に齎されたと来れば、どうせ連中のイタズラだろうと高が括っても仕方のない話であった。



そこまで考えても戦闘が開始するや否や、彼は即座に行動した。

城壁の外で銃声が鳴るのと同時に、高さ二十五メートルほどの円形の監視塔の壁に跳び付き、這うようにして天辺まで昇った。



「状況はどうだ!!」

監視塔の天辺に居る魔族に隊長は問うたが、返事は無かった。


当然だった。

むき出しの監視塔の天辺に居たのは、額から血を流し絶命している魔族だったからだ。


矢でも精霊魔術による攻撃でもない、その傷跡を彼は知っていた。

そして、この銃声である。



彼はすぐに頭を引っ込めた。

その直後、頭の上を何かが通り過ぎた風切り音がした。



「あの鉛玉の狙撃か・・・あの胡散臭い女と同じ武器という事は・・・人間が相手だというのか?」

隊長は監視塔の壁に張り付いたまま、狙撃を受けないように位置を調整し、戦場となっている西の城壁の外を見下ろした。



「馬鹿なッ・・・!?」

それはあらゆる意味で、異様な光景だった。


彼は夜目の効く種族ではないが、その必要が無いくらい派手な戦いが眼下では繰り広げられていた。

それも、一方的なワンサイドゲームが。



トロールやオーク、ミノタウロスやギガースなど、屈強で強靭な魔族たちが、マズルフラッシュと共にバタバタと倒れていく。

勿論彼らも反撃しているが、まるで冗談ではなくハチのように動き回る敵に翻弄され、一人、また一人と地に伏す。


指揮系統は完全に乱れていたのも拙かった。

しかし、第一隊隊長が既に敵の凶弾によって狙撃され、物言えぬ状況だったのだから仕方がないだろう。


ある者は銃撃になぎ倒され、有る者は青白い光の剣の一閃に焼切られる。

時折爆発が起こるも、第一隊の連中が精霊魔術を扱えても使う連中は居ないし、それで味方が吹き飛ぶのだから敵のものだろう。



そして何よりふざけているのが、敵の数がたった十人程度だという事だった。

恐るべき兵器と流れるような完璧な連携で、数や戦闘力の差を軽々とひっくり返していた。


だがいくら無双の敵だとは言え正面から戦闘になり、この数ではあまりにもあからさまだった。



「お前たち!! 伝令だ!! 第二第三隊の連中に、誰でもいいからこれは陽動の可能性が高いから裏に回れと伝えろ!! そして決して城壁から出るなと言え!!」

隊長の声に慌てた伝令が、各部隊長の下へ走っていく。


「お前たちは城壁に上り、身を低くしてとにかく敵へ牽制を行え!! 決して近づかせるんじゃない!!」

もう誇りだのなんだの考えている場合じゃなかった。


このままでは君主をみすみす死なせると言う、戦士として最大限の不名誉が訪れんとしていたのだ。



だが、戦闘準備が既に整っていた第二隊が、城壁の外へ出始めていた。

第一隊はもうほぼ壊滅状態どころか、立って者が一人として居ない状況だった。



「あいつらなにやってるんだ!! お前ら、どこでもいいから早く配置に付け!!」

仲間を殺されて怒り、馬鹿の一つ覚えみたいに突撃を敢行する第二隊に舌打ちしつつも、隊長は指示を出すことを忘れなかった。



「マズイ、マズイぞ・・・。」

状況は最悪だった。

この後どれだけ持ちこたえられるか想像して、その絶望的な数値に歯噛みした。


それでも彼は引けない。

背水の陣と言うだけでなく、一人の戦士として引ける状況ではなかった。



「隊長!! 各員、位置に付きました!!」

「分かったぁ!! 総員、可能な限り頭を出さずに射撃を開始しろ!!」

これは戦争。

己の誇りの掛かった闘争。


これは彼の、彼らの戦いなのだ。






・・・・

・・・・・

・・・・・・





「№089クリア。」「№090クリア。」「№091クリア。」

『了解第一勢、殲滅確認。』

先ほど打ち上げた小型偵察衛星越しに戦況を観察している情報兵からそう返ってきた。


“メリス”のブラッティキャリバー部隊。

彼女らは魔族五十人を瞬く間に蹴散らすと、スリーマンセルを三つ作って機械的に報告を行った。


その兵装はレーザーブレードを両手、サブマシンガン二挺、擲弾のアタッチメント付きアサルトライフル、それぞれ一人ずつが三組だ。

共通点が、SF映画に登場しそうな機械のヘッドギアに、無数の情報が映る黒いゴーグル、そして花弁を思わせる四枚の機械のスカートだった。



「うーん、・・・・強かったわね。」

今日の食事の味を評価するみたいにあっさりと言ったが、その口元には隠しきれない歪な笑みが有った。


「この前の雑魚魔術師の大群よかマシよね。

あれは大型兵器で一掃したから、なんか殺したって感覚が無くて詰まんなかったのよ。」

“メリス”の一人がライフルグレネードの擲弾を装填しながらそう応じた。


「それより凄かったわ!! あいつらマグナム弾くらいじゃ死なないの!!」

サブマシンガンを抱えていた“メリス”が、主兵装ではなくサブウエポンのリボルバー二挺を掲げて興奮したようにそう言った。



「そう言えばあなた遊んでたわね。一応相手は数が上なんだから拳銃程度で応戦しないでよ。」

「え、だっていくら魔族だからってライフル弾を使ったら相手にならないじゃない。

地上の通常火器ならともかく、錬金術で精製した特殊火薬の弾丸だもの。

物理無効とかじゃないと、どんな生物でも耐えられるわけないじゃない。」

それを証明するかのように、鋼のような肉体を持つ魔族の死体がミニガンでも喰らったかのように真っ二つに弾け飛んでいた。


銃器もその弾丸専用に既存の武器をカスタマイズしたものだ。

これで小火器と言うのは詐欺だろう。



「そりゃあ、そうだけどさー。

一応任務なのよ? 失敗したら上がうるさいじゃない。」

「それにこっちの十人は陽動で、陽動の陽動を行う五人が反対側から突入してる頃じゃない?

と言うか、本命の五人はちゃんと情報を奪取で来たんでしょうね?」

『さあ、まだ連絡は来てないし、生命反応は消えてないから、戦闘中なんじゃないのー?』

ヘッドギアに仕込まれた無線から、情報兵の返答が有った。


『と言うかさ、なんで陽動する必要があったのかしらね。陽動の陽動なんて、完全に無駄じゃない。』

実は無線の向こうにいる情報兵の“メリス”は、ブラッティキャリバー部隊のシリーズではない。


作戦立案が終わった後、管制塔としてブラッティキャリバー部隊に呼ばれて今回の任務に着任したのだ。

戦闘前に彼女がしたことと言えば、地形を読み取ってどういう攻め方をするかぐらいだ。



「そりゃあ、勿論、私たちが暇だからよ。」

『えッ!?』

部隊長格の“メリス”の予想外の返答に、情報兵の彼女の声が裏返った。


「ああ、魔族にどれだけ“私達”の兵器が通用したかの実験ってことにしといて。

レポートの作成と報告は貴女がやってもらうけれど。」

『え? え、どういうこと?』

まるで聞いていない、と言わんばかりに情報兵“メリス”は困惑した声を上げた。


メリスは必要とあらば、躊躇いなく虐殺だろうが殺戮だろうが行う人間だが、それは当然リスクとリターンが見合った時だけだ。

彼女は殺人鬼ではないし、何より馬鹿ではない。


武器や兵器造りで遊んでも、戦闘では親友のように無駄な行動は極力好まないし、口封じでもなければ滅多に殺しはしない。



「お願いよ? 聞いてくれなきゃ、貴女もついでに殺すし。ああ、もしこのことを上に報告したら上ごと殺すわ。」

『噂通りの狂犬だわ・・・。』

無線の向こうの“メリス”は、自分の中にこんな一面があるなんて思いもしていないと言う口ぶりだった。



「失礼ね、私たちは自分達の性能を知りたいだけなのよ。

どこまでやれるか、どこまで殺せるか、本当にただそれだけしか興味無いの。そういう風に、作られたから。」

ふっくっくっく、と部隊長“メリス”の口から笑い声が漏れる。

気付けば、その笑い声はその場にいる全て“彼女”達から漏れ出していた。


そんな不気味な不協和音を打ち消すように、魔族の第二隊が押し寄せてきた。

今度は精霊魔術や矢まで飛んできている。



「さーて、みんなー、実験再開よー。」

殺戮の夜は、まだまだ始まったばかりだ。






・・・・

・・・・・

・・・・・・




俺が会議室に駆け込んだときは、もう殆ど中には人は居なかった。


もう外では戦闘が始まっているとラミアの婆さまから聞いて、俺は冷や汗を流した。

とりあえず、俺は警報も外の警備の強化はしなくて済んだ。


そこにフウセンが居ると踏んだが、彼女も居なかった。

お蔭で念話も通じなかった。


完璧にやることを失った俺だったが、外ではもう十全に戦闘態勢になっているので、とりあえずエクレシアと合流することにした。


現在俺は、赤いカーペットの敷かれた城の三階の廊下を走っている。

外周がすべて廊下となっており、内側に会議室やフウセンの私室などがここにはある。

三階の外側の廊下は各面の一部がガラス張りの扉になっていて、どの面にもそこから各バルコニーに通じている。



で、なんで今この状況でそんなことを説明したか?

言うまでもない、連中が突撃してきたからだ。


ガッシャーン、とガラス張りの扉を破壊して、異形の集団が入り込んできた。

二階への階段が目の前だ、と言う状況でだ。



「あら?」

中に侵入してきた三人は、俺を確認するや否や、即座に二人が撃ってきた。


サブマシンガン二挺とアサルトライフルの掃射だ。

俺は『アキレスの盾』を展開して、すぐに廊下の角に隠れた。


あれからそれなりに成長したはずの俺の魔術は、三秒も持たずに時間稼ぎとしかならなかった。


とは言え、拳銃弾にも耐えきれなかった以前に比べれば、大分マシになってきたようだが。




「てめーらの目的は地下の研究所だろ!! なんで城まで襲うんだよ!!」

俺は怒りのまま怒鳴るようにそう言った。


「ついでよ、ついで。地下に侵攻する班をクジで決めたら、私たちが手持ち無沙汰だったところ、丁度いい城があったから攻略してみようかなーなんてことになったのよ。」

問答無用で撃って来たから、まさか返答が来るとは思っていなかった。



「ふ、ふざけんな!! てめーらゲームじゃねーんだぞ!!」

「え? 別に、手ごろな村が有ったからそっちを攻撃しても良かったんだけど、抵抗も満足にできない連中とやりあるのは詰まんないから見送りになったのよ。

あなた達を皆殺しにしたら、そっち攻撃するから、頑張って抵抗してねー。」

俺はそのあまりの言葉に絶句した。


たまたま目の前に居たから、攻撃した。

正気を疑う言葉だった。



「そうだ、どうせだからアレ使いましょうよ。例の新兵器。」

「ああ、あれは面白そうな玩具よね。是非とも使いましょう!!」

「え? 上から許可が下りない? じゃあ今日から私たちが上よ。今までの上は全員殺すわ。」

俺が目の前に居るのに、廊下の向こうで話し声が聞こえる。



クロムは言った。

自分たちで一番過激な部隊だと。


俺は訂正してほしいと思った。

こいつらは、お前たちの中で一番頭がおかしい連中だ、と。



「ねー、下からの反撃ウザイんだけどー。」

どうやら外のバルコニーにはまだ敵がいるのか、銃声が絶え間なく聞こえる。



「じゃ、とりあえずはそこの虫けらから潰しましょうか。」

その直後、グレネード弾が廊下の角に着弾し、俺は爆風で吹っ飛ばされた。



「ち、くしょう・・・。」

事前に宣言されていたのもあるし、内功の魔術で強化していたから軽い火傷程度の軽傷で、すぐに治癒できる傷だった。

故にすぐに起き上って態勢を立て直せたが、目の前には“彼女”は居た。


まるで幽霊のように、足音も無く。

地面から、浮いていた。



「死んじゃえ★」

直後、超高出力の青白いレーザーブレードが振り下ろされた。


俺は咄嗟に飛び退いて、それを避ける。

その際に壁にレーザーブレードの切っ先が当たり、赤く溶解した。



「俺なんていつでも殺せるってか・・・?」

恐らく今のタイミングは、確実に俺を殺せた。

こいつは目の前の敵を仕損じるなんてことはしない。


遊んでいるのだ。この襲撃と同じように。



「フェアプレーの精神よ。貴女は一応“私”の協力者みたいだし。

それに一方的に有利な状況ってあんまり好きじゃないの、だって詰まらないもの。絶対に私が勝っちゃうから。」

両手のレーザーブレードに加え、予備らしいもう一本を展開したまま危険なジャグリングを始めた“彼女”はそう言った。


「相手の数が多かったからとか、不意打ちだったからとか、言い訳なんてさせないわ。

早く構えなさいよ、優しく苛烈に殺してあげるから。」

「このッ、戦闘狂がッ!!」

「ホント失礼ね、そう言う風に、作られているだけなのよ。

私は“メリス”特設機動兵器運用部隊“ブラッティキャリバー”の№105ブレード性能試験型。

只今より“私”の性能実験を開始するわ。」

流れるような動きで予備を納めると、“彼女”は音も無く踏み込んできた。



俺も魔剣を抜くのと同時に雷撃を浴びせるが、直撃する寸前で上下左右に雷撃は散ってしまった。

まるでフウセンのように球体状のバリアでもあるかのように。


俺も牽制で放った雷撃が、まさかあのクロムと同じ能力を持つ“彼女”に通用するとは思っていなかったから、即座に距離を取る。


だが、スゥーッと“彼女”はピッタリと俺に接近してくる。

四枚の花弁を思わせる機械の下から延びる足を動かさず、恐ろしい速度で幽霊のように水平移動して来たのだ。



至近距離で、右手のレーザーブレードが振るわれる。

俺の首を狙えるほどの間合いまで接近し、ピンポイントで狙い澄ました一撃を放ってきた。


俺は魔剣を使ってそれを受け流す。

近づいただけで分かるほどの凄まじい高温が、目の前を横切る。


そして、左手のレーザーブレードが追撃を仕掛ける。

またもや首筋狙いの一撃を、俺は頭を低くして寸前で回避する。



「ふーん。」

双方のレーザーブレードを振りかぶった両腕は“彼女”の腹部で交差したような形になる。


俺はカウンター狙いで魔剣を“彼女”に突き刺すべく、刺突を試みた。

狙いはどこでもいい。


とにかく掠りさえすれば、そこから雷撃を喰らわせて感電死させればいいのだから。


だが、まるで紙を狙ったかのようにふわりと“彼女”は魔剣の間合いから逃れた。


二秒以下の攻防の結果、ドロー。



「(さっき雷撃が四散した距離と、刺突から逃れるまでの距離が同じだった・・・?

任意ではなく、一定の条件に反応する自動防護か。)」

常に障壁などで身を守っているなら、フウセンのような例外を除いて剣を振るえたりはしない。


そして自動防護の魔術は、基本的に任意と違って防護力をその場で調整できないと言う欠点がある。

つまり一定以上の威力の攻撃なら破れると言う訳だ。


だが、魔術と物理攻撃の反応が違ったのが厄介だった。

魔術なら防ぎ、物理攻撃なら回避する。そう言う自動防護魔術なのだろう。


本来自動発動の魔術は細かい設定は難しいはずなのに、その辺はさすが自称天才である。




「情報兵、彼の詳細なデータをよろしく。」

たった一合交えただけで、“彼女”は相手の実力を把握できるほどには強かった。

普段のクロムみたいに余裕ぶった笑みを浮かべて油断なんてしないし、警戒もする。


「ふふ。」

レーザーブレードで八双の構えをすると、“彼女”は信じられない動きで強襲を試みた。


まるでトンネルの中の重力を無視して走るかのように、くるりと真上を地面としながら“彼女”は斬りかかる。


やりにくい真上からの斬撃をやり過ごすと、今度は側面を真下として打ち込んでくる。

反撃を許さないトリッキーかつ、苛烈な斬撃の波状攻撃だ。



「くそッ!! 重力制御かッ!?」

時計回りに動いているかと思えば、急に反転して逆時計回りに動いて斬撃を繰り出す。


見てるこっちの方が、目が回りそうだ。

まさしく、縦横無尽だった。



「どう? 我が“ブラッティキャリバー”部隊専用の反重力推進及び姿勢制御ユニット、“ブロッサム”よ。

だから私たちは兵士ソルジャーじゃなくて騎兵キャリバーなの。」

そう言いながら、“彼女”はするりと音も無く俺の背後に回る。


俺は咄嗟にホルダーから携帯用松明を取り出して、電撃で着火させながら前に飛び込むようにジャンプして、後ろに松明を投げ込んだ。




「くたばれッ!!」

黒魔術『ヘカテーの松明』が炸裂する。

爆発的な火炎が、彼女を焼き尽くしたことだろう。



だが、“彼女”は爆炎の中からレーザーブレードでそれを振り払うようにして現れた。



「うーん、今のは効いたわ。」

と、言いながらも無傷だった。

煤の一つも無い。


ただ、ほぼ唯一肌が露出している口元には笑みが浮かんでいた。



「今の喰らって無事とか、ありえねーぞ・・。」

「だから言ったじゃないの、今のは効いたって。

お礼に、ちょっと本気出すわ。」

“彼女”はゆっくりと高度を上げた。


そして両足の金属の靴の内側に、レーザーブレードを装着した。

あらかじめそう言う想定がなされていたのだろう、更に両手に二振りのレーザーブレードを手品のように出現させた。


合計四本、四刀流だった。



「ホント、なんであんたが敵なんだよ。」

イカスじゃないか。



「面白半分のネタだけど、まあビジュアル重視ってことで。」

「嘘吐け、俺はお前の体術知ってる俺からすれば悪夢だよ!!」

その直後、空中からの回し蹴りからのレーザーブレードの一閃が飛んできた。


「くそッ!!」

咄嗟に魔剣で受け止めたはいいが、軸足を動かしてレーザーブレードを振るってきた。


右に避けてやり過ごすも、“彼女”はアクロバットのような動きで両手のレーザーブレードを振り下ろしてきた。



「うぐぐ・・・・」

「あははは!!」

魔剣の切っ先に左手を添えて、“彼女”の二刀を受け止める。

凄まじい高熱が、俺の顔を焼く。



「俺は色白派でね!! 日焼けは勘弁だ!!」

「ああ、だからなのね。貴方のデータ通りね。」

更に両足を左右に広げて“彼女”は俺の両側から閉じるようにレーザーブレードを繰り出してくる。



「なんだよ、データ通りって!!」

両手の二刀を受け流し、地面に伏すように体を低くして、両足からの斬撃を躱す。



「私、人間観察が趣味なの。貴方の人柄、趣味嗜好、経歴や技能まで色々と、“私”が知り合った人間全員データ化して記録してるの。」

水中でターンするように、“彼女”は態勢を整えると、再び斬撃の嵐を繰り広げる。


両手の二刀と、両足の二刀。

空中を泳ぐ青白い斬撃の天使が、怒涛の連撃にて俺を襲う。



「ふざけんな!! プライバシーの侵害だ!!」

「なら、私を裁ける法を持ってきなさいよ。

うーん・・・それにしても、こんなものかしら。」

ふわり、と“彼女”は苛烈な攻めから転じて後方へ動いた。



「やっぱり“私”の剣の技量はこんなものね。奇策を用いても、達人の一人も斬り殺せやしない。

うーん、いい感じのデータが取れたわ。面白かった。」

「はあ・・・そうかい。」

こっちは必至で避けて受け流して、魔剣の刀身が信じられないくらい熱い。


周囲もこいつの過激な乱舞で真っ赤な筋だらけだ。



「協力感謝するわ。じゃ、殺すわね。」

そう言った“彼女”の背中から、サブマシンガンを携えた銀色の腕が二本現れた。


「ちょ、お前、ここまできて卑怯だぞ!?」

「これが本来のこのスタイルなのよ。」

“彼女”は笑いながら、八双の構えのままこちらに突撃してきた。


左右の剣戟を順番に弾く。

上段回し蹴りからのレーザーブレードと、二段目の蹴りから放たれるレーザーブレードの斬撃を地面に転がるようにして躱す。


だが、無理な態勢で躱したため、最後にサブマシンガン二挺の銃口から俺は逃れられない。



「さようなら。」

回し蹴りからダンサーのように横一回転で正面に戻った“彼女”が、微笑んだ。




「それはどうかな?」

だが、俺は勝利を確信した。


俺の不敵な笑みに、一瞬何か逡巡したようだが、彼女は躊躇いなく銀の腕にトリガーを引かせた。




「―――魔剣『キマイラヘッド』!!」

その直後、彼女の両足のレーザーブレードが、俺の腹の下に隠していた魔剣の柄に吸い寄せられる。



「そん、なッ!?」

空中で仰向けになるように姿勢を崩した“彼女”に、俺は魔剣ケラウノスを彼女の腹部に突き刺した。


魔剣キマイラヘッドの力で、“彼女”は逃げられない。




「あああああああああああああああああああああ!!!!!」

魔剣の雷撃が、彼女の全身を焼き尽くす。


彼女の頭のヘッドギアが爆発する。黒いゴーグルのレンズが弾け飛ぶ。

特殊兵装“ブロッサム”も、花が枯れるように散って、爆発した。



「これ、で・・・にど・・め・・・。」

全身を痙攣させ、仰向けのままボロボロの赤いカーペットの上に“彼女”は崩れ落ちた。


「こん・・なの・・うそ、よ・・“わたし”が、なんど、も・・・ごほッ。」

血の塊を吐きだしながらも、“彼女”は信じられないという表情で目を見開いたまま、どこかを見ていた。



「もって、いって・・・わたし、の、いき、た・・・あか、し・・・。」

最後に、“彼女”は全身の内側から爆発した。



「うくッ!?」

俺は全身が内部から蛙のように破裂する“彼女”の姿を、見てしまった。


焦げた肉のようなものがカーペットに転がり、どう見ても彼女の持ってきた機械より多いコードや金属がその場に残留していた。

そんな、凄惨な死にざまが残った。



「・・・・・。」

俺は、その中から“彼女”の認識票を拾い上げた。


№105番の“メリス”の証だった。



「これは使えそうだな。」

俺は“彼女”を刺した時に取り落して、爆発に巻き込まれなかった二振りのレーザーブレードを拾い上げる、


持ち主が消え、魔力の供給源を失ったレーザーブレードは、ただの円柱状の物体になった。

俺はそれらを纏めて腰のホルダーに押し込むと、残りの連中を倒しに行くことにした。




『あら、やられちゃったの? じゃあ失敗作だったのね。』

行くことにしたのだが、振り返った直後に、また別の“彼女”が現れた。


ただし、普通のクロムのような姿ではなかった。



「おいおい、ふざけんなよ・・・。」

“それ”は、全長三メートルは超えていた。

飽くまでそれくらいなら、俺だって驚かない。

クロムの奴が巨大化しても、別にあいつならやりかねないし、三メートル超える魔族なんてよく見かける。


だが、これはそうじゃなかった。



とりあえず、フルプレートアーマーを想像して貰いたい。

それが着膨れしたみたいに装甲を増し増しにして、物々しさや角張った感じを付け足せば、こんな風になるのだろうか。


右手には何本ものパイプを束ねたような兵器、20mmバルカン砲を持っていた。

左手には見たことのない、瑠璃色の光を湛えた刺々しい銃器っぽい巨大な物体が握られていた。

背後から肩口に掛けて、六連装のロケット砲が見えた。



『見て見てー、パワードスーツのプロトタイプを改修したバージョンⅡのパワードアーマーよ。

実戦のデータが足りないってことで、データ採取に(無断で)協力してあげることにしたの!!』

そんな“彼女”の嬉々とした電子音が聞こえた。



「そんなの、知るかぁああ!!

なんでこんなところに、そんな魔族の領域の世界観を無視するような兵器が出てくるんだよ!! 空気読めよ!!」

俺は脇目も振らずに後ろに逃げた。



『試作携帯型ハンドレールガン発射ーー!!』

俺が廊下の角に飛び込むのと、瑠璃色の閃光が廊下の壁をぶち破ったのは同時だった。



『あははは!! たーのしぃーー!!』

20mmバルカン砲を廊下の向こうで乱射しながら、がしゃんがしゃん、という音が迫ってくる。



「(しまった、ここは会議室じゃねーか!!)」

一番奥の通路に会議室があり、そしてここは行き止まりである。


逃げ場は、無い。



「・・・覚悟、決めるか。」

あの鎧の化け物に、俺は挑むしか無いようだった。




『逃げないでよー。一緒に人形遊びしましょうよー。』

「だったらその物騒なモンを振り回すんじゃねーよぉ!!」

バルカン砲の音で向こうにこっちの声が聞こえたかどうかは不明である。



『みーつけた。』

そして、がしゃん、がしゃん、と通路の角からパワードアーマーが姿を現した。



「く・・・・。」

魔剣の柄を握る手が、汗だらけだ。



『チャージ完了、次弾装填。

はてさて、いったいどれだけの化け物がこれで殺せるのかしら!!』

「化け物は、お前だよ・・・。」

羊を追い詰めたオオカミは、俺の言葉がかなり可笑しかったのか、笑い声が聞こえてきた。



『じゃあ、死のうか。』

パワードアーマーの内部の声を拾った機械音が、そう告げた。




「メイさん!!」

「エクレシアッ!?」

だがその時、たった今、アイツがぶち破った廊下の壁からバルコニーに飛び乗って、エクレシアが現れた。


俺と彼女は、あの化け物を挟むような形になった。




『あははは!! 面白い、何人でも相手になるわ!!』

重装甲に見合わぬ機敏さを発揮して振り返ると、“彼女”は可笑しそうに、狂ったような、しかしどこか子供のような笑い声を上げてそう言った。











ほんとは一話でまとめようと思ったのですが、そうなると内容が薄くなるのでもう一話はさむことになりました。

いきなり大ピンチです。

彼女たちは基本的にフリーダムです。気に入ったものを好きなように作っています。

それにしても、ロボはロマンですよね。

楽しみにしていた回なので、書いていて楽しかったです。


それでは、また次回。お楽しみに!!


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