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魔族の掟  作者: ベイカーベイカー
三章 祈願祭へ
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第四十六話 真の覚醒 前編


まだ人間だった頃の『黒の君』の手記。



『明日、僕は仲間たちと共に魔王に挑みに行く。

復活したあの第四にして“愛憎”の魔王ギルフェイネスを滅ぼしに。しかもあの二千万を超えるだろう魔物の軍勢や魔獣の群れを突っ切って。

今まで数々のあの暴君陛下の無茶ぶりの付き合ってきたつもりだが、これはその中でも群を抜いている。

一度あの世界最悪の化け物とやりあった僕らが、手も足も出なかったというのに。正直、今でも生きている心地がしない。

あの宝石の魔眼に一瞥されただけであらゆる武器防具が破壊され、一度受けた概念的ダメージに対する耐性、それに加えてあの不死性。

この僕でさえ及びに付かない魔術の数々、あれで嘗て一度人類と相対したあの魔王は、僕らの相手には役不足にも程が有る。

僕なんかが師匠みたいに偉大に成れるはずがないじゃないか。

だけど、仲間たちはこの状況になっても絶望を抱いていない。あいつら頭おかしいんじゃないだろうか。普通なら発狂するような状況だと言うのに。

この人類の危機にあの“月光”の魔女や、魔王と戦えると言う事であのイカレ殺人鬼も参戦すると言うだけで頭が痛くなりそうなのに。

皆は、あの魔王の優位性を封じる策を今の今まで練っている。

物理攻撃で魔王を倒すのは実質的に不可能だし、それに参加するべきである僕は寝ろと言われている。

魔王の不死身の肉体を吹き飛ばす為に。

まあ、あの錬金術の名門エルリーバの誇る天才ならば、僕がいなくても大丈夫だろう。

でも全く、最後の最後で結局僕やアイツ頼みなんて、一体何の為に聖剣とか持ち出してきたのか。結局ファスネルの奴も扱い切れて無かったみたいだし、意味無いじゃん。

一縷の望みにすがりたい気持ちは分かるけど、明日ばかりは神様に祈ったところでどうにもならない。

僕は怖い、死にたくない。まだ生きたい。まだまだやりたいことばっかりだし、試してない理論や研究がまだ残ってるんだ。

嫌だ、どうしよう、逃げたい、逃げたいけど、外は魔物に包囲されている。眠ろうにも、眠れるはずがない。僕は英雄なんてなりたくない、心臓の動悸が破裂しそうだ。

僕が、僕とアイツの手に、人類の全ての命運が掛かってるって?

何て悪い冗談なんだよ、ふざけんなよ、――――――、――――――。

―――――。―――――――――。―――――。―――――――。

――――――――――。――――――。――――――。

(ここまで数行は涙で滲んで読めない)



あッ!?


アイツの声だ、こんな時間に何の用だよ。

僕より才能のあるアイツ、才能だけで僕を圧倒する名前を言うのも忌々しいアイツ・・・恐怖に震えて眠れない僕を笑いに来たのか。

会いたくない。僕が惨めになるだけだ。なんでアイツが、僕と同じ時代に産まれたんだ。アイツさえいなければ、僕は本物の天才でいられたのに。

憎い。憎い。憎い。それよりも、悔しい。こんな紙切れに殴り書いて自分を慰める僕の愚かしさに笑えてくる。



・・・あ、アイツこじ開ける気かよ、ふざけるな、ホントに。

くそ、もうこんなの書いて場合じゃないじゃないか!!』


その日の日記はそこで終わっている。











「まさか・・・。それは、本当なのですか?」

時としては第二十八層に悪魔が跋扈して居たあの三日間の最後の日に、フウリンは相棒に秘められた魔王の力について初めて知った。

丁度、悪魔退治に疲れたフウセンを休憩させているその間に。

彼女も気付かずに、寝ている間に。



「うん、ボクも驚き桃の木山椒の木って感じなんだよねぇ。」

他でもない、全ての元凶たる魔王の手によって。


油絵具にまみれただぼだぼの作業着姿の魔王は、妙なフレンドリーさで話しかけて、衝撃の真実を彼に語って聞かせた。



「信じられません。信じられませんが、納得は出来ました。」

「おやおや、それはどうしてだい?」

胸の中にある悪魔が目の前の存在に対して傅くように訴えるが、彼は目の前の魔王に決して頭を下げなかった。


「初めて、フウセンに出会った時、運命を感じたのです。

同じ忌み子として生まれた俺と彼女の関係に。そして俺は彼女に秘められた力に魅せられた。彼女の為に働きたいと思った。」

「それはもしかしたら、君の胸に有る悪魔が齎した感情かも知れないよ?

心臓を始めとした主要な臓器当たりに、人間の精神はあるからね。」

人間よりずっと人間の体を熟知している魔王は、にやにやと笑いながらそう言った。



「それの何が問題あるのですか? 俺に神を信仰する気持ちが確かにあるように、同時にフウセンを魔王として崇拝することに何の問題が有るのでしょうか?

俺は産まれたときから悪魔と共に生きてきました。ならば、この悪魔の意思は俺の意思に相違有りません。」

「・・・・・素晴らしい。」

フウリンの答えに、魔王は拍手を持って感嘆した。



「では君の意思を確認した上で言うけど、まだ覚醒して居ない今なら彼女を人間のまま殺す事が出来る。

十六歳に近付き、少しでも予兆が見え始めたら、もう手遅れだ。彼女の人間としての魂と、魔王の魂の断片は完全に融合を果たしてしまっているからね。

正直、これは想定外だ。僕としては無かった事にしたい不測の事態なんだ。」

魔王は噛んで含めるように丁寧に語りだす。



「ボクはリュミス・・・『盟主』と契約して、半ば自由を保障されてる。

これを失いたくない。だって好きに芸術活動ができなくなるからね。ボク自身、究極的に人類と敵対するつもりは無いんだ。

この偶然を、人類に対する敵対行為だと思われるのは非常に嬉しくない。本来は魔族の間で終わらせる積りだったからね。」

たとえ彼女とも彼とも言えない魔王の策略が全て予定通りうまく運んで新たな魔王が復活しても、自分は関係ないと嘯く為の言い訳に、フウリンは笑ってしまった。



「そして、彼女の幼い精神がこれから訪れるだろう自分のとても過酷な宿命に耐えきれるとは思えない。

彼女は人類の敵として死ぬまで追われるだろうね。ボクら『魔王』は単体で全ての生物より上位に設定されているから、『盟主』にもどうにかなるとは思えない。

最悪の運命は、この上に有るコキュートス監獄に放り込まれて永遠に凍結封印されるってことかな。第十三番目の彼のようにね。

ボクは正直決めあぐねている。だから君に全てを委ねる。

彼女を人間として死なせてあげるか、魔王としてこの世に君臨させるか。」

「それを、その重要な選択を俺に任せても良いのですか?」

フウリンは今後の人類の分岐点に立たされているのを理解した。


はい、或いは、いいえ。

そのどちらかの選択によって、人類の運命は大きく左右されるだろう、大きな川の流れの分水嶺のように。



「うん、君の選択次第で、人が死ぬだろうね。それこそ、数えきれない単位で。もしかしたら、取り返しがつかない事態になるかもしれない。」

それはそれで面白いかもしれないけれど、と魔王は嗤う。

全ての原因のくせに、他人事のように。



「俺は、フウセンが乗り越えると信じます。」

「本当にそれでいいのかい? 彼女の精神は、本当にただの人間だ。

それも、一般的な思春期を迎えた女子と同程度。」

「陛下に仰られなくても、彼女がそう言う人間だと言うのは知っています。

任務で敵を殺す時も、眼鏡を掛けて違う自分であると思いながら戦わないと躊躇ってしまうくらいには、彼女は普通なんです。」

半ば魔王の言葉を遮る様に、フウリンはそう言った。



「大は小を兼ねると言うけど、逆は有り得ない。

嘗て、自分を人間だと思い込んでいた『魔王』が居て、人間として自分の国を築き上げ、果ては新たに現れた『魔王』に人類側として敵対した奴が居た。

魔族も二人の魔王に割れた。人間に近い夜の眷属が『人類』の味方をし、獣の眷属が『魔王』の味方になった。

だけどね、これは魔王の精神が人間だったからに過ぎない。

ボクらは人間の裁定の為に、生まれて半年の準備期間が与えられる。その間に、人類と敵対するか、無害な存在と成るかが決まる。

精神構造自体は、ボクらと人間は良く似ているんだ。でもね、ただの人間の精神に、魔王の力は耐えられないよ。構造は似ていても、強度が違うからね。」

「では陛下は、人間の精神が魔王のそれに劣るとでも?」

「少なくとも不安定ではあるのは否めないね。ボクとしては、人間の心の可能性を信じてみては居たんだけれど、これは構造的な話だからね。

ロボットは設計された構造以上の能力を出す事は出来ないだろう?」

「生物と、ロボットは違いますよ。陛下。」

「確かにその通りだ。だけどボクはしつこいくらいに確認して居るだけなんだよ。

本当にそれでいいのか、君は後悔しないのか、ってね。それくらい重要な質問なんだよ。それに君が逆の選択をしても、同じようにしつこく問うから。」

「では、俺の返答はこれで最後とします。―――俺はフウセンを信じます。俺が傅くべき王は、彼女だけです。」

「・・・・良い返事だ、“人間”。」

魔王はその答えに、何度も納得するように頷いた。



「とても人間らしい、残酷で、身勝手で、独り善がりな選択だ。」

「陛下はおかしな方ですね。人間の俺が人間らしい事を、なぜ褒めるのですか?」

「まあ、褒め言葉としては最低だったかな。」

すると魔王は、ちゃおー、とか言いながらあっさり立ち去った。




そして、魔王はたまたま近くに居たエクレシアに話し掛け、こう言った。


「あ、ああ~、騎士さんじゃないか。いやぁー、助かったよ。

実はこの辺りに人が居なくなって困っていたところなんだよ、どこか人が居る所はわかるかな?」






――――――――――――――――――――――――――――





正直言うと、勝ち目なんて皆無だ。



「あははは!! とにかく、三分くらい時間を稼いで!!

五分の一とは言え、魔王!! 本物の魔王は人類の九割の消耗を強いて漸く勝てる相手なんだから!!

忘れないで、彼女は今十億人以上を殺せるのよ!! 凄い!! あはははは!! 幾らなんでも私達三人じゃどうしようもないから、バックアップを要請するわ!!」

そして、今はそのクロムの言葉を信じるしかない。




「ちがううううううううううううぅぅぅぅぅ!!!!

ウチは、ウチはあああああぁぁぁぁぁあぁ!!」

最早、瑠璃色の発光体と化したフウセンは、頭を抱えて喚いた。



「来ます、防いで!!」

「ああッ!!」

しかしここで頷いたは良いが、何と言うか、魔王の力と言うのを俺の想像を軽く上に行っていた。


多分、粉塵爆発ってこんな感じなのかもしれない。

空気の全てが爆薬と化して、全てが吹っ飛ぶような。


そうフウセンにとって、魔力とは全て爆薬なのだ。



一瞬、天国が見えた。

いや俺が天国なんていけるとは思えないが、全身のあらゆる束縛から解放されるような、そんな感じだった。



それで、理解した。

自分が全身木端微塵の焼死体になるだろうと言う事を。


やっぱりこんなの、勝てるはずがないじゃん。



と、思わずそんな幻視をしてしまうほど、俺は魔王と言う存在の力を見誤っていた。




「防いでって、言ったじゃ・・・ないですか・・・。」

エクレシアの息も絶え絶えな声が聞こえた。


俺の周囲を、彼女の魔剣の断片が展開されており、防護障壁を張っていた。

これで何とか俺の一命は取り留めたらしい。


彼女自身も自前の防護で何とか耐えたようだが、まともに受けた所為か、かなりのフィードバックを受けてしまったようだった。



「す、済まない、エクレシア!!」

「大丈夫です、どのみち今のは絶対防がなければならない攻撃でした。いえ、攻撃ですら無いのでしょう。

威力だけのただの爆発でしかないのですから、それほどではありません。」

どうにもそうは見えなかった。


「その言葉、信じるぞ。」

「信じるも何も。神に誓って、私は今まで貴方に嘘を吐いたことなどありませんよ。

今のは、初めての魔剣の反動に驚いただけです。まだまだ、戦えます。」

そう言うと、彼女はいつも通りの澄まし顔に戻った。



「俺も『アイギス』を張る。次の手助けは不要だからな。」

「ええッ!!」

もう油断はしない。




「うあああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁん!!!」

第二波が来る。


泣き叫ぶフウリンから、瑠璃色の波動が放たれて、質量を伴う魔力が洪水のように俺達に襲いかかる。




「ちょ、ふざけんな!!」

その馬鹿げた魔力の波動に、俺の展開した『アイギス』が軋みを挙げる。

だが、それに対して怒鳴った訳ではない。


こんなのを耐えて、大丈夫な訳無いだろうが!!

魔術の構造的にかなりの強度を誇るはずの『アイギス』は、俺程度の力量でもそう簡単に破れるはずがない。


それなのに、この魔力の洪水に晒され、俺ごと押し流されそうになっている。

城砦の如く鉄壁の魔術が、ただの魔力の発露で吹き飛びかけている。



クロムの奴は何とか三分耐えろと言ったが、バカ言うな。

格闘ゲームに例えるなら、相手はゲージが常に満タンで全画面の必殺攻撃を連発してくるような物なのだ。


耐えろだと? その前に削り殺されわ!!





「お兄ちゃん!! お姉ちゃん!!」



だがその時、俺に天使は味方した。

いや天使じゃないが・・・いいやもう天使で良いや。



現れたのは天使じゃないが、妖精ではあった。

当然、それは疲れて眠っているはずのミネルヴァだった。


いや、近くでこんな大騒ぎしているのなら気付いて当然だろう。

自分の危機に敏感な奴だから、フウセンとタイマンしていた時には起きて来なかったのだろう。何と言うか、ちゃっかりして居る奴である。


それでいて俺達の危機に確り登場する。

アイツの方が、よほど英雄じみているじゃないか。



「みんなお願い、お兄ちゃん達を助けて!!」

その瞬間、活性化して居た空気中の魔力が彼女を中心として、波紋のように広がり清浄化していく。


環境の異常を正常に戻す、精霊魔術。

その干渉力は、なんと魔王から発せられる波動まで打ち消していた。



「やはり彼女は完全に自分の力を制御できていないようです。

そうでなければこれほど簡単に魔力の制御権を奪われたりはしないでしょう。これなら、勝ち目が有るかもしれません。」

エクレシアは、この圧倒的な力の前に勝機を見出していた。


確かに、これほどの力を、ただの人間が制御できるはずがない。

絶大な魔王の力を持っていても、それを使いこなせるかどうかは別だ。


ただでさえ、通常時のフウセンは自分の力を持て余していた。

それが更に跳ねあがって、どうにか出来る筈も無い。



「ですが、彼女はもう自分で自分を止められないでしょう。

感情が不安定になり、魔力が暴走状態に陥っている。非常に危険です。」

むしろ、エクレシアの言うように、もう自分が何を考えているのかも分かっていないのかもしれない。


彼女の今の心境は、察して余りある。

自分がこの世の物とは思えない化け物の力を秘めていて、もうすぐそれに成るなんて言われて、正気で居られる筈もない。




「うああああぁぁぁぁん、あああああああ!!!」

彼女は、正しい。

泣き叫び、この世に絶望して、やけくそになるのも頷ける。


同情もするし、彼女の不運に嘆きもするし、元凶となった魔王に憤りも感じる。

だけど、それとこれとは別だ。


俺の住む世界、俺には大事な物は無いに等しいほど少ないけれど、それでも死後の世界がここ以上に居心地がいいという保証は誰も出来ない。

俺の仲間が大切にしている物がいっぱいあるだろうこの世界を、壊させる訳にはいかない。



だから、今日見知ったばかりの他人であるフウセンよ。

悪いけれど、お前は化け物に成ってくれ。




「捕まえた★」

背筋が凍りそうになるほど気持ち悪い猫なで声だった。

誰かと思えば、クロムの奴だった。



だが、その直後、無数の銀のワイヤーが地面から飛び出して、フウセンの身体を幾重にも縛り上げたのだ。


当然それだけでは終わらない。

このまま今までのように魔力の波動が起これば、簡単に引き千切られるだろうから。



「大盤振る舞いよ。とっておきの秘術を披露してあげる。」

クロムは紙の束を四つ投じた。

或いは、髪の束なのかもしれない。


術式が刻まれた呪符に、彼女の髪の毛が仕込まれているそれは、地面に落ちて散らばると、無数の手乗りサイズのクロムへと変化した。

残念ながら、一匹くれと言えるほど可愛くは無かった。


その数、ざっと四百。

その余りの多さに若干引いた。



どう言う感じの魔術なのか一応分かる。

恐らく、孫悟空の有名な術の一つである、毛を使って分身を作る身外身の術とホムンクルスの作成技術、日本の式神やゴーレム精製などと色々な術式を組み合わせているのだろう。


本当に腹が立つほど高度な魔術だった。俺じゃあ百年修行しても出来ないだろう、繊細で複雑な制御を要するに違いない。

これであの性格じゃなかったら素直に賞賛しても良いんだが。


あいつ絶対あの性格で損してるよな、多分当人は絶対気付かないだろうけれど。


それはともかく、そんな感じでフウセンの四方に投じられて小人の軍団が現れてると、一斉に彼女に向けて魔法陣を無数に展開し始めた。




「あんな数・・・どうやって、制御するんですか?」

「うちに暇してる戦闘要員が四百人ばかり居てね、そいつらに遠隔操作してもらってるの。小さくても私の半分くらいの能力はあるから、これだけの数が有ればそれなりに役に立つでしょ。」

唖然としているエクレシアに、クロムは何でもないようにそう答えた。



「おい、三分必要だって言わなかったか?」

「あの魔力濃度じゃ、それだけでジャミングされた状態なのよ。もっと時間掛かる筈だったんだけれど、ミネルヴァちゃんのお陰ですぐ色々な承認が済んだわ。」

クロムの魔術は俺のと違って技量が物を言うの物ばかりだから繊細で、状況の変化に弱いのだ。


いや、想定されていない状況では、魔術はそもそも使えないはずだ。

その辺りをどうやって克服して居るのかは知らないが、それを出来る辺りこいつが天才を自称できる所以なんだろう。




「う、くあ・・・いや、・・・いやぁ・・。」

全身縛り挙げられている上に、呪術か何かで動きを封じられているフウリンが、身を捩る。

無理やり、破ろうとしているが、流石に四百人掛かりでの呪縛に、彼女も成す術も無いようだった。


そんな感じで、ほっとしたのも束の間。




「じゃ、改めて作戦会議と行きましょうか。」

「え? もう終わりじゃないのか?」

「あなた、頭の中に蛆でも湧いてるんじゃない? この程度で魔王の力を封じれるわけ無いじゃない。

今は抑え込んでいるけれど、徐々に押し返されてるみたい。」

「はぁ!?」

押し返している?


俺は四百の小人の軍勢と、縛り挙げられたフウセンを交互に見た。

どう見ても圧倒しているように見える。


そう見えるだけだとクロムは言った。




「この非常時だから、『盟主』にも通達したわ。貴女の部下だから何とかしろって。そしたら、こっちに通信を繋げてくれたわ。」

「え? 本当ですか?」

「ええ、今繋ぐわね。」

エクレシアが驚くのも無理は無かった。

この広く狭い大地を支配する、『黒の君』の弟子と連絡が出来ると言うだけで驚くし、緊張するだろう。


俺もちょっと緊張してる。



クロムは銀色のカードを取り出すと、地面に置いた。


「繋がったわよ、師匠。」

『ええ、繋がったようですね。』

すると、立体映像のように一人の女性の姿が浮かび上がった。


見た目は二十代後半の妙齢な女性だった。

そう言うと何だか妖艶な感じに聞こえるが、どちらかと言うと可愛らしさや愛嬌が先行する美人と言うべきだろうか。


非常に落ち着いた感じだが、彼女の年齢の年齢に裏打ちされた経験による物なのだろう。

確か最低でも三千は行ってると言っていたが、どうにもそんなのは感じれられない。

うん、これなら十分いけるな。うん。



「わッ、なにこれすごい!!」

素直なミネルヴァは物珍しそうにその現象に喜んでいる。



『とりあえず、師匠は居ませんよね? この近くで見かけたとか報告が有ったんですけれど。』

気持ちは分かるが、だいたい今の一言で彼女が一体あの大師匠にどんな事をされてきたのか分かってしまって、涙を誘う。


「一応こちらに干渉するつもりは無いようです。」

『この状況下で、ですか? ではもう助力は期待できそうにありませんね。いえ、出来る限り合いたくは無いのですけれど。』

クロムの奴の師匠だと言うのだから、一体どんな変人かと思ったけれど、非常にまともそうな人だった。



「師匠、やっぱり援軍は期待できないってことでいいの?」

『すぐにでもそちらに行かせる手勢は有るには有るのですが。気が進みませんね。」

しかし、返ってきた言葉は芳しくなかった。



「失礼ながら、それはどういうことでしょうか?」

その素っ気ない返答に半ば憤りを感じたのだろうか、エクレシアが口を開いた。


『ああ、こちらからは見えないのですが、貴女が現地で居合わせた当事者の一人ですね。』

「聖堂騎士団所属のエクレシアと申します。

不躾ながら、それはこの危機に対してどうにかするつもりはないと言う事でしょうか?」

エクレシアの辛辣な声は久々に聞いた気がする。



『どうして、と言われましても。経験上、魔王が出現して大勢で戦って事態が好転したことが一度も無いんですよ。』

「そんな、理由ですか?」

エクレシアは信じられないと言った表情だった。


ああ、と俺は理解した。

この人は、骨の髄まで魔術師なんだ。


クロムの奴の師匠だと言うのも納得である。

どこまでも合理的で、理に適わない事は絶対にしない。そんな人なんだ。



『私は、師匠の命令で何度も魔王と魔術師を率いて戦ってきました。

その経験から、魔王を倒すのは、実力ではなく因縁のように思えるのです。』

「それはどういうことですか?」

俺はエクレシアじゃこの人を相手にするのは相性が悪いと思って、口を開いた。



『貴方は、もう一人当事者ですか?』

「エクレシアと違って名乗るほどじゃありませんけれどね。

それで『盟主』様。俺達はどうすればいいんでしょうね。」

半ば皮肉る様に、俺は彼女にそう言った。



『様は要りませんよ。覚醒の瞬間に貴方たちが立ち会ったと言う事は、もう貴方達が倒すほか無いと言う事です。

所謂、運命と言う奴ですかね。こう言った巡り巡る因縁が、最後の最後で絶大な力を持つ魔王を追い詰めたりするものなのですよ。

それに魔術師との交戦回数は可能な限り少ない方が良い。

故にこちらの人員は割けません。本来なら、魔術的支援ぐらいはしたい所なのですが、余計な事はしない方がいいでしょう。

魔王との戦いは、少数精鋭での決戦。余計な事をすると、被害だけが広がります。』

魔術師にして、人類の英雄である彼女はそう語った。


『私自身としては、惜しみない助力をしたい。

この体に流れる、聖剣を携えて魔王に挑んだ先祖の血に顔向けできるように。

ですが、私は魔王と言う存在が、この地上に露見しないよう手を尽くすことしかできません。それは我々の為でもあり、地上の人間の為でもある。』

「覚悟を決める理由には成りました、それだけ聞ければ十分ですよ。」

正確には、諦める理由になった。


あのフウセンを止めると言う役目を、俺達だけで成さないといけないと言う事に対して諦められた。

覚悟はもう、決まったようなものだ。



それに、そんなに身入りの無い話でも無かった。

魔王との交戦経験のある人物との話が出来ただけでも、この状況が間違いで無い事が分かっただけでも十分だ。


どの道、援軍など期待して居ないのだから。

いいじゃねぇか孤軍奮闘、古来からの英雄の醍醐味だッ、こんちくしょう!!



『代わりと言っては何ですが、『カーディナル』に事情を説明し、後援を要請する事に成功しました。

彼女は今回の事を予見していたようで、魔王と戦う準備を終えているそうです。彼女はこういった限定的な状況の戦いが得意ですから、きっと上手くやるでしょう。』

「我らの『カーディナル』が・・・。」

『盟主』の言葉に、エクレシアは祈る様に手を組んで膝を突いた。




「それより、今回の件、あの魔王の所業に対する対応はどうするの?」

『あの『魔王』・・第二にして“美学”の魔王“アヴァンギャルド”と我々人類は不干渉を契約して居ます。どうしようもこうしようもありませんよ。』

エクレシアの質問が終わると、クロムが真面目な表情で問うた。


こいつが真面目なのは良いんだけれど、いつもがいつもなので落ち付かないし、それだけ事態が切迫していることでもあるので喜べない。



「え、つまり、フウセンをあんな風にした魔王に対して、泣き寝入りしろって事ですか?」

そして、お手上げと言った表情をしている『盟主』に、俺は思わずそう言ってしまった。


『では訊きますが、彼女は何か直接的に我々人類に対して敵対行為をしましたか?』

「え、それは。」

その時俺は思い付かなかったが、あの二番目と称される魔王が、新たな魔王を復活しようとしている事は敵対行為に含まれないらしい。

それ以前に、想定されていなかったと言うべきか。


あの魔王は、あまりにも長い間人類から一線引いた立ち位置に居たらしいから。



『それとも、一時の私情で人類の九割を死滅させるかもしれない相手と戦う決断と責任、貴方は取れるのですか?

そして特に古参の二番目は、うちの師匠ですら滅ぼすのを諦めた相手です。

それどころか、彼女は太古から存在する貴重な歴史的な資料なんですよ。手を出すなら、むしろ出した方が人類の敵と言えるのでは有りませんかね?』

「・・・・・・。」

俺は、言い返せなかった。


人類の九割の代償を、魔王が居なくなった後で糾弾されるのは恐らくその戦いを生み出した人物に成るのだろう。生きていればの話だが。

まさしく、戦犯だ。


俺はその責任に、恐怖して何も言えなかったのだ。



大師匠ですら倒すのを諦めた程の強大な魔王に対する敵対行為の代償とその力に、俺は恐れをなしたのだ。

結局、この世で物を言うのは力でしかなかったのだ。



『今回のケースは、ただ運が悪かった。それだけのことでしょう。

魔術絡みの事件の七割は事故です。聞く限りでは今回もそれに当てはまる。それに対していちいち憤っていては、心が持ちませんよ。』

その言葉に込められた何千年と言う重みが、俺の口を重く閉ざす。


『この世は須らく、ままならないように出来ているのです。

全ての真相や裏側などの物事が完全な形で明らかに成り、事態が完璧に解決するなんて、それだけで贅沢な事なんですよ。』

そんなの、毎週やってる推理アニメぐらいでしか有り得ない。




「ああッ、つ・・・『盟主」・・」

するとその時、あの波動の連発の中を耐えたのだろう、ボロボロになっているフウリンが現れた。



「大丈夫ですか!?」

ほぼ瀕死な彼に、エクレシアは肩を貸してやった。


俺もこんな面倒事を運んできたこいつに一言ぐらい物申してやりたかったが、それは後にしよう。今はそんな場合ではない。



『フウリンですか? こちらからでは姿が確認できませんが、貴方以外な訳無いでしょうね。』

「フウセンは必ず、立ち直ります。彼女は、強い人間ですから。だから、お願いです。彼女を」

『もう人間じゃないでしょう。と言うより、無理ですね。彼女は。』

フウリンの言葉を遮って、『盟主』が発した言葉は冷酷だった。



「そ、そんな!? 彼女の素質は」

『タブーなんですよ、彼女の力は。禁忌です。禁忌。

それも私が定めた禁忌です。人間は魔王の力に触れるべからず、と言う事ですよ。そう言って禁じた本人が破るなんて事、出来る筈がないじゃないですか。』

それは、魔術師達の指導者として当然の言葉だったが、人としては冷たい言葉だった。



『盟主』の気持ちも分かる。

彼女は立場の上で、助けられないのだから。


彼女の感情は窺い知れないが、自身の手勢から魔王の力が発現するという異常事態に何とも思わないはずがない。




『ですから、フウセン。まことに残念ですが、貴女は魔王として、人類の敵として吊るし上げられて死んでください。』

そして、敢えて冷酷に、彼女は無機質にそう告げた。



少なくとも俺は『盟主』自らが悪者に成る様にそう言ったように思えた。

或いは、そう思いたかっただけなのかもしれない。


そうでなかったら、




「あ、あ、ああぁ・・・・。」

滂沱の如く、フウセンが涙を流した。



「つまり、ウチはもう要らないってことですか?」

『私の為に死ねと言っています。』



――――そうでなかったら、あまりにも彼女が浮かばれない。




「うぇッ!?」

その瞬間、クロムが驚愕したように目を見開いた。


バンッ、と彼女を拘束する銀のワイヤーが弾け飛んだ。




「なんや、やっぱり・・・そうなんやったんか・・・・。」

『盟主』の登場に、一時的に弱まっていたフウセンの力が、一気に膨れ上がった。


先ほどまで無秩序に、暴風のように暴れ狂っていた魔力が、急に静かになった。

嵐の前の静けさだった。


そして、魔力を通して彼女の感情が伝わってくる。



深い絶望と、悲しみと、嘆きと、おびただしい殺意が!!



「やっぱ、ウチなんて道具に過ぎなかったんやな。」

アハッ、とフウセンが嗤う。



「なんやそれ、ウチの人生、こないなオチかいな。

結局、ウチは何のために産まれて来たんやろうなぁ、アハハハハハ。」

俺は初めて、人が壊れる瞬間を見てしまった。




「ねぇ、師匠。彼女、覚醒前なのよ?」

『それが何か?』

何か言い始めた子弟を横目で、俺は見た。

クロムはその一言で察しろ、みたいな表情をしていた。



「本来、魔王は誕生して半年の準備期間を経て覚醒するものらしいけれど、その間に受けた影響によって今後人類に対して“有害”か“無害”かが決まるのよね?」

『ああ、そう言う事ですか。』

「彼女の場合、断片に過ぎなかったから、覚醒まで十六年も要したのね。

ええ分かってるわ、ここで師匠が何と言おうとも、彼女との戦いは避けられないでしょうね。

だけれど、これって今後の悔恨に成らないかしら?

もしかしたら、違う結果になったかもしれないじゃないの?」

それは、俺も言いたかった。

フウセンは、彼女に見捨てられるのを恐れていたようだったから。



『同じですよ。結局はね、魔王と言う存在は人を殺すと言う結末しか用意されてい何ですよ。』

彼女の顔には、残念そうな表情に諦念が混じっていた。


もはや、この程度の悲劇は見飽きたとでも言うように。



『だから、私を憎んで構いませんよ。

目の前の敵を退けてくるのならば、その時こそ私が自ら相手をします。だから、私を憎みなさい。』

だが、もう既にフウセンは『盟主』の言葉を聞いてはいなかった。



『では、貴方達が彼女のただの踏み台では無い事を願いますよ。』

そう言い残して、『盟主』との通信は切れた。


何となく思ったが、彼女は決して好かれる性質じゃないなぁ、と感じた。





「メイさん、クロムさん。私は、彼女を救いたい。」

ふと、エクレシアが彼女に向き合ってそう言った。


「助ける、じゃなくて、救うのか?

メシアみたいに、アイツの心まで救うというのかよ。」

「私は、神ではありませんから不可能でしょう。ですが、報われない彼女の為に、私は出来る限りの手を尽くしてあげたい。」

「すげぇな、あの力の片鱗を見てそんなこと言えるんだから。

お前どっかの漫画の熱血主人公に成れるぜ。

まあ、良いんじゃねーのか、それで。お前が俺に対して間違っていた事なんて、今まで一度たりとも無かったんだから。」

お前はそれくらい甘ちゃんで丁度良いんだ。

そうじゃなきゃ、俺の心まで荒んじまう。



「私はさーんせい。彼女を殺すなんて、そんなもったいない事、したくないもの。あんなサンプル、二度とお目に掛かれないわよ!!」

クロムはいつもぶれないよな。



「うん、助けてあげて。あのひと、悲しいっていってるもん。」

ずっと難しい話しで付いて行けてなかったミネルヴァが、泣きそうな表情で言った。

彼女の感受性の高さは、この魔力に乗ったフウセンの感情を強く感じ取ってしまうから、そのように言えるのだ。




「お願いします、フウセンは、決して人類の敵じゃない・・・。」

「おい、それは違うだろ。」

俺は驚くフウリンに対して、言ってやった。



「アイツの名前は、風間千明なんだろ。

魔術師じゃなく、人間としての名前はそっちなんだろ。

お前はアイツを人として信じてるなら、人間辞めてる魔術師じゃなくて、人間の名前で呼んでやれよ!!」

俺にしては珍しく熱い事を言った気がする。



「はい・・・彼女を、千明を・・・頼みます。」

そして彼は俺の言葉なんかにいたく感動したようで、涙を流しながら頭を下げた。


おい止めてくれよ、本当に、今度こそ、後に引けないじゃないか。




「そうやでなぁ・・・ウチを理解できるのはお前だけやもんなぁ。ウチとお前は、双子みたいなもんやからなぁ。」

フウセンが、まるで赤子の頬をさする様に、瑠璃色の魔剣の刃を撫でる。

その異常な光景に、俺は背筋が寒くなった。


もう、彼女は完全に自分の世界に入っているようだった。

狂気の世界に。



「なぁ、もしかしてもう、覚醒は終わったのか?

別の意味で安定してるように思えるんだが。」

「覚醒はもう既に、徐々には始まっているはずよ。流石に、ある時間になったら急に別の存在に変化するなんてありえないもの。

それが完了するのが、だいたい一時間後、あと四十五分くらいかしら。」

そうなったら、手が付けられない。

クロムはそう言った。



「無秩序に暴れられるよりはマシか。」

「しかし、このまま、理性を持って暴れられるとなると、事態は最悪の方向に行っているに等しいでしょうね。」

「じゃあ、勝利条件はアイツの無力化だな。

どうせ本気でやっても死にそうにないから大丈夫だろ?」

エクレシアや、クロムとのもう打合せの時間もなくなるだろう。

あれだけ格好付けたのに、暢気に打ち合わせをしているとか間抜けな話だが、前準備も無しに戦える相手じゃないんだ。


今さら、体裁を繕ってもどうしようもない。




「皆がな、ウチのこと要らん言うねん。

ウチが生きとるのが、困るんやて。はははは、うけるわ。

皆が皆、ウチ一人を怖がってるんや。これで、皆ウチに殺されてもうたら、もっとうけると思わへんか?

ウチが何したって言うんや。やれって言われた事やるのが悪いんか。

ああ、悪いやろうな。ウチはもう何人も殺してるもんなぁ。そういや、もう最初に殺しをした時の事、思い出せんわ。

ショックだった記憶も無い。ウチは普通の人間やのに。何がおかしいんや。ウチの何がおかしいんや。

ちがう、ちがうちがう。ちがうちがうちがう。そう、ウチがおかしいやない、ウチ以外の全員がおかしいんや。

そうや、そうに決まっとる。だって、ウチは悪い事してへんもん。生きる為に手を尽くしただけやもん。

アハハハハハ、アハハハハ、なにがおかしいんやろ、何が可笑しいんやろ。もう何も分からへん。わかりたくもあらへん。

でも怖い、死ぬのは怖い。怖いよ。怖いよ。助けてよぉ、でも、それもウチを騙す為なんや。そうや、殺さなきゃ。殺さんとあかん。」

支離滅裂な事をぶつぶつと呟きながら、フウセンはブレザーの内ポケットから、何かのケースを取り出した。


そのケースの中から、眼鏡を取り出して、自分に掛けた。

なぜ今、黒髪じゃないんだ!! くそッ!!




「そうや、皆が嫌いなのはウチじゃない、化け物の私なんや。

そう、ウチじゃない。ウチやないんや。今の私はウチじゃない。

そう、そうや、私を知る全員を殺せば、もうウチしか居なくなるやないか。」


そうして、彼女は無茶苦茶な理論の果てに、結論に至った。


――――魔王フウセンの誕生の瞬間だった。



絶望を抱いて、人類へ“有害”となる存在になった。

これを正気に戻させるには、骨が折れるどころじゃすまないだろう。




「『盟主』も、フウリンも、親父も、あの魔王も。

ロイド君たちや、―――お前たちも。」


そして、ようやく、彼女は俺たちを自分の世界の住人に引き入れた。

都合のいい邪魔者として。




結局、具体的な作戦は決められなかったと、思っていたら、クロムから念話が有った。

一瞬で脳内に、魔王フウセンを倒すプランの情報が齎される。


こいつ指揮官としてはどうか知らないが、参謀としては優秀なようだ。1%で良いからその知能分けてくれよ。



「了解しました。」

「うん、がんばる。」

エクレシアだけでなく、ミネルヴァの奴にも何か役割を与えたらしい。

状況が状況とは言え、こんな子供を戦力に数えるなどと、俺としては最低最悪の気分だが、この際は仕方がないと割り切ろう。


プライドで、勝てる相手じゃないのだ。




「死ね、死ね、死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね。

全部、全部、壊れろや、死ね。アハハハハハハハハッ!!」

狂気に満ちた、フウセンが嗤う。


先ほどのような暴走状態とは違う。明確な意思を持って殺しに来る。

魔王、フウセン。



彼女との決戦が、ようやく始まるのだ。















決戦になると思っていましたか?

残念ながら、そんな格好いい展開にはなりませんでした。

でも普通に考えてみてください。魔王が現れて、何の作戦もなく挑んで勝てると思いますか?


ご安心ください。後篇こそ、しっかりと決戦を行いますので。

あ、ここで次は中編がありましたー、なんてオチもないですよ?


本当は、一話にまとめたかったのですが、このパートが長くなったので前後篇になりました。

私は予定通りに書くのが苦手なのです。

でも、薄い内容よりはずっといいですよね?


次こそちゃんと、決戦です。お楽しみにしてください。



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