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第九章 標準認定試験の日

 試験は毎年、十月の第一土曜日に行われる。


 都市国家内のすべての受験者が、同じ日の同じ時間に、指定された会場で試験を受ける。三歳から参加できる。受けなければ最低点の半分が記録される。ほとんどの市民は受ける。


 レンは二十二歳になっていた。試験会場は毎年同じ場所だ。近所の公民館の一室。受付で番号札を受け取り、決められた座席に座り、問題を解く。


 試験自体は、一時間で終わった。


 答案を提出し、会場の外に出た瞬間、レンはソラに言った。


「今」


「送ります」


 乖離マップの最終版——v7.2——が、都市国家の公開情報ネットワークに投稿された。


 それは報告書ではなかった。論文でもなかった。三百万の点が光るインタラクティブな可視化データだった。縦軸と横軸、色とサイズで複数の変数を表現した散布図。個人を特定できる情報は一切ない。しかし傾向は、誰の目にも見えるように設計されていた。


 買取価格と実績スコアの関係。その間に素体スコアが影響していない事実。得票点の流れ方とその相関。選挙前後の評価点の動き。


 タイトルは一行だけつけた。


 「これは、アエクスの得点分布です」


 説明文はない。主張もない。ただ、データがそこにあった。


「送れた」


「はい」


 空が高かった。秋の空だ。試験会場から出てくる人々が、スマートフォンや端末を見ながら歩いていた。いつも通りの試験の日の光景だった。


「ソラ」


「はい」


「これが、誓い3の答えかな」


 ソラは少しの間、答えなかった。


「わかりません」ソラは言った。「でも、今できる最大のことではあると思います」


「それで十分かな」


「十分かどうかは、今日ではなく、何年か後に分かることだと思います」


 レンは歩き始めた。秋の風が、後ろから来た。

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