4話 カゲヨシの回想2
なんで俺は能力をややこしくしたのだろう。おかげで回想を少なくしなくちゃいけない。グスン
「み、みんな。おはよ――」
「うわぁー!!でたあー!!」
カゲヨシが挨拶をして返ってきたのは拒絶の反応だった。カゲヨシが恐れられるのはやはり、その能力にある。カゲヨシの能力は簡単に人を殺せてしまう能力。恐れるなというほうが無理な話であろう。
これがカゲヨシの朝のルーティン。挨拶、話しかけて拒絶される。このときカゲヨシは、ようやく身長が百六十が見えてきた子供。しかし、体が成長しても心が成長するとは限らない。
カゲヨシは今度こそ。次こそは、とはかない希望、勇気をもって話しかけるが返ってくるのは拒絶拒絶拒絶。その連続。
そんなある日、一人の女の子がカゲヨシに怯えながら近づいてきた。
「わ、わたしスミっていうの、その……わ、わたしとお友達になる?」
それは初めての歓迎の言葉であった。カゲヨシはこれが夢ではないかと思い、軽く頬をつねってみたが、痛みが広がってきただけ。夢ではなかったのだ。
「も、もちろん!!ぼくカゲヨシ!!よ、よろしく。」
カゲヨシは喜んだ。今なら空を飛べそうだと錯覚するほどに。
それからは驚きの連続だった。厚紙のようなもので対決するメンコ。小さな台で戦うベイゴマ。草を笛のように鳴かせる草笛。他にもたくさんの遊びを教えてもらった。
そしていつからか、カゲヨシはスミの横顔をかわいいと思ったのは。カゲヨシはスミから恋についても教えられたのだ。
そんな楽しい日が続いたある日、その日々は泡のように消えてしまった。
カゲヨシがスミの家に向かいに行った日のこと、カゲヨシは三十分早く家についてしまったがため、一旦別の場所で時間を潰すか、少し早いが遊びに来たことをいうか家の前で迷っていた時。スミとその親と思われる大人たちの声が聞こえてきた。
「スミ、ちゃんとカゲヨシと遊んでいるの?」
「うん。毎日たっくさん遊んでいるよ。」
「いいか、絶対にカゲヨシを惚れさせるんだぞ。あいつの力は凄まじい。こちらに引き込めれば出世間違いなしだ。」
「まかせて、だってカゲヨシがわたしに惚れたら毎日いっぱい美味しいご飯が食べれるんでしょ?」
「そうよ、そして私はお金でいっぱいものを買うのよ。くっくっく、そして俺は天下をとれる力で何でもし放題。正直、カゲヨシと遊ぶのも怖くてつらかったけど、わたしに惚れるまでのがまんよね。はあー、お腹いっぱい食べらるご飯……楽しみだなあー。」
最初、顔が晴れ晴れとしていたカゲヨシの顔は黒く染まっており、最後のほうではもう誰が何を言っているのかの判別もつかなかった。
そこに、カゲヨシに影をかぶせるように母親が後ろに立っていた。
「おお、可哀想な我が子。大丈夫。あなたが誰からも裏切られ、嫌われても母である私はあなたの味方。あんな子なんて忘れて、母と一緒に遊びましょう。」
その口調は芝居がかっていたが、カゲヨシには自分に救いの糸を垂らしてくれる、仏様のように見えた。それほどまでにカゲヨシは絶望していた。だから、カゲヨシは自分を助けてくれた母親を狂信者のように、崇拝した。
その垂らした糸が何色だったかを確認せずに。
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