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大切だったオルゴール

作者: 外野透哉
掲載日:2025/12/02

―朝7時


「――すけ」


「――うすけ」


 女性の声が聞こえる。


聡助(そうすけ)!」


 その言葉に目が覚め、ベッドから起きる柿沼(かきぬま) 聡助(そうすけ)


「ああ、刹那(せつな)。おはよう」


 すると雪村(ゆきむら) 刹那(せつな)は言った。


「おはよう」


 いつも通りの朝。

何も変わらない、暖かい朝。

 刹那から貰ったオルゴールの前で、オルゴールを鳴らしながら、いつも通りコーヒーを飲みながら会話をする。


「刹那、今日もかわいいね」


 すると刹那は、頬を赤らめながら言った。


「何よ急に……」


―朝8:00

 そろそろ出勤の時間だ。


「やべ、そろそろ行かないと!行ってきます!愛してるよ!」


 聡助はそう言って、オルゴールを鳴らしたまま家を出る。



――刹那に早く会いたいから、今日も定時で帰る!


 そんなことを思いながら出勤する。


 そして職場に着いた。



「おはようございます!部長!」


 聡助は部長に挨拶をする。


「おう、おはよう!」


 部長も挨拶を返す。

 そして、聡助のデスクに置いてある一枚の写真が目に入る。


「なあ柿沼。前から思ってたんだが、その写真は?」


 そう部長が尋ねると、聡助は答える。


「俺の彼女と、その彼女がくれたオルゴールの写真です!」


 聡助がそう答えると、部長は不思議そうな顔をした。


「そう……なのか」


 そして部長は、聡助の肩をポンッと叩く。


「あんま気負いすぎるなよ」


 聡助は、なんのことかわからなかった。


 仕事が終わり、帰宅する。



「ただいまー!」


 聡助は家に着いた。

しかし――いつもは「おかえり」と言ってくれるのに、何も返事がなかった。

 そして、朝かけて行ったオルゴールからも音がしない。

不思議に思い、走ってオルゴールの元へ駆け寄る。

 すると――


「ああ……あああ……」


 オルゴールのゼンマイが壊れていた。


 そう――初めから刹那なんて人物はいなかった。

正確には、一年前交通事故で亡くなっていた。

そのショックで、オルゴールを通して刹那の幻覚が見えるようになっていた。

 職場にある写真にも、彼女は写っていない。

 彼女に貰ったオルゴールに依存していたのだ。

 "大切だったオルゴール"が壊れてしまったことで、幻覚は覚めた。



 しかし――それから聡助の執着はエスカレートしていき、仕事に行かず毎日引きこもってオルゴールを刹那だと思って話しかけている。


「刹那……今日も可愛いねぇ」


 聡助は、毎日一日中オルゴールに執着し、愛で続けている。

そう――今この瞬間も……。

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