大切だったオルゴール
―朝7時
「――すけ」
「――うすけ」
女性の声が聞こえる。
「聡助!」
その言葉に目が覚め、ベッドから起きる柿沼 聡助。
「ああ、刹那。おはよう」
すると雪村 刹那は言った。
「おはよう」
いつも通りの朝。
何も変わらない、暖かい朝。
刹那から貰ったオルゴールの前で、オルゴールを鳴らしながら、いつも通りコーヒーを飲みながら会話をする。
「刹那、今日もかわいいね」
すると刹那は、頬を赤らめながら言った。
「何よ急に……」
―朝8:00
そろそろ出勤の時間だ。
「やべ、そろそろ行かないと!行ってきます!愛してるよ!」
聡助はそう言って、オルゴールを鳴らしたまま家を出る。
――刹那に早く会いたいから、今日も定時で帰る!
そんなことを思いながら出勤する。
そして職場に着いた。
「おはようございます!部長!」
聡助は部長に挨拶をする。
「おう、おはよう!」
部長も挨拶を返す。
そして、聡助のデスクに置いてある一枚の写真が目に入る。
「なあ柿沼。前から思ってたんだが、その写真は?」
そう部長が尋ねると、聡助は答える。
「俺の彼女と、その彼女がくれたオルゴールの写真です!」
聡助がそう答えると、部長は不思議そうな顔をした。
「そう……なのか」
そして部長は、聡助の肩をポンッと叩く。
「あんま気負いすぎるなよ」
聡助は、なんのことかわからなかった。
仕事が終わり、帰宅する。
「ただいまー!」
聡助は家に着いた。
しかし――いつもは「おかえり」と言ってくれるのに、何も返事がなかった。
そして、朝かけて行ったオルゴールからも音がしない。
不思議に思い、走ってオルゴールの元へ駆け寄る。
すると――
「ああ……あああ……」
オルゴールのゼンマイが壊れていた。
そう――初めから刹那なんて人物はいなかった。
正確には、一年前交通事故で亡くなっていた。
そのショックで、オルゴールを通して刹那の幻覚が見えるようになっていた。
職場にある写真にも、彼女は写っていない。
彼女に貰ったオルゴールに依存していたのだ。
"大切だったオルゴール"が壊れてしまったことで、幻覚は覚めた。
しかし――それから聡助の執着はエスカレートしていき、仕事に行かず毎日引きこもってオルゴールを刹那だと思って話しかけている。
「刹那……今日も可愛いねぇ」
聡助は、毎日一日中オルゴールに執着し、愛で続けている。
そう――今この瞬間も……。




