モブの文化祭
今日は文化祭だ。
うちのクラスは話し合い段階でめちゃくちゃ揉めたけど、結局は女子の猛反対を押し切ってメイドカフェをやることに決まった。
ところが、一致団結してメイドカフェ案を推し進めていた筈の男子連中が、いざ準備が始まったらそれぞれの部活の出し物に熱中して、どんどんクラスの準備から抜けていくではないか。
なんて無責任なやつらだ。
俺のような帰宅部のモブには、抜け出す部活もないというのに。
メイドカフェと言えば可愛いメイドさんが売りなわけで、男が表でやることはあんまりない。
陽キャの男子なら女装してウケを取るのもアリだろうが、俺のような陰キャモブがそんなことをしたら、おそらく後夜祭を待たずに息を引き取る羽目になるだろう。
だから、俺はモブらしく裏方に徹することにした。
飲食店のバイト経験はないが、夏祭りの焼きそば屋台の経験はある。
女子には、とにかく当日可愛いメイドさんになることに全集中してくれ、と伝え、俺は焼きそば屋台のおやっさんに相談に行った。
本物のメイドカフェでは、メイドさんがオムライスにケチャップでハートとかを描いてくれるらしい。
よし、それでいこう。
材料の関係上、オムライスではなくオムソバになったが、まあいいだろう。
当日の今日、俺は一人で家庭科室に引っ込んで、おやっさんから借りた業務用の鉄板で、焼きに焼いた。
ワンオペだったので、昼飯を食う暇もなく、出来上がったオムソバを教室に運び続けた。
途中から多少手伝ってくれた男子の話では、うちのクラスは大盛況らしい。
確かに俺がひたすら焼き続けてるってことは、注文が途切れてないってことだもんな。
まあ、若松さんはじめ、うちの女子は可愛い子揃いだから、全集中でメイドさんに徹すればそりゃお客さんも集まるだろう。
夕方、お客さんが校内からはけて、後夜祭のアナウンス放送が流れ始めた頃、俺はようやく片付けを終えて家庭科室を出た。
教室の片付けでも手伝うか、と思って顔を出すと、まだクラスの女子がみんな残っていて、なぜかモブの俺を拍手で迎えてくれた。
聞けば、俺の作ったオムソバがバカみたいにうまいと評判を呼んで、廊下に行列ができたのだという。
「屋台の特製ソースだからね」
と言ったら、若松さんが俺の手を握って、
「違うよ。作る人が上手だったんだよ」
だって。
メイド姿の若松さんはめちゃくちゃ可愛かったけど、朝から何も食べてなかったから多分空腹のせいで見た幻覚か何かだと思う。