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リリアがやってきた

リリアは不思議そうに見て

「私はフィマールの魔導の塔を司る北の魔術師です」

いえ、でしたと言った方が良いかもしれません

と告げ

「ここはどちらの国なのでしょう?」

エスター王国でもないようですし

イグリスでもないようですし

とキョロキョロ見回しながら呟いた。


秀美はハハハと乾いた笑いを零し

「ふざけてんのか?」

美人は美人だが

「刑事騙せると思うなよ」

と睨んだ。


それに優は

「違うよ!リリアはリリアなんだよ!」

と言い

「昨日の夜ね、青い精霊さんが運んできたんだ」

ねー

とリリアを見て笑みを浮かべた。


リリアは微笑み

「精霊ノルドの末娘スクルドがここに私の未来があると運んでくれたのです」

と告げた。


そして、透明の丸い球体を前に置くと

「魔術師としてお二人にお仕えさせていただきます」

と両手を前に組み合わせて頭を下げた。


優は笑顔で

「すげー!」

リリアが力になってくれるって

「良かったね、兄」

と言うと

「ねぇねぇ、リリア」

あのさ、兄は刑事なんだ

「力になってあげて」

と告げた。


秀美は大きく息を吐き出し

「ダメだ、この状態だと俺が気絶する」

と心で突っ込み

「…とにかく、飯食ったら家に送るのでちゃんと住所を話してくれ」

と言い

「こっちは結局偽情報に踊らされて一晩中張り込んで疲れてるんだ」

と告げた。


リリアは微笑むと

「かしこまりました」

と透明の球体…魔導宮を前に空に浮かせると手を翳し

「聞き届けよ」

我が聖霊…時のノルン

「我が王が望む過去を教えよ」

長女ウルド

「その刻を映せ」

と歌のように唱えた。


魔導宮から黄色の光が昇り女性の姿に変わるとその身体に映像が浮かび上がった。

20代くらいの青年が何処かの部屋にボコボコにされて倒れている姿であった。


秀美はそれを見ると大きく目を見開き

「田畑」

と呟き、腰を浮かした。

「ま、さか…情報を流したことがばれた?」


女性の姿は少しして霧散して消え去った。


優は「おおお」と声を零し

「すげー、リリア」

俺、初めて魔法見た!

と笑顔で告げた。


リリアは微笑み

「お役に立てて光栄です」

魔術師は魔法を使い王に仕えることが仕事です

と告げた。


秀美は立ち上がると先ほどの映像を思い出しながら

「あそこは…前に見た場所」

確か赤阪のスナッククレセントの地下倉庫だ!

と立ち上がると

「行ってくる」

と踵を返して駆けだした。


提供者の情報屋がばれたのなら…いくら待っても取引はない。


秀美は駐車場に止めていた車に乗り込むと携帯を出して

「情報屋がばれた」

赤阪のスナッククレセントの地下倉庫だ

と告げた。


それに相棒の的井修吾は自分の家の戸に手をかけた状態で

「はぁ!?」

と声を出した。


秀美は車を走らせながら

「とにかく、他の連中に連絡をして現場に来てくれ」

と告げた。


修吾は慌てながら

「一体、どういうことだ?」

それ何処のネタだ??

と言いつつも携帯が切れると

「ったく、秀美の奴…しょうがねぇ」

と二課に電話を入れて説明し、現場へと向かった。


秀美は一足先にスナッククレセントの前に立ち警戒しつつ中へと入った。

そこに店員がおり

「店は閉まっております」

と告げた。


秀美は手帳を見せると

「地下倉庫を見せてもらう」

と告げた。


店員はハッとすると殴り掛かってきた。

秀美はそれを避けると

「いっておくが、正当防衛だからな」

とケリを食らわせて気絶させると後ろ手に縛って中へと入って行った。


店内に数名の着飾った女性と男がおり秀美は手帳を見せながら

「動くなよ」

しょっぴくぞ

と言い、店員の一人に地下倉庫の鍵を開けさせた。


その時、他の店員が背後から銃を構えた。

「知らなけりゃ、生きていたのになぁ!」


秀美は振り返り

「ざけんな!」

と銃を抜きかけた。

が、目の前でその店員が急に顔を引き攣らせて叫び声をあげた。


「なんだー!お前はぁ!」


秀美は驚きながら

「俺は俺だ!!」

と言うか

「お前こそなんだー!!」

急に叫び…

やがって、と言いかけて目を見開いた。

「げっ!」


男の身体を抱き締めるように美しい女性が巻き付いて動けなくしていたのである。


…。

…。


驚く秀美の横で鍵を開けた男も隠し持っていた銃を手に悲鳴を上げると

「や、止めろー!」

くるな!!

「今更…やめろー!」

ばらしたはずじゃねぇか!

と女性が巻きついて動けない状態で錯乱していたのである。


秀美は呆然と見つめ

「…な、にが起きている?」

とぼやき、上で聞こえてきた修吾の声に小さく安堵の息を吐き出しかけて、響く叫び声にぎょっと目を向け階段を駆け上がった。


そこに店員や店の女性に巻き付く女性の姿と仄かな笑い声が響いてたのである。


修吾はそれを前にドン引きしながら

「おいおい、まじか」

なんのホラーだ?

と地下室から上がってきた秀美に気付くと

「…秀、美…おま…ぶじ、か?」

とギギギと音がしそうに向いた。


秀美はコクコクと頷き

「こ、っち、だ」

と顎を動かした。


状況はホラーだったが、店の人間は全員動けないようなので危険はないようであった。

修吾や他の二課の面々はドン引きしつつ壁に添いながら秀美と共に地下倉庫を開けて中で瀕死の状態で倒れている情報屋を抱き起した。


昨夜取引するはずだった密輸品も地下倉庫から見つかり、店員が全員気絶すると女性の姿も消え去っていたので無事に事件は解決したのである。


だが。

だが。

秀美はパトカーで署に向かいながら

「あの時…何があったんだ?」

と首を傾げた。


修吾も隣で

「…触らぬ神にたたりなし」

呪いだな

「呪い」

と呟いていた。


暫くの間警察庁捜査二課では『呪い』がホットワードとなったのである。


同じ時、優はランドセルを背負い

「リリア、兄が帰ってきたら教えて」

兄、慌てて出て行ったから心配なんだ

「後先考えないところあるから」

と告げた。


リリアは微笑むと

「ご無事でございます」

ウルドが場所を示しておいてくれましたので

「シルフを護衛に送りましたから」

害するモノに憑りつき幻影を見せ動けなくさせていることでしょう

と告げた。


優は笑顔で

「ありがとう、リリア!」

じゃあ、学校行ってくる

と家を出た。


リリアは笑顔で頭を下げて

「御武運を」

と送り出し

「…しかし…学校…というのは?」

と首を傾げた。


周囲を見回すと

「王宮も城下町の家よりも小さく…見知らぬ物も多いようですね」

エスター王国でもイグリスでもローマアーナでも違うようですが

「ここは…どこの国なのでしょう」

と振り返って6畳と4畳半の2DKの部屋の中を見つめ呟いた。


それにとリリアは自身の手を見た。

「こんな模様はなかったのですが」

小さな一枚の葉ような花弁のような模様が両手に現れていたのである。


知らぬ土地。

知らぬ人々。

いや、全てが見たことのないもののようであった。


ただ、頭上に広がる青い空と流れる風だけはフィマールにいた頃と同じように見えたのである。


最後までお読みいただきありがとうございます。


続編があると思います。

ゆっくりお待ちいただけると嬉しいです。

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