転生 六回目
今回も短いので二話投稿します
薄ら目を開けると、黄色い嘴が目に入った。尖っていた鶏に対し、今回は丸っこい。アヒルか何かか?
当然の如く、今回も卵の中からスタートだ。外に出たいという欲求も十分に高まっており、今が孵化の時だと本能的にわかった。
嘴でつつく。殻はびくともしない。
もう一回つつくが、やっぱり割れない。
足で蹴っ飛ばしてみるが、どうしても割れない。というか、丸まってる体勢なので蹴りの威力が出ない。
少し疲れたので、一度落ち着いて考えてみる。
鶏の時は、嘴がそれなりに鋭かったので簡単に割れた。でも、今は丸っこい嘴なので、殻を破るにはもっと威力が必要なのかもしれない。
そうとわかれば、出来る範囲で首を反らせ、勢いを付けてつつく。一回で割れるとは思っていないので、二回三回と連続でつつく。
ついでに蹴りも入れてみる。突き、蹴りと空手のように頑張ってみるが、一体どんだけ硬いのか、殻は全く割れる気配がなく、ヒビ一つ入らない。
しばらく頑張ってみたが、疲れた。本当に疲れた。なんだこれ、嫌がらせか何かか?そんなに俺を世に出したくないのか?核兵器並みの危険物なのか?
もう動く気力もなくなり、卵の中でぐったりと横たわる。といっても、あまり体勢は変わらないが。
本当に、何なんだこれ。そもそも孵化できないとか、どんなバグだよ。ゲームなら怒りの星一つ付けるところだ。今はもう、怒る気力すらないが。
一気にやる気が萎えていく。それに伴い、身体からも力が抜けていく。なんかもう、どうでもいいや、マジで。
あーあ、一眠りして、目が覚めたら生まれ変わったりしてないかなぁ。
そんなことを考えて、俺は目を閉じた。そしてもう、二度と目を開けることはなかった。
コールダック アヒルを品種改良し小型化したもの。あの手この手で死ぬ。孵化できず死亡、雛のときに室温が25度に下がって死亡、大人になっても羽繕いを怠って水に入り沈んで死亡等。孵化の際、少し殻を割ってやると孵化しやすい印象。臆病でよく鳴くため、うるさいが番鳥として優秀。