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魔族の掟  作者: ベイカーベイカー
第四章 断片編
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第五十一話 魔女の毒手


最悪にして災厄の魔女は独言する。


「希望がこの世にあるなら、それが神に拠って齎されるなら、私に遭ったお前たちはそれに嫌われている。

祈るには少々遅すぎたようだね。神に愛されているなら、この私に遭うはずなんてないのだから。

うくくく・・・神が希望を持って人を救うならば、私は掬ってやろう。魔女の釜の底から。血と毒と死肉をかき混ぜたこの手で。

至大なる御方よ。見ていてください。私はいかなる背徳と冒涜をも続けます。必ず貴女の御座す領域へ、参じます。

許さない、あの女だけは許さない。私を殺したあの女だけは必ず殺してやる。一族郎党末代まで呪ってやる。

見つけなければ・・・早く、私の全てを受け継ぐべき者を・・。」



           偶々録音された延々と何時間も続く彼女の独白より抜粋。








一番早く行動したのは、クロムだった。


「はんッ」

懐の内ポケットから錠剤の入ったケースを取り出して、蓋を開けると口の中に全て一気飲みでもするかのように放り込んだ。


その直後に、彼女に変化は訪れた。

初めて“彼女”を見た時のようにまるで、砂の像が一瞬で崩れ去るかのように衣服だけ残して消えた。


消えたと言うより、自害した、と言うべきかもしれない。

跡形も無く。



逃げたと言うには、あまりにも異様な行動だった。




「ふっくく・・・流石に、賢明な判断ねぇ。侮れないわ・・・。」

そして魔女『パラノイア』は、彼女の行動を賞賛した。



「出エジプト記第二十二章十八節ッ―――」

「魔法使いの女は、これを生かしておいてはならない。・・・・聞き飽きたよ。その呪詛。」

エクレシアが魔術を行使しようと動いたが、彼女は先読みしたかのように言葉を紡いだ。


それだけで、魔女を撃ち滅ぼすべき聖なる魔術は炸裂する対象が変わった。



「ぐぁッ!?」

まるで何かに衝突したかのように、エクレシアは真後ろにぶっ飛ばされた。



「おいおい、呪術は相手に発動を知られないようにするのが基本だろ。

相手は世界でも五指に入る呪術師なんだからさぁ。幾ら相性が良いからって、基礎を怠るなんて言語道断だよ、くくくくく。」

魔女は哂う。

哂っているのに、死体故にぎこちない。



「エクレシアッ!!」

俺は彼女を助けるべきだとは思ったが、今は目の前の敵を何とかする方が先だと思ったからだ。



「ところで、お前さんはよくそんな状態で戦おうと思えるねぇ。」

そこで、先読みしたかのように魔女は言う。


え、と思う前に、気付いた。

足元に、おぞましいと言うか、夥しいほどのロープ状の生物が蠢いていた。


毒蛇の大群だった。

それが、いつの間にか俺の腰まで巻きつくように迫っていた。



悲鳴を挙げるべきところだが、戦闘時の俺の頭は冷静だ。

そして残念なことに、悲鳴を挙げることすらできなかった。


足を中心にして、激痛が走り、急激に俺の体調が悪化し始めたからだ。

冷静な俺が幻覚だと思っていたそれらは、容赦なく俺に牙を剥いたのだ。



「あ・・・あ・・・・。」

そして声を出そうにも、全く出なかった。


俺は、そのまま倒れ込むように這いつくばる。

底なし沼のように、俺の体が蛇の泥沼に沈んでいく。



圧倒的という言葉すら、生ぬるかった。

瞬殺だった。


抵抗する間もなく、負けていた。




「まさか、勝てると思っていたのかい?

この私に・・・この私にこの私にこの私にこの私にこの私にこの私にこの私にこの私にこの私にこの私にこの私にこの私にこの私にこの私にこの私にこの私にこの私にこの私にこの私にこの私にこの私にこの私にこの私にこの私にこの私にこの私にこの私にこの私にこの私にこの私にこの私にこの私にこの私にこの私にこの私にこの私にこの私にこの私にこの私にこの私にこの私にこの私にこの私にこの私にこの私に――――」

壊れたレコードのように、ぶつ切りになった言葉が延々と繰り返される。




「この、魔女が・・・ッ!!」

「あははははははあははあはははははははははははははっはっはははははははははははははははははははははははははは。」

なんとか立ちあがって剣を向けるエクレシアだったが、俺は止めろと叫びたかった。


魔女が嗤う。

カテナイ。


彼女は油断しない。

今まで多くの強敵を退けて来たが、この魔女は今までの相手とは違う。


俺は奴に近い気配を知っている。

己の会得しうる魔術を窮極まで極めた、魔術師の最果てに辿り着いたあの人に似ているのだ。



最強の魔術師、『黒の君』に。


突然遭遇して、挑んだくらいで勝てる相手ではない。

悪魔アルルーナでさえ、あれほどの手助けと準備の上で漸く勝利に手が届いたと言うレベルだったのだ。



魔術師の世界はどちらが強いか、なんて二極論では語れない世界だが、少なくともあの魔女は、あの悪魔以下と言う事は有り得ない。


以前クラウンが、己の理想を語った時、『マスターロード』と絶対戦わないと言った理由がよく理解できた。

物理的に、魔術的に勝てないのではない。


システムとして、勝てないのだ。

俺達の生きるこの世界から、人知を超えた領域に足を踏み入れた魔術師たち。



戦うには、ルール以前から整っていないのだ。



「お前に呪詛は合わない。性格に合わない魔術は効率が悪いから戦いに扱うなよ。それも、自分に跳ね返ってきて効力が成立する魔術なんて、万全の準備が前提だ。」

「だ、まれッ!!」

エクレシアは、見るからに衰弱して居た。

まるで馬鹿にするかのように魔術の講釈を付ける魔女の言葉は、しかし、どこか機械的だった。



「私を殺したければ、まず息はしない方が良いわよ。」

「・・ッく・・か・・・」

エクレシアの剣は彼女に届く事は無かった。


あの魔女に近づくたびに、エクレシアの身体がふら付き、眼から生気が失われていくのが見て取れた。

そして、呆気なく、地面に倒れ伏した。



「うくく・・・教科書通りだよ、お前。

せめてパラディンを五十人は連れてから出直す事だね・・・。

まあ、次なんて無いんだけれど。うくくく・・・。」

俺たちは、当たり前のように魔女の前に屈服した。




「お前たちの与えた呪詛は、毒ニンジンの猛毒と同じ効力を発揮する。

ゆっくりと、自分の体が動かなくなる感触を確かめながら、最後に息が出来なくなって死んで行くんだよ!! あはははははははははは!!!!」

かくして、一歩も動かずに俺とエクレシアに勝利した。


いや、勝利と言う言葉すら、彼女には無意味なのかもしれない。

そもそも、俺たちが敵だったかも怪しい。



「そう・・・やって・・・うッ、あなたは、何万人も・・・」

「それは違うねぇ、『カーディナル』の狗。」

何とか起き上がろうとして腕が痙攣するだけのエクレシアが、突如として空中に引っ張り上げられた。



「確かに私は当時の魔術師の在り方が嫌で魔術結社を組織した。

しかし、私は一族郎党を皆殺しにされ、私の下に集った志を同じくした仲間を皆殺しにされた。

多くの戦いを巻き起こしたが、『カーディナル』と戦い敗北し、敗走する間に当時の奴の騎士団に衰弱の呪詛を掛けた。それだけしかしていない。」

「な・・・に・・?」

「呪詛で殺すのは色々と面倒なんだよ。当時流行った病気に見せかけ、衰弱させる呪いだ。

逃げている最中だから、そんな大規模魔術を扱えるわけがないだろう。一週間も苦しめば、勝手に解ける呪いだった。

死病に侵されたと思っただけで、普通人間は戦意どころではない。恐怖に震え、祈りながら死に脅えるしかないのだから。

しかし、不幸な事が起こった。そこに、本物の病毒に感染したんだからなぁ。うくくく。」

狙った訳ではないんだがなぁ、と魔女は哂いながら残念そうに首を振りながらそう言った。



「この・・・あく、ま・・・・。」

「頭が教科書通りの間抜けな騎士さん。この世が全て紙に書いてある通りじゃないんだよ。

私が行っただろう罪の重さと、私が死んだ後の罪の重さは百倍以上に増えている。あの女らしいやり方だ。

あの女から逃げるだけで精いっぱいだった私に、どうやってヨーロッパ全域に病毒の呪詛を撒けると言うのだ。うくくく。

最初は復讐してやろうと、『盟主』に服従することを選んだけど・・。

だが、もうそんなことはどうでもいい・・・どうでもいい・・・、うくく・・・。」

そう言って、空中にいたエクレシアを放り投げるかのように、その辺の地面に放り投げられた。



「・・・・・・くッ・・・」

人形のように、地面に転がるしかないエクレシア。


今なら、クロムの奴がどうしてあんな行動に出たのか痛いほど分かる。

この世には、人間の尊厳なんて当たり前のように踏み躙る、強大な化け物が存在するのだ。


自ら命を断ってでも、逃げたいと思うのが人情だろう。




「ああ、どうでもいいのさ・・・もう・・どうでも・・。私の後を継ぐ者さえ現れれば・・・。」

そう呟いた彼女は、実体があるにも拘らず、幽鬼のように揺らめいてさえいた。



完全に詰んでいた。

どうすればいいか分からない。身体も動かないし、俺はこのままゆっくりと死に至るのだろうか。





『――――聞こえるかしら?』

その時、クロムの声が頭に響いた。



『ああ、意識だけはくっきりとしてるよ。悪趣味な女だ。』

『あ、そうなの。良かった。』

『どこがいいもんか。つーか、やっぱり生きてたのか。』

クロムの奴なんて自分の身体なんて、シューティングゲームの残機ぐらいにしか思っていないようだし、アイツにとって自殺は緊急脱出ぐらいでしかないのかもしれない。


『まあ、ね。分が悪いから退避したけど、流石にこのまま貴方達を見殺しにするのは目覚めが悪いしね。』

『そうかよ、とりあえず、エクレシアと回線繋いでくれないか。俺たち動けないどころか、魔術も使えない状況なんだ。』

『オッケー・・・よし、繋いだわ。それにして、かなり状況は悪いみたいね。』

クロムがそう言ったのを確認すると、俺はエクレシアを呼び掛けた。



『おい、エクレシア、大丈夫か?』

『・・・・ええ、なんとか。しかし、大丈夫とは言えない状況でしょう。』

すぐにエクレシアの声も帰って来たので、俺はひとまず安心した。


いや、ちっとも安心できる状況じゃないんだが。



『でも、本気でぷちっと殺されなくてよかったわね。精神がぐちゃぐちゃにされるくらいされてると思ったけど。』

『嫌なこと言うなよ・・・。』

『いえ、恐らく冗談ではないでしょう。

彼女は人間の精神の全てを知り尽くしたと言われるほどの、精神干渉のエキスパート。より残酷な手で殺すなんて、造作も無い筈です。』

『マジかよ・・・。』

俺の身体は今、感覚が消えかかっているが、何だか寒気がした。


それもエクレシアの口でそう言われてしまえば、より恐ろしい。

彼女は実際に、行かさず殺さずの精神破壊を体験したのだから。



『じゃあ、この念話とか大丈夫なのか?』

『偽装はしているけど、そう長時間は無理だわ。誤魔化しきれないでしょうね。』

『それなら良いんだが・・・。』

『それにしても大発見だわ。まさか、彼女にこんな弱点があるなんて。』

『弱点・・・?』

いつもならクロムの考察なんて聞く余裕なんてないから苦言を呈すところだが、今回は割と率直に聞きたい事を彼女は口にした。


『どう見ても、あの死蝋が彼女の本体でしょ。

基本的に“魔導師”ってBランク以上の不死性を持っている事が条件なんだけど、彼女はその中でも一人Aランクの不死性を持っていると言われてるの。』

『分かるように言ってくれ。』

『彼女は一通りしか、殺す方法が無い。理論上はそう言われているの。』

『一通り・・? どんな方法なんだ。』

『――――全人類の死滅。』

クロムの口にした方法に、俺は絶句した。




『・・・・マジかよ。』

俺はその壮大さに眩暈すら覚えた。

最近、全人類って単語が安売りされてる気がする。今回然り、フウセンの事も然り。



『マジよ。彼女二つ名の所以である秘術、『精神感染マインド・スピリット』は、自分の精神を他人に複写して相手に寄生する魔術よ。

そして、本体の精神はコピーにいつでも一瞬で乗り移れるらしいわ。

事実上、世界中に散ってる“私”を殺し尽くすぐらい無理ゲーね。』

『無理ゲー過ぎる・・・。』

流石は人類の頂点に位置する魔術師の一人だ、発想がイカレてる。

そして本人もエクレシアがあっさりやられるくらい強いのだから酷い話だ。



『でも、話によると彼女は名前を失っているらしいわ。

それって呪術師としてはかなり致命的なのよ。呪術のイメージって、まず自分の魂に呼びかけることから始まるから、その時名前が無いって言うの起点が無いに等しいわ。』

『ええ、信じられない話です。楽器が無いのに演奏して居るようなものですからね。』

『なるほど・・・。』

とりあえず、あの魔女が有り得ないほど凄いと言うのだけは分かった。



『それで精神と魂だけの霊体なら、もう最悪ね。

自分が何だか分からない、肉体が無いから強烈な違和感が襲ってきて、自然消滅するわ。

私もその上で魔術を使っていると思っていたわ。だけど、違った。彼女には“肉体”が在ったのよ。』

『有り得ざる業の正体ですか。種が割れれば単純な事だったんですね。』

『ええ、彼女の秘術の起点は恐らく、あの死蝋と化した肉体。

変な言い方だけど、あの死蝋こそが彼女の本体よ。』

確かに、あの『パラノイア』の肉体なのに、それが本体だと言うのは何だか可笑しな話だった。


不死身の化け物の正体は、自分の死体だったのだ。



『つまり、あの死体をぶっ壊せば、アイツは死ぬってことか?』

『もう死んでいるも同然だけれどね。少なくとも、いずれ主人格は消滅するとは思うわ。流石にコピーの方は無理だけど。』

『・・・・それって、意味無くないか?』

本体は消えてもコピーの人格も消えなければ、そもそも倒すという前提が崩れてしまう。



『いいえ、彼女の精神のコピーって、基本的に寄生した宿主そっくりの性格になるらしいのよ。

寄生しても別にその肉体を乗っ取るわけじゃないのよ。むしろ、宿主の為に魔術を使ったりするらしいわ。

彼女は基本的に素養のある人間にしか寄生しないけど、コピーの精神の大本が大本だから、扱う魔術は達人レベルらしいのよ。』

『なんだそれ・・・だけど、それなら別に良くないか?』

『よくなんてありません。そんなのは、何の罪も無い善良な人々を、邪悪な黒魔術の世界に突き落とすのも同義です!!』

『あ、ああ・・・。』

確かにその通りだった。考えてもみれば、普通の人間が達人レベルの魔術を使ったら反動でヤバい事になる。


エクレシアに言われて気付くんだから、俺もなかなかこの業界に毒されてきたのかもしれない。

・・・いや、今の状態からすれば笑えないのだが。




『なんでも、彼女はそうやって自分の後継者に相応しい人間を探しているらしいのよね。

素人と言えども、五年もちゃんと鍛えれば十分に使い物に成るし。そこから魔術師の系図を伸ばしていけば良い話だし。』

『なるほどな・・・・てか、かなりそれって効率悪いよな。

ん・・・? でもそれじゃ、逆になんで乗っ取ったりしないんだ? その方が色々と都合がいいだろ?』

『それについては同感ね。まあ、単純にキャパシティの問題かもしれないけれど。

死蝋の状態や、魔剣の効力が急に切れた状況から鑑みて、自分自身が“生きてる”状態じゃないないと効果が無いのかもしれないわ。

人間が生存しているという状態を再現するのに、かなりリソースが喰われてそっちに手が回らないと言うのもあるかもね。』

『それ思うと、彼女の全盛期がどれほどだったのか、想像できませんね・・・。』

クロムの推察に、エクレシアが素直に脱帽したように呟いた。


そう、俺たちはハンデにハンデを重ねられたような状態でボロ負けしたのだ。

数人がかりとは言え、こんな化け物を撃退するのに至った『カーディナル』には本当に恐れ入る。



『なあ、そこまでして、魔術師ってのは系譜を連ねなければならないのか・・?』

『ならないといけないのよ。私も師匠に殺されると思った時には、私の知識の保存を嘆願したわ。

私達魔術師にとって、私達の叡智は魂と誇りそのものなのよ。

例えば趣味でプラモデルでも組み立てることに精魂を掛けていたとして、それを死んだら捨てられるなんて耐えられないでしょう?

それに精通して熟練したなら、誰かに教えて誇ったり、その技術を伝えたいと思ったりするはずよ。』

『お前の例えって時々シュールだよな・・・。』

『分かりやすさ優先よ。私は専門用語だらけの理論を並べて自分だけが悦に浸る自慰行為なんて意味の無い趣味は無いものね。』

・・・確かに分かりやすいけれどさ、例えが残念過ぎる。



『気持ちは分かるけどさ・・・。』

『そしてその過程で、血が流れていたりするのよ。

自分の血、家族の血、先祖の血、他人の血、それを無駄にするのなんて、許されないのよ。』

『・・・・・・・』

俺は何も言えなかった。

あの人と、大師匠と約束した時から俺もその宿命を背負ったことになるんだから。


同じ穴のムジナになったんだから。

俺は、死ねない。



俺が殺した奴らを、ただの無駄にしない為にも。

俺の人生を、無駄だと誰にも断じさせる訳にはいかないのだ。




「もう、どうでもいいのよ・・・・。」

ぼそぼそ、と魔女は薄ら笑いながら言った。



「死ぬのが怖い訳じゃない。別に死ぬのなんでどうでもいい。ただ、私がこの世から消え去るのが怖い。

誰もが私を忘れ、存在しないものとして扱い、架空の人物として人々の記憶から消え去る。

何も無い。死よりなお無残な無。お前たちは分からないだろう。」

『・・・・・バレてるみたいだぞ。』

『そう・・みたいね・・・。』

どこからかクロムも見ているのだろう。

あの魔女は、俺達の念話の内容を盗み聞きし、俺の心を読んだ上でそう呟いたのだろうか。



「かつて、私が組んでいたネクロマンサーが居る。この魔剣デストルドーの持ち主でもある。

死の境地を極め、“虚無の闇”への道を開くことさえ可能とした、闇色の棺を纏った骸。」

『誰のことだ・・・?』

『恐らくは、ヨーロッパで邪悪を極めたと言うフランスの悪名高き死霊魔術師、通称『闇の棺』の事だと思われます。

二人が生きていた年代も一致します。

まさか彼女と繋がっていたとは思いもしませんでしたが。』

エクレシアが俺の思考を拾ってそう補足した。



「奴が私に見せた死の最果てに、私は恐怖した。

何も無い。最後には何もない。私は、あの“何も無い”に私の全てを置いて行くなんて耐えられない。

私は早く・・・一刻も早く、霊体の消耗で私が私で無くなる前に、私の残せる全てを受け継ぐべき誰かを見つけなければならない。」

『・・・・・・・・。』

まさしく、彼女は亡霊だった。


もう最後の目的の為に、ただ自分の全てを捧げる偏執狂。

パラノイア。




「私の全てがこの世から消えるなんて、耐えられない。耐えられない。耐えられない。それを邪魔する奴は、全て赦さない。許さない赦さないユルサナイィィ・・・・」

「・・・かわいそう・・」

そう呟いたのは、ミネルヴァだった。


彼女はサイリスに抱きついて、眼に涙をためてそう言った。

サイリスは彼女の頭を無言で優しく撫でた。


彼女は恐らく、あの魔女の言葉なんて殆ど、いや全く理解できていないだろう。

こんな聞いただけで頭がおかしくなりそうな話なんて、分からない方が良いに決まっているが。




「貴方までッ!!! 貴方がッ、私を憐れむのかッ!!! 老よ!!

こんなところで、こんな連中に、あろうことかあの女の手先まで用意してッ、貴方は一体なにがしたいのよッ!!!」

「なに・・・いってるの・・・?」

突然、訳の分からない事を怒鳴った『パラノイア』に、ミネルヴァは困惑した様子だった。



「貴女・・・誰と勘違いしているの・・・?」

サイリスの呟きで、ようやく『パラノイア』は沈黙した。


そうだった、彼女は、眼が見えていない。

当然だ、彼女の身体の眼は瞼と蝋と化して一体化しているのだから。開くはずもない。


恐らく、“生きている”状態に必要無い器官は運用していないのだろう。

だから魔術的な感覚で周囲を見ているのだ。




「・・・なに、この小娘・・・。

老よ、貴方まさか、私をおちょくっているの。」

「え・・・もしかして、おじさんのこと? わたしは、おじさんじゃないよ。」

ただ、ミネルヴァの方は心当たりがあるようだった。



「・・・・・・・・私が、老と他人を間違えるなんて。違う、私はまだ大丈夫。私はまだ存在できる。まだ消えない。私はまだ終わらない。」

一人の偏執狂は、ぶつぶつと何かを呟き始めた。


そして、



「お前。」

と、俺に目を向けてそう言った。



「は・・・?」

俺はいつの間にか、先ほどの悪夢のような蛇の沼のような光景や、毒に侵された身体が嘘のように、消えていた。


まるで、始めから何も無かったかのように、地面の上に四つん這いで這いつくばっていた。



「大恩ある至大なる御方と契約し、御方の知識を受け継ぐお前は見逃してやる。あの女の手先も、あの女の事なんてどうでも良いから見逃してやる。

だからもう私に関わるな。もう私の事を考えるな。こんなこと、有り得ないからこんなこと無かった。何もここで起きなかった。私は何も起こさなかった。私は何も無い。」

俺は思った。


彼女はもう、致命的にまで狂っている。

正常な判断も出来ないほど、糸のように細く希薄な自分自身に縋りついている。



彼女の言動に恐らく、もはや合理性や理論性など無いのだろう。

ぐちゃぐちゃで、めちゃくちゃなのだろう。


これが、死を曲げてまで存在すると言う事なのだろうか。

そこまでして、何かに執着するのか。



彼女にもう確固とした人格など無いに違いない。

ただの、現象。


魔術を極め、魔術そのものの現象に至り、魔術に執着する亡霊。


哀れでおぞましい、虚しいピエロ。




「そうだ、デザイア・・・魔剣デザイアの力が切れてるからこんな風になるんだ。早く、早く『盟主』の下へ行かないと。再契約しないと・・・」

次々と、彼女の死体に漆黒の鎧が元通りに張り付いて行く。


そうして出来上がった張りぼての黒騎士は、空気に溶け込むように消え失せた。




「なんて・・・・罪深い存在なのでしょうか・・。」

無事に立ち上がったエクレシアも、言葉にできない表情をしていた。



『典型的な肉体に渇望する亡霊の挙動だったわ。

前に別の個体が話した時は普通だったけど、やっぱりあの魔剣が肝のようね。』

「もうその話は良いよ、忘れようぜ、アイツが言った通り。あんなのは、考えるだけ無駄なんだ。」

『・・・・そうね。』

珍しく、クロムも同意した。



「ミネルヴァ、もういいぜ。」

「うん・・・。」

彼女も頷いて、妖精たちに頼んでフウセンの隔離を止めた。




「・・・・訳分からんわ。」

フウセンが呟いたのは、それだけだった。



そのすぐ後だった、村の皆が駆け付けたのは。

その計ったようなタイミングは、あの魔女がこの辺りに辿り着けないように魔術を掛けていたからのようだった。


そのあと色々あったが、結局フウセンの歓迎会は翌日に延期になった。








―――――――――――――――――――――――――――






「黙って入って来なくとも、ここは神に近しい場所だ。拒みはしないよ。」

「失礼ながら・・・・。」

フウリンは、『カーディナル』の執務室に頭を下げたまま入った。


彼女は再興中の街並みを、窓の側に立って眺めていた。



「事態は混迷を極めていまして、事の内容も内容なので『カーディナル』の御耳以外に伝わる可能性を極力排除したかったのです。」

「なるほど、“彼女”のことかい?」

「はい。」

フウリンは頷いた。



「こっちは『盟主』からは何にも言われていないよ。あれだけ協力してやったというのに、事後報告も無い。

あの後どうなったか、詳しく教えてくれないかねぇ?」

「仰せのままに。」

彼はフウセンに起こったこと全てを彼女に話した。



「・・・なるほどねぇ。」

と、『カーディナル』は呟いた。


「お前さんの育て親に関しては大丈夫だ。こっちの身内に手を出させやしないよ。」

「ありがとうございます。」

「そして、フウセンに関して我々は不干渉とする。」

「・・・・・・・・・・」

予想はしていたが、フウリンはやりきれない思いになってしまった。



「・・・・どうしてでしょうか?」

分かっていても、フウリンはそう口に出さざるをえない心境だった。



「一つ目は、魔王サタンを倒すのは我々の役目ではないからだ。」

「それは・・・。」

ある意味予想外の答えだったが、騎士団の理念を思い出してフウリンは口を噤んだ。



「お前も知っているだろう。我々騎士団は何も平和のために活動しているわけではない。平和とはいずれ神が齎して下さるものだからねぇ。

我々が守るのは、それを共にするべき人民だ。

それが第一。だから我らは必要に応じて剣を執る。

それに、その事に関してはもう既に彼女に一任している。今後、彼女の決定が我々教会の決定だと思う事だ。」

「・・・・彼女が?」

フウリンは、『カーディナル』の言葉に驚いた。


高が騎士一人の決定が、教会の総意だとまで言うのだから。



「魔族に関してはね。あの場で息をしている彼女以上に連中を知る者は我々の中にいない。魔族も魔王も似たようなものさ。

だからフウセンに関しても、現場を一番分かっている彼女に一任しようと思うのさ。

これでも人を見る目はある。彼女は正しい判断を下すだろう。」

「・・・はい、彼女は聖職者として正しかった。潔癖なほど。」

「なればこそ、私の判断は正しかったことになる。

第二の理由は『盟主』に任せた方がなにかと都合が良いからさ。

『盟主』だけで事を終わらせるのならば、こちらから余計な火の粉を被る理由は無いからねぇ。」

「・・・・・?」

フウリンは、その言葉に疑念を覚えた。



「では、なぜフウセンを止める時に彼女に手を貸したのでしょうか?」

あらゆる意味でエクレシアに魔族の関して任せているのなら、手を貸すような真似もしないはずだ。



「急な事態の終息の為に『盟主』に要請を受けたと言うのもある。

最悪の事態に成る前に、全てを終わらせる必要が有ると。その為には“切り札”を切ることも辞さないと。」

「しかし、最強の処刑人と言う切り札を『盟主』は切った。」

だが、違うよ、と『カーディナル』は言った。



「あんなちゃっちなのじゃない。あんな子供騙しの怪物じゃない。」

「え?」

あの『盟主』が放った恐るべき猟犬については、確りと報告したはずなのに、『カーディナル』はそれをその言葉だけで片付けた。





「『盟主』はね、最悪の場合あの“カナリア”を使うと言ったんだ。」


そう言った、『カーディナル』の声は若干震えていた。




「カナリア・・・? 何かの隠語でしょうか?」

カナリア固有の伝承なんて聞いたことも無いフウリンは、そう聞き返した。




「一人の魔術師の通称だよ。尤も、魔術師なんて枠組みから随分と外れてしまってはいるがね。

教会系の魔術師の中でも歴史上最高、いや恐らく、人類でも最強の部類に位置する化け物中の化け物だ。

奴は十七世紀に訪れた魔術師の混乱を、たった三日三晩で文字通り“片付けて”しまった。最悪の虐殺と弾圧でね。

その特徴が、金糸のように美しい金髪と常に笑っていることから、その通称が“金糸雀カナリア”なのさ。」

「『カーディナル』・・・貴女がそう仰るまでの相手なのですか?」

「かの『黒の君』が、滅ぼすのは不可能だと断じるくらいには。」

その答えに、さしものフウリンも息を呑んだ。



「想像できるかい? 嘗てヨーロッパに居た反体制的な数万の魔術師が、たった三日で一人残らず姿を消すのを。

いや、奴なら三日も掛からなかっただろうが、奴は敢えて三日掛けて数万の魔術師を嬲り殺しにしたんだよ。」

「・・・・・なぜ、三日なのです?」

「それは奴の行動限界が四日だからさ。あまりにも強すぎる奴は、一年に四日しか動けない。

しかし、そんなの制限にならないほどの暴虐だよ奴は。」

神の如くね、と『カーディナル』は口にした。



「か、『カーディナル』ッ、それは、あまりにも軽率な言葉ではッ・・・。」

彼女の立場上、決して言ってならない一言に、フウリンは思わず狼狽した。



「軽率かどうかは、奴に今後遭わない事を祈りながら、生涯を終えて神に審判の時にでも問えば良いさ。

あの『パラノイア』でさえ、前座でしかなかった。

私は奴ほど美しくおぞましい魔術師を見たことが無い。そして私はあそこまで全知全能に近づいた輩を他に知らない。

当時私は、奴に遭うまで自分の中の正義が正しいと信じていた。

神の為と何かを犠牲にし、自分の意思を殺して生きるのを。私は自分の全てを奴と出会って否定された気がしたのさ。

今でも、奴の笑い声が耳に残ってる・・・。」

フウリンも、騎士団創設当時の『カーディナル』について聞いたことがある。

今の体制と似つかわしくないほど、苛烈で攻撃的で、どんな後ろ暗いことでも行ったと言う。


それが、今ではすっかり人命を優先させることを大前提にしているのだ。

それほどの変化を彼女に齎した、恐るべき魔術師を彼は想像すらできなかった。



「その矛先が、フウセンに向く事は・・・?」

「恐らくは、無いだろう。決定的な事が無ければ、ね。

あれは核爆弾なんかより余程扱い辛いからねぇ。奴のあの過激なイカレた危険思想は誰彼構わず殺しまくる狂犬だ。

使いどころを誤れば、首を絞めるどころでは済まないだろうさ。あれは『盟主』も出来る限り使いたくはないだろうからねぇ。」

まさに最後の手段なのさ、と『カーディナル』は嘲笑を浮かべてそう言った。




「しかしまあ、『盟主』も行動を早まったものだ。

流石の私も魔王との戦闘経験はないのでどうにも言えないが、勇み足に終わらないといいねぇ・・・。」

「・・・確かに、ここまで早く手を打って来るとは思いませんでした。」

彼女の言葉にはいともいいえとも言えないフウリンは、言葉を選んでそう言った。



「凄まじい手際だっただろう?」

「は、はい・・・。」

寒気のするような笑みのまま、『カーディナル』はフウリンに向き直ってそう言った。



「当然だよ、あの国は『盟主』に返し切れない恩が有る。

今も国からして言いなりなんだよ、だから、こんなに早く手が打てる。たとえそれが、一つの人間の記憶が町から消え失せるような異常な事態を起こす事でもね。」

「まさか・・・。」

いくら『盟主』と言えども、余所の国の中であからさまに好き勝手できるとは思えなかった。


昔から魔術師と言うのは歴史の闇の中で蠢くように存在して居て、その枠組みから逸脱するのは間違っているとされていた。

これは魔術師全体だけでなく、地上の人類の為でもある。


それを誰よりも遵守していたのが、『盟主』なのだから。

地上の人間に対して、魔術師でもないのに強行的に出るなんて普通に考えられないのだ。



「歴史の授業だ。もうおよそ、六十年も前になるか。第二次世界大戦でお前の国は負けたね。

その際に最も大きな事件と言えば何かな?」

「・・・・原爆ですか?」

「違う、それは負ける前の出来事だ。今では人間宣言なんて呼ばれている当時の君の国の国主に自身の神性を否定させた出来事だよ。

ああ、ちなみにそう言うことをさせろと当時のアメリカに圧力を掛けたのは私だ。そして宗教的侵略を仕掛ける予定だった。

しかしながら、『盟主』は私の行動を事前に察知して、あらかじめ手を打った。」

『カーディナル』から語られる真実は、冷たい重みを孕んでいた。




「あらかじめ、手を・・?」

「そう、当時の国主がその神性を血筋の人間に継承させ、地下に逃がしたさ。

現人神の信仰は世界的に見ても希少だからね、それを保護すると言う名目だった。

『盟主』は地下深くにこの“本部”と同じ空間圧縮を掛けた巨大な空間を構築させ、多くの陰陽師と現人神を崇拝する忠実な連中を集めて、敗戦直後の大日本帝国そのものをそのまま移動させた。

結果、太陽神の血を引く人間は地下に潜る事になった。笑えるだろう? お前の国では、太陽は地に墜ちて居るのさ。」

「そんな、ことが・・・。」

フウリンは、その衝撃的すぎる事実を簡単に受け止められなかった。



「そしてその地下帝国の影響を、君の国の政治は無視できない。民主政治なんて、始めから建前に過ぎないのさ。

いずれ、今の愚かな繁栄の後に訪れるだろう衰退と荒廃に乗じて再び再起する時を待ちながらね。」

「しかし、だからと言っても・・・。」

その時フウリンは混乱して居て、どう答えれば良いのか分からなかった。



「まだ信じられないのかい? うちにも居るだろう、太陽崇拝を専門とする“魔導師”が。

そいつが関わっていると言ったらどうだい? あのバカみたいな急速な発展は、そいつの仕業だよ。産業革命を仕組んで、世界中の文化水準を底上げさせた張本人のね。」

「・・・・・・。」

フウリンはただ金魚のように口を開閉させることしかできなかった。


ただ感じたのは、底知れない恐怖と寒気だった。

政治経済が混迷を極めて居るとは言え、日本は世界有数の経済国だ。


それが、裏で仕組まれ、将来的に潰される予定だなんて理解してしまったら、もうその国でその繁栄を享受するなんて事は出来ないだろう。



「私も『盟主』に抗議したんだけどねぇ、ちっぽけとは言えあの島国を独占するなんて酷い話だ。

でもまあ、宗教観が疎くなったあの国は色々良い隠れ蓑として使わせて貰っているわけだから、文句を言えた義理ではないのだけれど。」

だから、と『カーディナル』は言った。



『盟主』が、あの国で一人の人間を消し去るなど、造作も無い事だと。




「さて、この真実を知ってしまった君だが、・・・・君は嘗ての居場所に帰りたいかい?」

フウリンは、ゆっくりと首を横に振った。


彼女の話が本当なら、もはや日本に安息の地は無いに等しい。

あの国には『盟主』に絶対に逆らえないほどの大恩があるのだから。



余所から聞けば三流ゴシップに乗るような陰謀論にオカルトが混じったような話だが、それを語ったのは当時アメリカを後ろから見下ろしていた『カーディナル』なのだ。

宗教の恐ろしさは、語るまでも無い。

政治に宗教が絡めば、どんな荒唐無稽なことだって有り得るのだ。



だが、『カーディナル』は丁寧に彼に教えたに過ぎない。

今のこのこと日本に帰れば、待っているのは見知った国の人間が住む場所ではないのだと。


それが、下らない歴史の授業をしてまで婉曲に伝えたかったことだった。

彼女の立場上、匿うどころか逃げろとも言えないのだから。



「恩に着ます・・・。」

「やめておくれよ、どうせ二度と会う事はないんだろうから。

恩をタダで売るのは、損した気分になるからねぇ。恩を感じるなら勝手にするといいさ。

お前はもう、人間じゃないんだから。魔王に魂を売った、正真正銘の悪魔なんだからね。今お前を見逃しているのはこれまでの信仰心が本物だったからだ。

しかし、今お前はこの騎士団や『本部』でもトップシークレットを知ってしまった。

・・・・次会う時は、敵だと言う事を肝に銘じておく事だ。」

「はい。」

彼女がそう言ったと言う事は、もう秘密裏でも協力はできないということなのだろう。


彼らにとって、ここがこれからも安全であると言う保証は無いのだから。


フウリンは、深々と彼女に頭を下げながら、その場から消えるようにして立ち去った。





「よろしいのですか?」

部屋の隅には、今まで気配を断って“騎士総長”が存在していた。

姿も隠蔽していたらしく、フウリンは全く気付いていなかった。



「構わないよ。『盟主』に味方として突き出すより、数段はマシだ。」

「左様ですか・・。」

彼としても複雑な気分なのだろう。

同胞だった者を悪魔として敵すると言う『カーディナル』の決定に、“騎士総長”も静かに首肯した。




「・・・・もう私とお前だけになってしまったな。

あの魔女と戦った勇敢な者たちはもうこの世にいないのか。」

「先日、あの二人が亡くなって、全員です。」

「そうか・・長いねぇ、そんなにも時間が経ってしまったのか。

時々ね、一日が早く感じる時が有るんだ。お前はどうだい?」

「いえ、自分はまだ、神の為に戦えます。

母上こそ、もっとご自愛ください。貴女が倒れては元も子も有りませんので。」

「分かっているさ。だが、この私が簡単に倒れたりするものか。お前こそ何百年経とうと、その心配症は治らないのかねぇ。」

「実の母親の御身を心配して、何がいけないのでしょうか。」

「ふん、甘ったれめ。」

そこで初めて、『カーディナル』はゆっくりと笑みを浮かべたのだった。





ほんとは先週中に上げたかったのですが、モチベーションが上がらず結局今までかかってしまいました。


今現在まで書いていたのですが、いつの間にか二万文字くらいまで書いていたので、切のいいところで切って次回に回すことにしました。


あと、背景の色、変えてみました。結構長文な私の小説なので、白色だと目が疲れると思って、優しい色にしました。


それともう一つ。

私のマイページから私のブログに行けるようにリンクを張りましたので、いつでも来てください。

基本的に更新報告だけなので、ここでは無駄かもしれませんが、ブログの方では設定などの突っ込んだ質問などを受け付けています。

気が向いたら来てくださいね。

今回の話の裏話とかも、載せる予定ですので。


それでは、また次回。





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