私兵偽造でございますか?
弟の優はすっかり怪しい女の虜になってる。
いや、違うな。
怪しい女を受け入れてしまっている。
竜原口秀美はダイニングの膳の上に三人分の麻婆豆腐を置くと
「…俺は…刑事だ」
断じて怪しい奴を受け入れるわけにはいかない
と呟いた。
優は箸を三組並べて、秀美を見ると
「もう、一ヵ月経ったんだから兄もリリアに心開いてあげてよ」
と言い
「兄を助けてくれたじゃん」
とにっこり笑って告げた。
リリアはコップに麦茶を入れながら
「優さま、王を助けるのは当然のことでございます」
気に留める必要もないことです
「お心を開いてくださらないのは私の働きが足りないせいでございます」
いたし方のないことでございます
「もっと努力いたします」
と微笑んだ。
秀美はふぅと気絶しそうになりながら
「いやいや…だーかーらー、王は止めろ」
秀美で良い
とビシッと指をさし、両手を合わせると
「いただきます」
と告げた。
優もリリアも一緒に両手を合わせると
「「いただきます」」
と告げた。
なんだかんだと言いながら極々普通の夕食の風景が今日も竜原口家では繰り広げられていたのである。
異世界魔女と名刑事
リリアの名前はリリア・ノルド・マギと言い、魔法が息づく世界いわゆる地球とは世界線の違うフィマールという国から転移してきたのである。
その転移した場所が竜原口秀美と優が暮らしているマンションの部屋であった。
秀美は麻婆豆腐を食べ終えると茶碗を洗って優に渡しかけた。
何時も洗うのは秀美、直すのは優であった。
が、リリアが受け取り指先を動かすだけで食器がそれぞれの場所へと舞うように移動した。
秀美は目の前を飛んでいく皿を見つめ
「やめい!」
と叫び、リリアを見ると
「…こうやって食器を直すのも教育だ」
君は…あー…
と言いかけた。
それに優が笑顔で食器を直しながら
「兄の仕事の手伝いをして」
と告げた。
秀美は「いらん」と言ったが、リリアは笑顔で
「かしこまりました」
王の…いえ、秀美さまの職務の補佐こそ私の本職でございます
と言うと今まで優の部屋だった隣の4畳半の部屋へ行き魔導宮の前に座った。
「聞き届けよ」
我が王…いえ、我が秀美さまの関わる未来の今を見せよ
「時の精霊ノルンの次女ヴェルダンディ」
魔導宮から赤い煙が立ち上り綺麗な女性が姿を見せた。
最後までお読みいただきありがとうございます。
続編があると思います。
ゆっくりお待ちいただけると嬉しいです。